世界に認められた“日本らしさ” 森保Jがつないだ歴史…思い出す「マジックではなくロジック」

日本代表を率いたハンス・オフト監督【写真:山田真市/アフロ】
日本代表を率いたハンス・オフト監督【写真:山田真市/アフロ】

2050年までのW杯優勝に向けて必要なこととは

 日本代表の森保一監督は、帰国会見で「未来に必ず世界一はとれる」と言った。遠い未来のことを言ったのではなく、確実にとれるという確信にもとづいてのものだろう。日本サッカーの成長を実感させ、前向きになれる言葉だった。

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 森保監督は「継続性」を大事にしてきた。話を聞いていると「歴史」「積み上げ」「続ける」などの言葉が出てくる。日本サッカーの過去を大切にし、今を戦い、未来につなげる。結果を出すことはもちろんだが、今後に何を残すかも大事に考えてきた。「これまで日本サッカーに尽力してきた方々の思いも背負って戦う」のが森保監督の日本代表だ。

 監督が代わればチームも変わる。選手選考や戦術などに、監督の個性や考え方が出るもの。クラブチームでも代表でも同じだ。ただ、チームにはそのベースとなるものがある。代表であれば、誰が指揮しても変わらぬ「芯」のようなもの。

 ブラジル代表は史上初めて外国人のアンチェロッティ監督を招聘した。守備を重視するイタリア人監督のもとでブラジルらしさを失うのではとも心配されたが、圧倒的な個人技を生かした攻撃的なスタイルは変わらなかった。それが、ブラジルサッカーが長年積み上げてきた「芯」だからだ。

 日本はまだ「芯」がしっかりしていないから、特に継続性が必要だった、まずは「日本らしさ」を作ること。森保監督はただ競争力を高めるだけでなく、過去を学んで将来につながる「芯」作りをしてきたのだと思う。高い連動性の組織守備、素早い攻守の切り替え、チームのための献身性。今大会で、さらに「日本らしさ」は世界に認められた。

 もう34年前、Jリーグ開幕前の話だ。92年広島アジア杯の決勝前、ハンス・オフト監督との雑談中に聞いた。日本の急成長に「みな『オフト・マジック』と言っていますよ」と振った。監督は笑いながら「サッカーにマジックはない。あるのは、ロジック(論理)だけさ」と首を振った。

 オフト監督は机上のナプキンに左下から右上にギザギザの線を書いた。右上の一番高いところをペンで指し「今は、そう見えるだけ。サッカーだから勝つことも負けることもある。大切なのは、歴史をつないで成長していくことだ」。そう言って、ギザギザ線の上から右肩上がりに真っすぐ線を引いた。

 確かにオフト監督は劇的にチームを変えたが、カズやラモス、井原や福田ら主力の多くは前任の横山謙三監督が発掘した選手たち。代表チームの継続性を実感した。森保監督の話を聞いていると、あの時のオフト監督の言葉を思い出す。

 今大会フル回転で活躍したMF鎌田大地はブラジル戦前「この8年間だけでなく、日本サッカーが積み上げてきたものを証明するチャンス」と言った。森保監督の思いがチーム全体に共有されていたからこそ、今後の代表が楽しみになる。

 今大会を振り返った指揮官は「日本のサッカーは歴史がつながって、間違いなくレベルが上がってきた」と胸を張った。続けるにしろ、退任するにしろ、日本協会にはつなげてきたものは大事にしてほしいし、そういう人選をしてほしい。

 森保監督や選手たちが繰り返し言葉にしたことで「つなげていくこと」の大切さは浸透した。外国人監督も悪いわけではないが、日本サッカーを大切にし、歴史をつないで発展してくれる人を。過去の否定から入る監督は珍しくないし、特に「芯」ができきっていない国なら、なおさらだ。

 日本サッカー協会は「2005年宣言」で50年までのW杯優勝を約束している。4年に1回しかない大会だから、チャンスは残り6回しかない。日本が右肩上がりに成長を続けているのは確かだとは思うが、世界も成長している。継続性をもって、さらに日本代表の強化を。決して多くの時間はない。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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