Jデビュー戦で痛恨ミス「自分が一番下」 一度は断りも…運命のオファー「間違っていなかった」

仙台GK髙橋一平は秋田戦がデビュー戦だった
百年構想リーグに参加している全60クラブで唯一、開幕から無敗だったJ2ベガルタ仙台の快進撃が13で止まった。1-3で完敗した2日のブラウブリッツ秋田戦でデビューを果たした大卒ルーキー、ゴールキーパーの髙橋一平は波乱万丈に富んだキャリアを歩んだ末に、一度は断りを入れた仙台と巡り会っていた。(取材・文=藤江直人)
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J2・J3百年構想リーグでベンチ入りした4人のゴールキーパーのうち、すでに3人がベガルタ仙台のゴールマウスを守っている。自らも5試合でリザーブに名を連ね、ピッチの外から戦況を見つめてきた。
待ち焦がれてきたプロサッカー選手としてのデビューを、自らの手でつかみ取るための準備は整っている。心のなかでこう念じてきた桐蔭横浜大学卒のルーキー、髙橋一平は先月30日の練習中に、5月2日に迫っていたブラウブリッツ秋田との地域リーグラウンドEAST-Aグループ第14節での先発を告げられた。
身長191cm・体重87kgのビッグサイズを誇る髙橋の脳裏に、真っ先に浮かんだのは意外な思いだった。
「このタイミングで秋田か、と。そういった思いがありました」
秋田市で生まれ育った髙橋は、中学生時代は秋田のアカデミー組織で心技体を磨いた。いわば古巣だからこそ、デビュー戦で対峙する縁に「このタイミングで」と思ったのだろう。髙橋はさらにこんな言葉を紡いだ。
「ここで結果を残したい、秋田の方々に自分が成長した姿を見せたい、という思いもありました」
2019年春の高校進学を機に、髙橋は波乱万丈に富んだサッカー人生を歩み始めた。当時からサイズが突出していて、運動能力の高さと合わせて将来を嘱望された少年は、全国から声がかかる存在と化していた。
Jクラブのユースチームだけで8を数え、さらに青森山田をはじめとする高体連の強豪校も加わった。争奪戦が展開されたなかで、髙橋が選んだのは秋田から遠く離れたヴィッセル神戸U-18だった。
神戸を選んだ理由は単純明快だった。2018年夏に加入した元スペイン代表の名手アンドレス・イニエスタを巡るニュースがメディアをにぎわせ、アンダー世代の選手育成にも注力していると評判が高かったからだ。
公式戦には出場できなかったものの、1年時の2019シーズンに続いて2年時の2020シーズンも髙橋は神戸のトップチームに2種登録された。同時期にはさらにU-16およびU-17日本代表にも名を連ねている。
しかし、トップチーム昇格はかなわなかった。捲土重来を期して進学した桐蔭横浜大学でも、北村海チディ(現・藤枝MYFC)や西澤翼(現・ジュビロ磐田)ら先輩キーパー陣の牙城をなかなか崩せなかった。
桐蔭横浜大学のトップチームでゴールマウスを守り、公式戦に出場しはじめたのは4年生になってからだった。それでも髙橋は胸を張りながら、親元から離れてサッカーに打ち込んだ高校、大学の7年間を振り返る。
「神戸でも横浜でも、ものすごくいい時間を過ごせました。レベルアップするために秋田から外に出た当時の自分の決断は間違っていなかったし、実際に7年間で得た経験は本当に大きかったと思っています」
「キーパー陣の中で自分が一番下」
しかし、大学での公式戦デビューが遅かったからか。Jクラブの練習へ参加してもオファーを勝ち取れない。これを最後しよう、とまさに背水の陣を敷いて練習参加した仙台で、昨秋にようやく内定を勝ち取った。
中学卒業時に髙橋へ声をかけたJクラブのユースに、実は仙台も含まれていた。髙橋自身も最終的に神戸か、仙台かの二者択一で迷った末に前者を選んでいた。そして、いわば8年越しのオファーを実らせる形で22歳の髙橋を迎え入れた今シーズンの仙台には、すでに30代のキーパーが3人所属していた。
J1経験も豊富な元日本代表の大ベテラン、38歳の林彰洋が絶対的な守護神として2023シーズンから君臨。そこへ34歳の松澤香輝、さらに仙台のアカデミー出身でもある31歳の堀田大暉が続いている。
百年構想リーグでも林が守護神を拝命。4度のPK戦を制するなど、2月の開幕から継続されてきた仙台の破竹の連勝に大きく貢献した。しかし、10連勝を達成したザスパ群馬戦を最後に林が戦列を離脱した。
林の健在中は3人のキーパーを順にベンチ入りさせてきた森山佳郎監督は、栃木シティ戦とモンテディオ山形戦で堀田を、群馬戦では松澤を先発で起用。いずれも90分間で勝利して無敗は13に伸びた。
そしてホームのユアテックスタジアム仙台に秋田を迎えた一戦。仙台は開始わずか3分で先制を許した。
右コーナーキック(CK)の流れから相手キーパーへ一度下げられ、そこから放たれたロングフィードのこぼれ球を佐藤大樹に拾われ、カットインから利き足と逆の右足でゴール左へ豪快に決められた。
「チームとしてちょっとフワッと入っていたので、そこを自分の声かけひとつで寄せていれば」
自身のコーチング不足を認めた髙橋は、同28分に喫した2失点目を最も悔やんだ。再び放たれた佐藤の右CKへ飛び出し、右手を伸ばしながらボールに触れられない。いわゆる“かぶる”と呼ばれる痛恨のミス。振り返ったファーサイドにはヘディングで追加点を叩き込み、喜ぶ梅田魁人の姿があった。髙橋が続ける。
「ボールの目測を誤ってあのようにかぶってしまった。高さの部分で起用させてもらったのもあるし、どんどんチャレンジしていくイメージを描いていたんですけど、あの失点でチームに迷惑をかけてしまいました」
後半12分にも百年構想リーグで最多となる3失点目を喫した仙台は、同37分に武田英寿が一矢を報いるのが精いっぱいだった。連勝を13で止められたデビュー戦を終えた髙橋は、ベクトルを自らに向け続けた。
「今日の試合で、キーパー陣のなかで自分が一番下なのがあらためてわかりました」
ショックは小さくない。それでもファイティングポーズだけは絶対に失わないと必死に前を向いた。
「この経験があったからこそ、と言えるように、どん底からはい上がっていくだけです。休んでいる暇はないし、必死にもがいて、自分で次のチャンスをつかみにいって、実際につかんだ試合では勝ち点3を自分が引っ張ってきて、今度は笑顔で終わりたい。そのためにも練習でもっと、もっと強くなっていきたい」
振り返れば神戸時代も大学時代も何度も苦難に直面し、そのたびに歯を食いしばって乗り越えてきた。一度は断りを入れながらも、大学卒業を前にして邂逅を果たした仙台で踏み出したプロのキャリア。巡り合わせてくれた縁への感謝とデビュー戦での悔しさを両輪に変えながら、期待の大型キーパーは前へ進んでいく。
(FOOTBALL ZONE編集部)












