移籍決断→「明日から来るな」 人生が変わった名将の“説得”…芽生えたクラブ愛「強くなった」

深井一希「このチームへの思いだったりというのも、もちろん強いものが」
北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希は、昨シーズン限りで13年間のプロ生活に終止符を打った。今年からは札幌U-18のコーチに就任し、指導者としての第一歩を踏み出した“不屈の漢”。度重なる膝の大怪我との戦いだったキャリアをインタビューで振り返る。最終回は、移籍を迷ったオファーについて。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全5回の最終回)
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キャリアの全てを一つのクラブにために捧げる“バンディエラ”と呼ばれる選手は、現代サッカーでは少なくなってきている。地元・札幌で生まれ、U-12からコンサ一筋で育った深井は、まさにその代表格だ。しかし、2021シーズンの夏に最初で最後の獲得オファーを受け、移籍寸前まで行ったことがあるのだ。
両膝の大怪我に苦しんだキャリアのなかで、「正式にオファーが来るみたいな話のときに大怪我してしまって、というのはあった」と明かす深井。「プレーできているなかで正式なオファーはそれが初めてだったような気がしますね。そのときは1チームだけですが最初で最後でした」と当時の心境を語った。
「いやあ、めちゃくちゃ悩みましたね……。怪我のことも含めて評価してくれていましたし、そういった強いメンタリティを伝えてほしいみたいなことも言われて。全てを受け入れてオファーを出してくれているんだなと感じました」
2018年にミハイロ・ペトロヴィッチ監督(ミシャ)が就任し、クラブ最高となる4位でフィニッシュした札幌。2019年にはルヴァンカップ準優勝という結果を残したが、リーグ戦では10位、2020年は12位と停滞感も見えてきた時期だった。深井自身も長期離脱もなくなり、充実していた頃。迷うのは当然だった。
「ミシャももうそろそろこのチームからいなくなるだろうみたいな雰囲気も、僕のなかでは正直感じていて、札幌がだんだん良くない時期に入っていくだろうなというのも感じていたので。そのタイミングで自分が出るというのも一つ、選手としてはもう一皮剥けるのに大事かなというので、すごく悩みましたね」
結局、長考の末に愛するクラブからの移籍を決断。「1週間くらいのうちに決めてほしいと言われて。もう悩んで、悩んで、悩んで。当日『よし、じゃあもう行くわ』と。奥さんにも『じゃあ伝えてくる』と伝えて出て、強化部にも『もう行きます』と伝えたんですけど」。そこからどんでん返しが待っていた。
「それを強化部がミシャに伝えたらめちゃくちゃ怒って、『もう明日から練習に来るな』みたいな感じになって。強化部は気持ちを理解してくれて、あとは野々村(芳和)社長をお前が説得しろと。そこから強化部ともけっこう長い時間喋った後に、野々村さんと2、3時間また別で喋って。もうこれ無理だなと」
強引に引き止められた結果、残留を決断した深井。しかし、その過程でコンサドーレへの愛着も再確認したという。「そのなかで色々とこのチームへの思いだったりというのも、もちろん強いものがありました。そこで悩んでいるところだったので、最後は説得されたという感じですかね」と決断を振り返った。
深井とコンサドーレとの出会いは、「たまたま僕の入っていた少年団がなくなるとなって、監督からコンサドーレのセレクションがあるからとりあえず受けてみろと言われて行ったのが初めてですね」と偶然がきっかけ。「小学校の頃から好きでした」と言うが、引退まで一筋になるとは想像もしていなかった。
それが、「年齢が上がるたびに自分がここを引っ張っていきたい、みたいな気持ちがどんどん強くなったのは覚えていますね」と、気づけば“バンディエラ”と呼ばれる存在になっていたのだ。昨年からはJ2で苦しんでいる札幌。近い将来、“不屈の漢”がまた見たことのない景色を見せてくれるかもしれない。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)
















