森保ジャパンが抱える”依存リスク” 上田綺世が覚醒も…無得点に終わったFW陣「肝に銘じるべき」

英国遠征ではFW陣が無得点に終わった
母国の聖地・ウェンブリー・スタジアムでイングランドを1−0撃破するという偉業を達成した日本代表。3月31日(日本時間4月1日未明)の大一番は、日本サッカーの大きな成長を感じさせるものだった。
欧州CLベスト16がついに開幕 佐藤寿人&柿谷曜一朗が伝授する“お得”な楽しみ方とは?
「いい意味で(強豪を)変にリスペクトしたりは間違いなくなくなってきている」と中盤をコントロールした鎌田大地(クリスタル・パレス)が言えば、キャプテンマークを巻いた堂安律(フランクフルト)も「あんまり喜びすぎないチームになってきている」と強調。36年前に森保一監督が「日本人にサッカーができるのか」と言われた頃とは全く異なるメンタリティを、今の選手たちは確実に身に着けつつあるようだ。
こうしたなか、課題だった南野拓実(ASモナコ)と久保建英(レアル・ソシエダ)が不在となった、シャドーの構成に目処が立ったのも収穫と言っていい。28日のスコットランド戦(グラスゴー)では、後半途中から右ウイングバック(WB)に入った伊東純也(ゲンク)が、シャドーに陣取った堂安とポジションを臨機応変に入れ替えながら中央に侵入し、値千金の決勝弾をゲット。イングランド戦でも三笘薫(ブライトン)が自らのボール奪取から貴重なゴールを叩き出しており、日本の2列目アタッカー陣の質の高さを改めて印象付けたと言っていい。
もともと森保ジャパンの重要な得点源は2列目だった。南野や久保、ボランチに下がった鎌田がいなくても、伊東や三笘が点を取ってくれたのは朗報だ。が、反面でやや物足りなかったのが、FW陣が無得点に終わったことである。
イングランド戦ではオランダ1部で目下、22ゴールを挙げている絶対的エースの上田綺世(フェイエノールト)が先発。序盤から身体を張って起点を作ろうと果敢にトライし、三笘のゴールシーンでもスペースを作るいい仕事を見せたが、自身の決定機だった佐野海舟(マインツ)からのスルーパスを受けた前半41分の右足シュートは惜しくもクロスバーをかすめてしまった。
「相手センターバック(CB)が外に釣られるのは感覚的に分かっていて、海舟にハンドシグナルをしながら背後に走ったんですけど、僕の走るタイミングと海舟のパスのタイミングが合わなかった」と背番号18は悔しさをにじませた。この場面で彼が2点目を挙げていたら、日本はもっと楽に勝てただろうし、チームの勢いも増したはず。決めるべきところで決めることの重要性を上田は改めて感じたのではないか。
ただ、その背番号18が飛躍的な成長を遂げているのは紛れもない事実。今季のエールディビジでのパフォーマンスを見れば、誰もがそう感じるはずだ。
「3年前、前回大会(2022年カタールW杯)とは全く違う立場、プレーヤーになっていると思う。僕自身がつねに成長することを目的としてプレーしているので、全く違う自分自身になっているのかなと思います」と本人も自信をのぞかせた。
上田の存在は今の日本代表における攻撃陣の生命線。W杯優勝候補の強豪国相手にゴールを取れるポテンシャルも大いにある。実際、2023年9月のドイツ戦(ヴォルフスブルク)、昨年10月のブラジル戦(東京)の得点によって、上田は能力の高さを照明している。今回のイングランド戦では、あと一歩届かなかったが、ここからの今季終盤のフェイエノールトの練習・試合で自己研鑽を続けていけば、2か月後の大舞台でも大いに輝けそうだ。
ただ、絶対的エースが1人だけで、難敵揃いのグループリーグを突破し、決勝トーナメントで勝ち進んでいくのは正直、難しい。31日の欧州プレーオフで第3戦の相手がスウェーデンに決まり、日本はオランダ、チュニジアとスウェーデンという非常にやりにくい国々と同居することになった。だからこそ、FW陣の得点力がより一層、必要になる。最前線の候補者たちはそこを肝に銘じるべきだ。
3月の2連戦を振り返ると、1トップに入ったのは、上田と小川航基(NECナイメンヘン)、後藤啓介(シント=トロイデン)の3人。FW枠で考えられていた町野修斗(ボルシアMG)と塩貝健人(ヴォルフスブルク)は今のところシャドーでの起用が優先で、カタールW杯で最前線を担った前田大然(セルティック)も左WBのバックアップという位置づけ。となれば、やはり小川と後藤に得点力アップを求めるしかないだろう。
特に小川は、2026年北中米W杯アジア最終予選では4ゴールをゲット。一時は上田と並ぶFWの主軸という見方をされていたが、所属チームで出場機会を減らしたこともあって、ここ最近はゴール前でのキレを欠いている印象も拭えない。
「単純にチーム内の戦術的なところもあるし、なかなか出場機会を得られていないところがありますけど、それでも前を向くことなく、自分のやれることをベストを尽くしていくしかない」と本人も足元を見つめ直して、W杯本番に向かおうとしている。まずはクラブに帰って苦境から抜け出し、再びゴール量産体制に入ってくれれば、代表FWの選手層アップに貢献できる。「自分は誰よりも点を取れる自信がある」と口癖のように言う男だけに、今から一気にギアを上げられるはずだ。
一方の後藤はスコットランド戦で好印象を残したが、まだまだ未知数の存在。後藤自身も「自分はゴリゴリのセンターFWではないので、いい循環役というのか、チームがリズムよく攻撃ができたり、守備ができるというタスクはすごく重要かなと思います」と話していたが、生粋の点取屋というよりも、多彩な仕事をこなせるオールラウンダーというイメージの方が近いようだ。
それでも、今季のシント=トロイデンでは10ゴールをマーク。チーム初の上位プレーオフ進出の原動力になっている。191センチの長身、足元の技術を生かしたシュート力にも定評がある。そこを2か月後のW杯で出せるのかは、森保監督もまだ図りかねているところがあるだろう。
ただ、若い選手というのはちょっとしたきっかけて爆発的に伸びることがある。スコットランド戦で伊東の決勝点をアシストした塩貝もそうだが、大舞台で何かインパクトを残せば流れがガラリと変わる可能性がある。後藤も4〜5月のリーグで爪痕を残し、大舞台で戦力になれることを示すべきだ。
いずれにしても、今の代表FW陣は上田依存の傾向が強い。そこを打破しなければ、北中米での大躍進は見えてこない。森保監督がよく話すように、誰が出ても点が取れるように、残された時間に最大限の努力を払ってほしいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。













