練習→筋トレ→講義「両立できる?」 プロ選手&大学院生の二刀流…元日本代表の“超多忙生活”

現役の終盤「プロサッカー選手」と「大学院生」を両立した鮫島彩さん【写真:増田美咲】
現役の終盤「プロサッカー選手」と「大学院生」を両立した鮫島彩さん【写真:増田美咲】

鮫島彩さんは現役中に筑波大学大学院に進学した

 なでしこジャパン(日本女子代表)の左サイドバックで活躍した鮫島彩さん。18年間にわたり、国内外6つのチームでプレー。常にトップレベルのリーグで躍動してきた彼女がキャリアの終盤に選んだのは「プロサッカー選手」と「大学院生」という二足の草鞋だった。独占インタビューでその理由と得たものについて率直に語ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・砂坂美紀/全4回の3回目)

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 2023年、大宮アルディージャVENTUS(現・RB大宮アルディージャWOMEN)でのプレーと並行し、筑波大学大学院へと進学。鮫島さんが36歳のときだった。『WEリーグスタジアム観戦者の特性』について研究した。「元々、集客やプロモーションといった『裏方』の仕事に興味があったんです」と語る。

 そもそもなぜ現役中に修士課程への挑戦を決めたのか。

「私は、せっかく生きているなら経験できるものは全部経験したいし、見られる世界は全部見たいという思いが根本にあるんです。サッカー界は素晴らしい場所ですが、それだけではなく外の世界で学びを得てみたいという想いがありました」

 それはINAC神戸レオネッサでプレーしていた20代後半から、心の中で育んできたことだった。海外へ留学することも、視野に入れていた。かつて2011年にアメリカのプロリーグWPSのボストン・ブレイカーズでプレーしたことも影響していたという。

「アメリカ時代がすごく楽しくて。もっとチームメイトと話したかったなと思って、英語を学んでみたいという気持ちもありました」

 ホームタウンのボストン周辺には、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など多くの大学がある。学生たちがカレッジライフを送る様子が身近にあった。年を重ねるごとに、『学び』に対する気持ちが徐々に沸き上がってきた。

 大学院進学という決断の背景には、競技の垣根を越えたアスリート仲間たちの存在があった。鮫島さんは、バドミントンの藤井瑞希さん、柔道の杉本美香さんや中村美里さん、ウエイトリフティングの三宅宏実さんといった、オリンピアンの友人に相談を持ちかけたという。

「彼女たちの多くが既に大学院で学んでいて、そのつながりで色々と話を聞きました。『現役をやりながら両立できると思う?』と相談したら、ポジティブな言葉をたくさんもらえて。それが大きな後押しになりましたね」

 実際の学生生活は、実にハードスケジュールだった。平日は練習後に筋トレやケアを済ませて、少し休息をとってから、講義に出席。グループワークがある日は帰宅が遅くなることもあった。それでも、当時を振り返る彼女の表情は明るい。

「大変という感覚はあまりなかったんです。むしろ、次から次へとやるべきことがある方が人間はやれるな、と(笑)。時間に制限があったり、締め切りがあったりする方がテキパキと行動できるんです。刺激があった方が、私は生き生きできるタイプなんだと再確認しました」

大学院で学んだことについて真摯に話す鮫島さん【写真:増田美咲】
大学院で学んだことについて真摯に話す鮫島さん【写真:増田美咲】

大学院生活は「私にとってはプラスの要素しかありませんでした」

 サッカー以外の分野で働く社会人や、他競技の指導者、栄養学の専門家など、普段のサッカー生活では出会えない人たちと議論を交わすことで、視野が劇的に広がった。

「(サッカーと大学院の両立は)客観的に見れば大変だったかもしれませんが、私にとってはプラスの要素しかありませんでした」

 修士論文のテーマには、自身の主戦場である「WEリーグの集客」を選んだ。2年間の学びを経て、2025年に筑波大学大学院を修了した。

 学んだことの多くは、引退後も役立っているという。臆せず一歩を踏み出し、視野を広げていく。気負わず前進するその姿勢こそが、鮫島さんらしい生き方だ。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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