1試合14キロの「一番乗っている選手」が決勝点 最高峰で手にした戦果…名門対決へ「落ち着いて」

帝京長岡はこれまでベスト4が最高成績
第104回全国高校サッカー選手権第2日は12月29日、首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われた。NACK5スタジアムでは、プレミアリーグWESTで戦う帝京長岡(新潟)が大社(島根)に5-0で大勝。大みそかの2回戦で高川学園(山口)と顔を合わせることになった。
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敵陣深くに進入しては大社の守備網を執ように慌てさせ、強烈なシュートを何度も打ち込んだ。しかし素早く体を寄せてブロックで応戦した敵の忠実で粘り強い守備に遭い、なかなかゴールを割れなかった。
前半55秒、18分、19分、24分。杉本鎌矢と上田十輝(ともに3年)の2トップが次々とペナルティーエリアに入り込み、足と頭でゴールを狙った。時折、大社の逆襲、速攻に肝を冷やす場面もあったが、大半の時間帯で帝京長岡が主導権を握っていた。
攻めても攻めても得点できないのは、時としてサッカーに付いて回る宿命。じれったい展開が長らく続いたが、前半終了間際の40分に決勝点となる先制ゴールが生まれた。就任13年目の古沢徹監督が「(この試合の)すべてを物語る得点。あれで後半は落ち着いてプレーできました」と絶賛する値千金弾だった。
MF和食陽向(2年)が右から中央にクロス。杉本がワンタッチで落としたボールに反応したのが、シャドーのMF樋口汐音(3年)だ。パスを預かるとマーカーを瞬時にかわし、ゴール左隅に会心の右足シュートを蹴り込んだ。
新潟県予選では準決勝の北越戦で追加点、新潟明訓との決勝では決勝点を奪う勝負強さを全国選手権でも発揮。「もちろんプレミアリーグや選手権予選での得点も忘れられませんが、夢にまで見てきた大舞台でのゴールなので今までで一番うれしい」と喜びをかみ締めた。
古沢監督によると樋口は1試合14キロの走行距離を誇るそうで、「2列目から飛び出し、相手の嫌がる所に入ってシュートを決めるのが得意なんです。今、一番乗っている選手」と評する。
帝京長岡は今季のプレミアリーグWESTで、8勝2分け12敗の9位で残留を果たした。
焦らず慌てず自分たちのリズムで試合を進め、やっとの思いで先制点をもぎ取る。これで一気にギアを上げて次々にゴールを陥れたのは、高校生年代最高峰のリーグを戦った成果でもあろう。
樋口は「プレミアリーグで強豪にもまれた経験がこの試合でも生きました。球際では少し体を寄せればボールを取れる余裕ができたし、個でも組織でも強度の高い守備が身に付いたと思います」と滑らかな口調で解説してみせた。
後半に畳みかけるように得点を重ねたことも、プレミアリーグで成長できたからだろう。
左ウイングバックだった水澤那月(3年)が、後半開始から最前線にポジションを移動すると4分、前に出ていたGKの頭上を破る左足ミドルシュートを突き刺した。帝京長岡のエースの称号、背番号14を着用する和食が25分と33分に連続ゴールを奪い、追加タイムには右コーナーキックから、途中出場のMF内田昊(3年)が駄目押しのヘディングシュート。たとえ苦しんでも、きっかけひとつで戦況を一変させるのはさすがだ。
古沢監督は「球際やヘディングでは強みを持って戦ってきたと思います。格上ともがっぷり四つでやれるようになった」と2年間のプレミアリーグの戦果をこう述べた。
茂木勇樹(3年)をアンカーに据える3-1-4-2でスタートした陣形は、後半4分に2点を奪うと、4-4-2に衣替え。シャドーの和食が右ワイドに移動したことも、チームが活性化した一因だ。和食は「後半から外に張ってプレーできたことが2点につながった。ボールを握って前進するのが自分の持ち味。ハーフタイムに監督さんと(谷口哲朗)総監督さんからも指示されました。得意な形を発揮できた」と言う。
Jリーグのアカデミークラブが7チームも所属するほか、高体連からは今夏の全国高校総体を制した神村学園(鹿児島)や同準優勝の大津(熊本)、静岡学園、東福岡といった全国でも指折りの名門がしのぎを削るリーグだ。強く、たくましくなるのは自然の流れだろう。
全国選手権でのチームの最高成績は2019、20年度の4強だ。指揮官が「目標は高校日本一」と言えば、樋口も「まだ見たことのない景色を見てみたい」とベスト4以上を目指す構えだ。
2回戦の相手は31度の出場を誇る高川学園で、同じく過去の最高成績はベスト4だ。難敵には違いないが、古沢監督は「次は落ち着いてうちらしい戦いができると思います」と自信ありげな口ぶりだった。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。




















