J王者内定の名門大エース「鹿島のプライドを持たないと」 尊敬してやまない森保J戦士の姿勢

明治大学の林晴己【写真:安藤隆人】
明治大学の林晴己【写真:安藤隆人】

鹿島内定の明治大学MF林晴己

 大学サッカー界の年内最後の試合となる第74回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)が開幕した。今年は全国7地域のリーグ戦で上位となったチームが12月8日に一発勝負のプレーオフを戦い、勝者が関東王者の筑波大学、九州王者の福岡大学、関西王者の関西学院大学、東海王者の東海学園大学がいるそれぞれのリーグに入って決勝ラウンドへ。敗者が強化ラウンドとなるリーグ戦に移行するという方式で覇権を争う。

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 ここではインカレで輝いた選手たちの物語を描いていく。第5回は明治大学のスーパーアタッカーMF林晴己について。名門・鹿島アントラーズ入りが内定している明治大のエースは大怪我を乗り越えて新たなスタートを切った――。

「タイトルを獲得するようなクラブにまず選んでもらったという自覚を持っていますし、今から鹿島のプライドを持たないといけないと思っています」

 今季のJ1リーグにおいて、最終節で横浜・Fマリノスを2-1で下して21冠目となる、9年ぶり9度目のリーグタイトルを手にした鹿島。林は来季から加入するクラブの快挙に喜ぶだけではなく、即戦力として加入しなければいけない決意と覚悟を口にした。

 大学最後の大会で自らを鹿島にふさわしい選手であることを証明するべく、彼はまずは決勝ラウンド進出をかけた札幌大学とのプレーオフのピッチに立った。

 実はまだ怪我から復帰したばかりだった。今季に入ってから徐々に両脛に違和感を覚えるようになった。日に日に痛みや腫れが増していき、「プレーしていてもつまずきそうになったり、バランスが崩れてしまったりしていました。ボールタッチの感覚もいつもと違うようになった」と夏についに限界を迎えた。

 チームと話し合った結果、関東大学サッカーリーグ1部の中断期間を利用して両脛の切開手術を行うことを決め、手術は無事に終わった。

「脛の筋肉が圧迫されて、神経も圧迫されて痛みを生じていたので、切開して筋膜を解放する手術でした。術後の初めは不安があったんですけど、徐々に違和感もなくなってきて、ボールを蹴るようになって本当に解放されたというか、出力を持ってプレーできるようになりました」

 リーグ後期に完全復活を果たすと、第15節の中央大学戦以降は全試合フル出場。2ゴールをマークし、その勢いを持ってインカレに臨めている。

「もう今は症状もなく、思いっきりやれているので、あのタイミングで手術に踏み切って本当に良かったかなと思っています。手術前はもっとプレーで追求したいところがあったにもかかわらず、追求することができなかったので、復帰をしてからはとことん自分のやるべきことに向き合って突き詰められていると思います」

 プレーだけではなく、人間性もピカイチだ。鹿島において心から尊敬をする人物に、日本代表GK早川友基を挙げている。早川は明治大の先輩に当たるが、尊敬する理由は練習参加の時にプレーをしやすいように声をかけてくれたり、ご飯に連れて行ってくれたり、後輩を温かく迎え入れてくれたことだけではない。

「早川さんは試合でも練習でも周りにどんどん要求しますし、その鬼気迫る姿を見て『本当に明治の先輩だな』と思うところが多い。妥協しない姿勢は本当に尊敬しますし、人間性も優しくてチーム想いで、早川さんのような選手になりたいと心から思いました」

 尊敬する先輩の姿を追いかけながら、まずは鹿島のように明治大でタイトルを掴み取って、常勝軍団から常勝軍団へとステップアップするために、残り少ない大学生活に将来を重ね合わせている。

「来季はJ1の2連覇を狙うクラブということで、相手はより鹿島に対して熱い気持ちを持って戦ってくる。そこを跳ね返すようなメンタルも必要ですし、技術も必要。合流するまでにどこまで自分を高められるか。自分の良さをもっともっと磨いて、早川さんのように早く周りから信頼される選手になるために。今に全力を尽くします」

 13日からは決勝ラウンドが幕を開ける。総理大臣杯王者の東洋大学、東海王者の東海学園大学、九州産業大学を退けて1位となり、ノックアウトステージに進んで2年ぶり5度目の覇権を掴み取るべく。林はその鋭いドリブルとシュートスキルを駆使して輝きを放つ。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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