日本に必要な“マリーシア”「普段の自分を忘れて」 外国人監督が指摘「相手に敬意を払いすぎている」

なでしこジャパンのニルス・ニールセン監督【写真:砂坂美紀】
なでしこジャパンのニルス・ニールセン監督【写真:砂坂美紀】

ブラジル戦で見えた“マリーシア”の欠如

 日本女子代表(なでしこジャパン)のニルス・ニールセン監督が、12月4日に千葉県内の高円宮記念JFA夢フィールドで就任からの1年を振り返った。なでしこ初の外国人だからこそ見えた、日本の課題と文化への適応の難しさについて語った。世界一に返り咲くために、強化を進めるチームの新たな取り組みについても明かした。

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「日本人は相手に敬意を払いすぎているのではないか」と、ニールセン監督は折に触れて語っている。今回も世界で勝つための課題として挙げたポイントはこの点だ。

 その象徴的な例として挙げられたのが、5月の強豪ブラジルとの2連戦だ。ブラジル代表の選手たちは、ユニフォームを引っ張り、身体をぶつけてファウルをしてでも止めにかかってきた。あの手この手で主導権を握ろうとする、いわゆる「マリーシア(ずる賢さ)」を厭わなかった。指揮官は、なでしこにもブラジルのような戦いを求めているという。

「試合の時だけは、普段の自分を忘れてほしい。しっかりと相手を圧倒することだけを考えてほしい」と、ニールセン監督は熱を込めて語る。なでしこの “クリーンな戦い”は称賛されるべきだが、勝負どころでは“弱点”にもなり得るというのだ。

「ピッチ外では礼儀正しく、リスペクトを持つことは日本の素晴らしい文化だ。しかし、ホイッスルが鳴れば別人のように振る舞い、時にはファウル覚悟でプレーをする必要がある。相手が10キロ重いなど体格差があっても、泥臭く勝利に執着してほしい」

 デンマーク出身のニールセン監督は、日本には「人とのつながり」を重視する文化があることに気づいたという。監督が最終的な決定をする場面が多いことにも違いを感じている。

「それぞれの国のやり方があると思うので、しっかり日本のルールに従っていこうと思ってます。そのうえで、選手と最高の結果を求めて、より良い成功を目指していく」

ミーティング方法の刷新で積極的なコミュニケーションを図る

 チーム作りにおいて最も変化したのが、コミュニケーションの手法だ。就任当初は通訳を介することでミーティングが長時間化することもあった。そこで先日の長崎合宿では大胆な改革が行われた。

 ミーティングでは、英語が理解できる選手とそうでない選手を分けて、同時通訳を分からない選手のそばですることにした。基本的な戦術確認はニールセン監督と意思確認をした狩野倫久コーチと小杉光正テクニカルスタッフが日本語で直接伝える形式に変更。時間を短縮し、選手が質問しやすい環境を作り出したのだ。カナダ戦前日に行われたミーティングでは、選手から活発な質問が飛び交い積極的なコミュニケーションを図ることができた。

「時間をかけず、明確に選手に伝えることができたので、良い修正ができたと思う。ミーティング中に質問が活発に出て理解が深まり、非常に価値のある変化だった」

 新たな取り組みの効果もあり、国内でのカナダとの2連戦を制して、手応えを掴んだ様子のニールセン監督。来年3月のアジア杯ではW杯の出場権を懸けた戦いが待っている。言葉も文化も違うなかで指揮を執ってきたが、トライ&エラーを繰り返して得たものは大きい。世界一となる夢へ向け、なでしこジャパンを率いていくことを誓った。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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