JFL一筋でプレー「自分自身の弱さもある」 選んだ社員選手の道は「正解にしようと頑張ってきた」

今季限りで引退のHondaFCのMF鈴木雄也がMVP
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日本フットボールリーグ(JFL)の年間表彰式が4日に都内のホテルで行われ、MVPにHondaFCのMF鈴木雄也(33)が選出された。今季限りで引退する鈴木はチームの中心として2年ぶり11回目の優勝に貢献。Honda一筋13年間、長いリーグへの功績も評価されて「特別賞」も贈られた。
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JFL史上最多の11回目のベストイレブン、同じく4回目のMVPに輝き、特別賞も手にした。13年間で出場364試合、ラストシーズンも全30試合に出場した鈴木は「いい形で終わりたいと思っていたので、うれしいです。若い選手に引っ張ってもらった。みんなに感謝したい」と謙虚に話した。
本田に入社した13年こそJFL5位だったが、その後は圧倒的な力を見せた。14年にリーグ優勝すると、16年からはリーグ初の4連覇。世代交代もあって昨季こそ7位と低迷したが、後半戦で追い上げて王座を奪還した。鈴木は「新しい選手が素晴らしい活躍をしてくれた」と若手をたたえたが、正確なプレーで攻守の中心となり、抜群のリーダーシップでチームを引っ張ったのは今年も鈴木だった。
多くのサッカー少年のように「プロになるのが夢だった」という。専大では4年の時に主将として関東大学リーグ連覇、MVPにも輝いた。しかし、Jクラブから思ったようなオファーは届かず、アマチュアとしてHonda入り。「自分の力が上でやるレベルになかったということです」と振り返った。
Honda入り後は、その活躍でJクラブからのオファーも数多く届いた。「(移籍を)考えないわけではなかったけれど、自信がなかった」。Jリーグへ活躍の場を移すチームメートも少なくないが、鈴木はHondaでプレーし続ける道を選んだ。「(移籍しなかったのは)自分自身の弱さもある。でも、それを知ることができたから、ここで活躍できた」とも言った。
「サッカーだけを背負って生きていくことが、僕にはできなかった」から、社員選手の道を選んだ。仕事とサッカーの両立は決して楽ではないが「中途半端になるなら社業に専念するつもりでした。自分の選んだ道を正解にしようと頑張ってきた。プロになったらどうなっていたか分からないけれど、今はこの道を選んで良かったと思っています」と胸を張った。
「僕らの役割は、まず従業員に活力を届けること」と企業戦士らしく言う。そんな社員たちが盛り上がるのは「リーグ戦ではなく天皇杯なんですよ」。勝って当たり前のJFLではなく、Jクラブとのガチンコ勝負が全社的に盛り上がったという。
JFL優勝とともにチームが毎年目標にするのが天皇杯。鈴木が主将だった19年には札幌、浦和のJ1勢など静岡県予選からJクラブ5チームを撃破してベスト8に進んだ。準々決勝で鹿島に惜敗したが、アマチュアチームの躍進は大きな話題になった。
もっとも、鈴木は「悔しいですね。今でも。よく頑張ったとか言われると、なおさら悔しい」と鹿島戦を振り返った。「アマチュアだから負けていいなんてことは絶対にない。試合になればプロもアマもない」と言葉に力を込めた。トップレベルで戦ってきた社員選手だからこその矜持。これこそが、Hondaの強さの源なのかもしれない。
34歳の引退に周囲からは「まだできる」の声もあった。もっとも、サッカーに限らずどのスポーツの企業チームでも社員選手の「暗黙の定年」は一般的。サッカーだけを背負うプロとは違って、社業もある。いつかはプレーを離れて仕事に専念する必要があるからで、鈴木も「プロだったら辞めてないかもしれないけれど、仕事もあるので」と話した。
充実したサッカー人生を送ってきた自負があるからこそ、第二の人生も「楽しみです」と言い切る。「今年の優勝を勝ち続けるチームの1歩目にしてほしい」と離れるチームにエールを送った後、自身の第二の人生について「物事をいろいろな角度で見たいし、世の中の幅を知りたい」と含蓄のある言葉を並べた。「2児のパパとして頑張らないと」と言って笑った。
プレー同様にクレバーで熱い受け答え、サッカーと仕事に対する真摯な姿勢。話が終わると立ち上がり「ありがとうございました」と言って頭を下げた。鈴木がチームメートに尊敬され、サポーターに愛され、他チームやリーグからも認められる理由が分かった気がした。日本のアマチュアサッカー界を代表してきた「ミスターJFL」が、チームの優勝とMVPを手に現役生活にピリオドを打った。
第27回JFL個人表彰
最優秀選手賞(MVP) 鈴木雄也(HondaFC)
得点王(19得点) 藤本憲明(いわてグルージャ盛岡)
後藤卓磨(FCティアモ枚方)
新人王 斉藤涼優(HondaFC)
優勝監督賞 糸数昌太(HondaFC)
特別賞 鈴木雄也(HondaFC)
◆新入会 JFLは4日の理事会で全国地域チャンピオンズリーグ1位のジェイリースFC(大分市)と同2位で入れ替え戦に勝利したVONDS市原FC(市原市)の入会を承認した。リーグ戦16位の飛鳥FC(橿原市)と同15位で入れ替え戦に敗れたアトレチコ鈴鹿(鈴鹿市)が地域リーグに降格する。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。













