強豪校1年でレギュラーも「本当に油断できない」 “後輩”の台頭に危機感…「1個下にいる」

昌平の1年生ストライカー・立野京弥
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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第28回は埼玉県決勝の昌平vs武南から。昨年度のインターハイ王者と伝統校の一戦は両者一歩も譲らず。一進一退の攻防が続いた後半アディショナルタイム2分、昌平のMF長璃喜の閃光のようなドリブルシュートが決まり、昌平が2年ぶり7回目の選手権出場を手にした。
1年生ながら昌平の9番を背負って最前線に立つ183cmの注目ストライカー・立野京弥。U-16日本代表でもあるルーキーが感じている危機感とは。
フィジカル面ではまだまだ未成熟だが、加速力、ボールを収める力、シュートセンスは非凡なものを持っている。
プレミアリーグEASTでは開幕スタメンでいきなりゴールを挙げると、そこからレギュラーに定着。しかし、インターハイ予選前に負傷離脱をし、インターハイはサポートメンバーに回ったが、そこで自分にベクトルを向けて昌平のストライカーとして自分に何ができるか、何をすべきかを真剣に考える機会に変えた。フィジカルの強化とプレーの整理ができたことで、インターハイ明けには再びレギュラーを取り返し、再び不動の存在となった。
「1年目からかなり良い経験ができているのは本当に良かったと思っていますが、やっぱり『一年生だから多少通用しなくていいよね』みたいな考えは絶対に持ってはいけないと思っています」
覚悟を持って臨んだ選手権予選。立野がヒーローになったのは準決勝の成徳深谷戦だった。0-1の状況で迎えた60分にゴール前のこぼれに反応して右足を一閃し同点弾を挙げると、延長後半7分にはクロスを受けてから鮮やかなターンでマークを外して、決勝弾となる逆転ゴールを突き刺した。
武南との決勝。立野はターゲットマンとして、MF山口豪太(湘南ベルマーレ内定)、長璃喜など高校トップレベルのアタッカー陣の推進力を引き出す動きをすべく、最前線で頭をフル回転させながら起点を作った。
「長くんと豪太くんはプレーも判断も速いので、常に動き出しや反応する準備をしておかないと間に合わないんです。自分のエリアに入ってきたら抜け出さないといけないし、長くんのドリブルコースを作るのも僕の仕事の1つ。その上でラストパスやこぼれ球に反応できるようにすることを心がけています」
この言葉通りの動きが長の劇的決勝弾を導き出した。長が左サイドで抜け出した瞬間、左寄り中央にいた立野は、マッチアップしたCBを引き付けて長のコースを開けるように右斜めに走り出した。そしてグングン加速して近づいてくる長がカットインしてくることを読んで、そのまま左前に流れて内側のコースを開けようとした。すると、カットインではなく縦に切り返した長を見て、彼は瞬時に左に流れるのをやめて、シュートコースを開けるとともに、GKが弾いたこぼれを詰める準備に入った。
長のシュートはそのままゴールに吸い込まれたが、彼の特徴をよく理解してプレーを変化させながら動いた立野の一連のプレーも、まさにファインプレーだった。
「勝利することができたのは嬉しいですが、この試合でシュートは打てましたが、相手に当たってしまったり、収めるべきところで収めきれなかったりと課題はたくさんあると感じました。今、9番に求められるのは万能型と言われるので、そこに達するために課題を見つめ直していきたいです。タスクが多くても決めるのが9番の仕事。残りのプレミア、選手権でそれを全うしてチームの勝利に貢献したいと思います」
1年生とは思えないほど、自分の考えを持ち、冷静に言葉に表すことができる。人間的にも魅力的なものを持っている立野に、「どうしてそこまで客観的に自分を見ることができているのか」と聞くと、「今、危機感の方が強いんです」と答えてこう続けた。
「今出られているから良いとは少しも思っていません。豪太くんも長くんも1年生から出ていて、昨年は苦しい時期があった中で、それを乗り越えて今、高校3年生で結果も残してプロから注目される存在になった。自分も苦しみながらも活躍できる選手になりたいと思います。それに今、ラヴィーダには1個下のFW(オツコロ)海桜(かいおう)がいるので、本当に油断ができないんです」
今年のラヴィーダの10番を背負うFWオツコロは178cmのサイズでずば抜けたスピードを持つストライカー。「来年は本当にいつレギュラーを取られるか分からないと思っています」と下からの突き上げがあるからこそ、自分を常に律し、かつ絶対に負けたくないという強い意志を持っている。
「どんなに苦しくても1点を取る。周りやスタッフからの信頼を掴むためにも、自分自身が成長するためにも、ここから貪欲に取り組んでいきたいと思います」
ポテンシャルも気概も十分。今後さらに成長曲線を描いていくであろう1年生ストライカーから目が離せない。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















