スタンドからの「ありがとう」に涙…昌子源が立ち直った指揮官からの言葉「威厳を失うな」

昌子が試合後に涙
FC町田ゼルビアは11月22日に行われた天皇杯決勝でヴィッセル神戸に3-1で勝利し、初のタイトルを獲得した。2シーズン前、まだJ2リーグから昇格したばかりのクラブに加入したDF昌子源は、優勝が決まった瞬間に涙を流した。「泣くつもりなかったんですけど」という昌子は、メインスタンドからの「昌子ありがとう」と言った声が聞こえたことで涙腺が緩んだことを明かして、「一つ目のタイトルを取るって、本当に難しいことだと思いますし、僕らチームとしても相当な覚悟を持って挑んだ一戦だったので、良かったです」と来シーズン以降、ユニフォームに輝くことになるであろう最初の星を獲得できた意義を喜んだ。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
昨季、J1で3位と躍進した町田だが、今季は苦しい1年となった。昌子にとっても2つのポイントがあった。一つ目は、川崎フロンターレに5失点を喫した試合。もう一つは、自身のオウンゴールで先制点を与えて敗れたAFCチャンピオンズリーグ戦でのメルボルン戦だ。
公式戦13試合無敗で臨んだなか3-5で敗れた川崎戦について「個人の意見になっちゃうんですけど」と前置きして「本当に下を向いていた時に、厳しい声もありましたが『顔をあげろ』と言ってくれたサポーターのみなさんの光景。それが本当に忘れられない。その瞬間に本当に『自分のため、チームのため、家族のためが大半を占めることがあるけれど、みなさんのためにもやらないといけない』とあらためて強く思いました。『その恩を返すのは今日かな』と決勝進出が決まったあとからは、結構考えていました」と、自分たちを支えてくれたサポーターへの強い思いを持って決勝を戦っていたと語った。
もう一つのメルボルン戦の後では、自身のバックパスから失点した。チームを引っ張らなければいけないキャプテンの致命的なミスでの敗戦は、チームの士気にも大いに影響しかねない。昌子自身に動揺が走っても不思議ではないなか、黒田剛監督からかけられた言葉は、昌子にとっても大きかった。
「メルボルン戦で僕がありえないオウンゴールをした時は、『キャプテンの威厳を失うな』と口を酸っぱく、常に言われました。『気にするな、このチームはおまえがキャプテンだ』『もう何かものを言えないとか、考えなくて良い。とにかく威厳を失うな』『このチームのキャプテンは、おまえだ』と言い続けてくれました。今シーズンもほとんどの試合に出してくれて、リーグ戦で一番試合にも出ていました。リーグで優勝がなくなり、ACL(出場権)圏内に入るのも難しくなった責任は感じていましたが、それでも監督が迷うことなく僕を起用してくれている、その思いに応えないといけないとは常に思っていたので。今日一つ形として、監督にカップを掲げてもらえたのは、キャプテンをやっている以上は嬉しかったですね」と、監督からの信頼も大きなモチベーションになっていたと明かした。
リーグ2連覇、昨季は天皇杯も優勝していた神戸を下して初のタイトルを獲得した町田だが、そのチームのキャプテンは「本当に横綱として存在感を放っていた神戸さんが相手だったから、僕らもぶつかりにいけたと思います」と、この日の対戦相手に敬意を示した。「それくらい(神戸は)王者でしたし、所属している大迫(勇也)くんとかゴウちゃん(酒井高徳)とか選手にもリスペクトしていますが、神戸というチームにもリスペクトしています。割と最近タイトルを獲ったチームじゃないですか?それでもこういう王者の風格のある存在でいられる。それは僕らが目指すべきところの上にいるチームだと思うので、今日は勝敗が付いてしまいましたが、神戸という相手と決勝で戦えたことが、僕ら町田にとってはかけがえのないことだと思っています」と、続けた。
今シーズンの経験も、また昌子源というDFを大きく成長させるものになったに違いない。試合後、昌子はチームメイト達に「(タイトルの数を)ゼロから1にするのは難しい。今回、0から1になった選手もうちにはたくさんいる。今年は残念ながらもうリーグを含めてタイトル獲得はできないけど、来年以降、絶対にまたこの瞬間を味わいたくなる。僕がそうだから」と、伝えたという。そして「自分個人は、それ(タイトル)を常に求めるサッカー人生でありたいと思っています。今はすごい嬉しさといろんなものが感情としてありますが、明日になったら『昨日の光景をもう一回味わいたいな』と思っていると思いますし、チームとしてこの決勝に向かう一週間だけではなく、天皇杯が始まってから、その間にリーグ、ルヴァン杯、ACLも入ってきたなか、僕らの向かいに行った姿勢は間違いなかったという証明にもなったので。これで一つ、チームとして大きな基準が、軸ができたんじゃないかなと思います」と、あらためて初タイトルを獲得した意義を強調した。
(河合 拓 / Taku Kawai)





















