高卒→プロ入りに迷いも「努力をすれば補える」 背中押した家族の言葉「チャンスがあるなら」

前橋育英高校の久保遥夢【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
前橋育英高校の久保遥夢【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

前橋育英の久保遥夢「ここからはJ1内定選手として見られる」

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第20回は群馬県決勝の前橋育英vs前橋商業の伝統の『群馬クラシコ』から。前年度選手権王者は、伝統校の前橋商業の全員守備、全員攻撃に手を焼くも、前半に挙げたMF柴野快仁(FC今治内定)のゴールを守り抜いて5年連続28回目の出場を決めた。県予選を無失点に封じ込めた前橋育英のDFリーダー・久保遥夢が見せた成長とは―。

 夏を越えて胸板が厚くなり、首回りも太くなった。昨年よりも着実にフィジカルレベルが上がっている中で、守備力と前への推進力はよりパワーと技術に裏付けされるようになっている。

 身長183cmのサイズと屈強なフィジカル、ボールハント力を持つ前橋育英のCB久保遥夢は、2連覇のかかった選手権の出場権を獲得すべく、群馬県予選決勝のピッチに立った。対するは伝統校で長年のライバルである前橋商業。「群馬クラシコ」と呼ばれる一戦で、久保は強固な壁として立ちはだかった。

 前橋商業は守備時には「4-4-2」の後ろの2ラインでブロックを作るが、攻撃に転じた瞬間に機動力とパスセンスのあるボランチが一気に攻撃のスイッチを入れて、前線に残した2人のアタッカーに素早く繋いで、一気に後方からサポートが湧き上がってくる。

 そのカウンターの質は非常に高かったが、久保は冷静にDFラインをコントロール。前に出てインターセプトするところと、ボールと人の動きを冷静に見てから、マークする相手にボールが入った瞬間に鋭く寄せて奪い取るところ、クロスを弾くところを見極めて、状況に応じたプレー選択をした。

 それにより前橋商業はアタッキングエリア付近までいい形で侵入することができるが、そこから先がなかなか作り出せなかった。40分に左CKから柴野がヘッドを突き刺して挙げたゴールを最後まで守り切る形で1-0の勝利に導き、5年連続28回目の選手権出場を手にした。

「県予選で失点をするとしたら、カウンターや入れ替わりのシーンからになるとみんなで話していたので、DFラインが中心となって穴を作らないように集中して守ることができたと思います」

 試合後、久保は県予選を通じて無失点で優勝できたことに安堵の表情を浮かべた。昨年度の選手権では2年生CBとして全国制覇に貢献した彼は、先月にJ1の名古屋グランパス加入内定が発表された。実はこの決断は簡単なものではなく、悩んだ末に決めたものだった。

 高卒プロか大学か。プロの選択肢も複数あった。それだけ実力を持った選手である証明でもあるが、選択肢が多ければ当然悩みも増える。

「最初は高卒でJ1に入る自信が足りていませんでした。それでも正式オファーを出してくれて、熱意を感じましたし、いろいろな人に相談をしていくなか、最後は親が『チャンスがあるなら、自分を信じて進んだ方がいい』と背中を押してくれたので、家族のためにもチャレンジしようと思いました」

 結論を出すまでに時間はかかったが、悩み抜いて自分と見つめ合って下した決断だからこそ覚悟は固まった。

「練習参加をしてもフィジカルや技術など足りない部分が多いと痛感します。でも、その課題と向き合って地道に努力をすれば補えるし、この1年間で『プロの世界は自分にとってそれほど遠くないもの』と思えるようになったことで自分の成長を感じることができた。ここからはJ1内定選手として見られるので、恥じないプレーというか、責任を持ったプレーを意識していきたいと思います」

 プロの世界に羽ばたく前に、選手権で関わってくれた周りの人たちにもう一度恩返しをしないといけない。

「2連覇にこだわりすぎずに、まずは1戦、1戦しっかりと勝っていけば、またあの舞台に戻れると思う。あと1か月間、チーム全体で準備していきたいと思っていますし、個人的にはプロに行くことがゴールではないので、その先のための準備もしていきたいと思います」

「上州のタイガー軍団」の守備の要は、精悍な顔つきで、逞しくなったフィジカルとメンタルを携えて高校最後の大舞台に臨む。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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