森保Jのピンチに台頭した28歳「見られている」 手にした手応え…守備の要へ「自信がある」

フェイエノールトで中心選手として活躍する渡辺剛【写真:ANP Photo/アフロ】
フェイエノールトで中心選手として活躍する渡辺剛【写真:ANP Photo/アフロ】

渡辺剛はヨーロッパリーグでも出場を続けている

 日本代表DF渡辺剛は今季加入したフェイエノールトで開幕からレギュラーとして活躍している。オランダリーグ12節終了時で負傷欠場となった9節アルメロ戦以外、11試合全てでフル出場。ヨーロッパリーグ(EL)では4試合中4試合出場で、うち2試合がスタメンフル出場となっている。

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 オランダリーグとヨーロッパリーグとでは、対処法も少なからず変わってくる。分析スタッフがストックしてある情報も対処法も対戦歴が多いオランダリーグのクラブと、初めて当たることもあるヨーロッパリーグのクラブとでは違う。

 4節ではブンデスリーガのシュツットガルトと対戦。前半は多少優勢的に試合を進めていたフェイエノールトだが、後半シュツットガルトに徐々にリズムをつかまれると、終盤に2失点を許してしまう。試合後ミックスゾーンで取材に応じてくれた渡辺は、オランダリーグとヨーロッパリーグでプレーするときの違いについて、次のように話してくれた。

「基本的には同じモチベーションで臨んでいます。ただ長距離移動のアウェイ戦も入ってくるし、それこそ相手のプレースタイルもオランダとは全然違う。オランダは結構つないでくるクラブが多い中、今日の相手はロングボールもあったり。相手によって俺たちの動き方とか、守備の仕方も全然変わってくる。監督もそういう戦術が好きなので、今日はアジャストしながらできたかなと思う。オランダリーグとヨーロッパリーグで、自分の出すパフォーマンスの違いというのは、これからも出てくると思うし、そういうのを意識していく必要があるかなと思います」

 終盤の失点までフェイエノールトは、渡辺を中心とした守備がうまく機能し、相手にさほど多くのチャンスを許さなかった。シュツットガルトスポーツディレクターのフランク・ヴォールゲムートは「フェイエノールトは、スーパーカップで対戦したバイエルン以来の強敵だ」と警戒レベル最大で臨んでいたし、シュツットガルト監督のセバスティアン・ヘーネスも「前半は自分達がイメージした展開ではなかった。ボールポゼッションの時間帯が少なく、50%のデュエルに多く負けてしまったし、チャンスの数も少なかった」と、苦戦していたことを認めている。

 後半のシュツットガルトはビルドアップでつなぐだけではなく、フェイエノールト守備ライン裏へのロングボールを併用することで、相手ラインを下げ、相手陣内でボールを回す局面を増やしてきた。ただここまでは渡辺らも想定済みではあった。

「ロングボールを裏に蹴られることは、僕たちも想定済みだった。蹴られたところから崩されないというのと、そこからしっかり潰すというのは、けっこうできていたかなと」

 確かに裏抜けを狙う相手に対して少なからず揺さぶられながらも、その後の対応は悪くなかったし、大きなピンチはなかった。ただ後半24分、元ドイツ代表デニス・ウンダブに守備ラインのギャップをつかれてシュートを許したところから、少しシュツットガルトに攻撃のにおいがし出したというのはある。

 後半39の失点シーンは、右サイドへ素早く展開した後のクロスボールを後ろから走りこんだビラル・エルカノウスがヘディングでゴールを決めたというもの。渡辺ら4バックでは対処できないスペースへフリーでの侵入を許したところがこの失点の要因となった。

 シュツットガルトのヘーネス監督は得点シーンを振り返り、「ボール奪取後のパス展開後、すぐにゴール前へと走り出した」点をポイントとしてあげていた。1点目のエルカノウス、そして2点目のウンダブはともに、パスをさばいた後すぐにペナルティエリアへ向けて猛然とダッシュを開始し、サイドからのクロスを前者はヘディングで、後者は右足で流し込んだ。

「ハーフタイムを生かして、修正することができた。我々は確信と決心をもってペナルティエリアへ飛び込むことができた」

元ドイツ代表FWウンダブはプレミアでもプレーしたストライカー

 2点目を決めたウンダブはここ最近負傷の影響で代表から外れているが、その得点力は非常に高いものがある。警戒していた選手だっただけに、失点を喫したのは渡辺にとっても悔しい思いがある。

「もともとプレミアリーグにいて、ベルギーにもいたというのは知っている選手だし、ああいう相手にどこまでできるかというのは、自分の中でもあった。比較的やれたかなと思うところもありますけど、結局、最後にあいつに決められているというのがあるので。まだまだかなというのはありますね」

 2失点目の場面では、渡辺はパワープレーで前線に上がっていたので、どうすることもできなかった。それでもチーム守備を統率する選手として、チーム全体の守備に対する責任感がそこにはある。

 DFにとって様々なタイプのFWと対峙する経験はとても大きい。そしてその経験値は間違いなく代表でも重要なものとなるだろう。日本代表の守備陣に故障者が続出する中、10月の代表ウィークではパラグアイ、ブラジルの両試合にフル出場。今回11月14日のガーナ戦でもフル出場し、守備の中心として奮闘している。

 渡辺はいま、代表における自分をどのように受け止めているのだろう。落ち着いたトーンで、次のように話してくれた。

「今見られている状況だと思う。注目されている中での試合で、自分自身も前回よかったところと、反省点がある中で、まずチームでというところをやって、代表で結果を出さないといけない。常にそうですけど、代表に出られるのが当たり前じゃない。しっかりチャンスをつかみ続けるというのは意識したい。これまでもそうやってやってきた。自分の中では自信があるので、そういうプレーを出せたらいいなと思います」

 ガーナ戦では4試合ぶりの無失点に貢献した渡辺。欧州の舞台で成長を続ける28歳が、存在感を増している。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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