強豪校に現れた新星「レベルの高さに戸惑った」 不動のWエースに”待った” 「2人だけじゃないぞと」

流通経済大柏の2年生ストライカー・渡辺瞳也
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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第18回は千葉県予選準決勝、流通経済大柏vs市立船橋のビッグカードから。ともにプレミアリーグEASTに所属し、「昨年度準優勝校vs一昨年度ベスト4」という全国大会決勝でもおかしくないビッグカードは、延長戦までもつれ込む激闘の末に4-3で流通経済大柏に軍配が上がった。この試合で奮闘を見せた流通経済大柏の2年生ストライカー・渡辺瞳也が抱く思いとは――。
流通経済大柏のFWのポジション争いに新たなタレントが名乗りをあげた。これまではプレミアリーグEASTで8ゴールずつを決め、チームトップスコアラーの大藤颯太(東京ヴェルディ内定)と金子琉久の不動の3年生ツートップが前線に君臨してきたが、ここにきて期待の2年生が頭角を現し始めている。
182cm、75kgのサイズとフィジカルを持ち、ポストプレーや果敢な前線からのプレスを見せるFW渡辺瞳也は今年、首位をひた走るプリンスリーグ関東2部において6ゴールのチームトップの6ゴールをマークする活躍を見せ、10月のプレミアEAST第18節の青森山田戦で途中出場からトップチームデビュー。今予選でも準々決勝の八千代戦に出場し、準決勝の市立船橋との大一番では大藤が体調不良でベンチから外れたこともあり、スタメンに抜擢をされた。
「八千代戦は本当に緊張したし、周りに遠慮をしてしまった。3年生は負けたらそれで終わりという緊張感に飲まれてしまって、全然良さが出せませんでした。その経験が準々決勝でできたので、今日は比較的冷静に戦うことができました」
金子とツートップを組み、立ち上がりから馬力あふれる前への推進力を駆使して最前線で起点を生み出した。3-1で折り返した後半はロングボールが増えたことで、彼は裏抜けからのシュートという形よりも浮き球のボールを収めたり、空中戦を制して周りにボールを配ったりと、相手3バックとのフィジカルバトルで存在感を見せた。
そして3-3で迎えた延長後半2分、市船陣内での浮き球のボールの応酬からMF島谷義進(水戸ホーリーホック内定)がヘッドDFラインの背後にボールを落とした瞬間、渡辺は猛ダッシュでボールを処理しようとしたDF2人に強烈なプレスをかけた。
屈強なフィジカルと加速力によって相手DFと入れ替わる寸前まで行ったが、必死でクリアを試みた市船の小林空翔が倒れ込みながら先にボールに触れた。だが、クリアしたボールが渡辺の身体に当たり、近くにいたフリーのFWオゲデベ有規のもとに。オゲデベの狙いすましたシュートがゴール左隅に吸い込まれ、激戦のピリオドが打たれた。
実は延長後半開始時点で既に彼の足は攣っていた。このシーンの前にも両足を必死に伸ばすなど限界に近かったが、「あの瞬間、全力で行けば何かが起こると思って、最後の力を振り絞って突進しました。クリアボールが腿あたりに当たって、いいところにこぼれてくれました」と執念を見せつけた。その直後に両足を攣って交代。まさに全てを出し切った。
「本当は入れ替わって僕がゴールを決めたかった」とストライカーとしての本音をこぼしたが、「瞳也は本当に良くなっている。大藤とかもうかうかしていられないと思う」と榎本雅大監督も目を細めたように、前線での頼もしさは示すことができた。
「途中で金子さんが交代になって、少し不安になったのですが、『俺がやらなきゃ』という気持ちになれたからこそ、最後のプレーにつながったと思います。大藤さんも金子さんも僕にとって尊敬できる先輩。大藤さんも絶対にこのままでは終わらないので、より競争は激化すると思います。だからこそ、『流経柏のFWは2人だけじゃないぞ』というのを示していきたいと思っています」
目指す選手は「同じ身長、同じ体重で、世界と戦えることを証明してくれる人」と日本代表FWの上田綺世(アヤックス)を挙げる。上田だけではなく、福田師王(ボルシアMG)、
熊田直紀(いわきFC)の映像も繰り返し見ては、動き出し、クロスへの合わせ方、強引な突破などを参考にしている。まさに伸び盛りのストライカーの目は真っ直ぐ前に向いている。
「プレミアもレベルの高さに戸惑いましたが、選手権予選は雰囲気も何もかも違った。ここを経験できたのは大きいですが、まだAチームでゴールを決めていないので、決勝でチャンスをもらえたら結果で示したい」
いざ決勝へ。2年生ストライカーの思いが結実した時、チームにとっても新たな明るい光が差し込んでいく。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















