大舞台相手は旧友「知っている顔ばかり」 仲間からの誘い断り…ライバル進学した理由

帝京大可児の井上蓮斗「ずっと一緒にやってきた仲間なので、本当に迷いました」
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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第11回は岐阜県予選決勝。大会6連覇中の帝京大可児と近年メキメキと頭角を現してきた新鋭・美濃加茂との一戦から。帝京大可児のエースストライカー・井上蓮斗にとってこの決勝は自分の決断を正解にするために、絶対に勝たなければいけない一戦だった。
「ピッチに立って向かい合ったら、ほとんど知っている顔ばかりでいろんな思いがこみ上げてきました」
中学時代、FCV可児ジュニアユースに所属していた井上は、高校進学時に大きな決断を下していた。2019年にFCV可児と美濃加茂高が業務提携を結び、サッカー部の本格強化が始まると、多くの選手がジュニアユースから美濃加茂へと進むようになった。
井上の代は日本クラブユースサッカー(U-15)大会と高円宮杯JFA全日本U-15選手権の2つの全国大会に出場するなど、大きな結果を残した代だった。多くの選手が『打倒・帝京大可児』を掲げて美濃加茂に進むなかで、仲間からの誘いを受けながらも帝京大可児に行く決断を下した。
「ずっと一緒にやってきた仲間なので、本当に迷いました。帝京大可児のサッカーが好きで、そこで成長したいと思ったなかで、他のクラブの帝京大可児を希望している友達から『(FCV可児のチームメイトと)もう2回も全国出ているんだから、今度はライバルとして戦おうよ』と言われて覚悟が決まりました。
それにFCV可児の先輩で帝京大可児のエースだった松永悠碁(名城大、プリンス東海得点王)さんに『帝京大可児はめげずに頑張っていれば必ず使ってもらえるときが来るよ』と言ってもらって、一度決めたらどんなに苦しくてもめげずにやって行こう、高校サッカーは1回しかないので、後悔しない選択にしようと決意できたのも大きかったです」
自らの意思でかつての仲間たちと別の道を進むことを決めた井上は、持ち前のスピードとゴールへの嗅覚に加え、ショートパスからの一瞬の抜け出しや狭い局面を打破していく力を磨いた。
だが、昨年は同じポジションにFW加藤隆成(明治大)という絶対的なエースストライカーがおり、井上は試合終盤で投入されるジョーカー的な役割を担っていた。選手権予選前にうまく自分を表現できない試合が続いたことで、選手権のベンチメンバーからも外れてしまった。
悔しさを抱きながら仲間たちが選手権で躍動する姿を見つめるなかで、3回戦の前橋育英戦後のロッカールームで思わぬ言葉を先輩たちから掛けられた。
「隆成さんから『お前が次9番を背負うことになるんだから、点をとってチームを勝たせられる選手になれ』と言われたんです。周りの先輩たちも『来年はお前が9番だぞ』と言われ、そこで悔しがっている暇はないなと思いました」
エースストライカーの称号を継承した以上、チームのためにゴールを狙い続けて、結果で証明していかないといけない。奮起した今年はプリンス東海で6ゴールをマーク。今予選でも準々決勝、準決勝と1-0の接戦を制してきたが、そのいずれも井上の決勝ゴールだった。
迎えた決勝戦。美濃加茂のスタメン11人中9人、ベンチ入りの9人中6人がFCV可児出身の選手だった。中学時代に苦楽をともにし、全国出場という歓喜も味わった仲間に向かって、井上は立ち上がりから思いをぶつけるように激しい前線からのプレスと、ボールを持ったら果敢に仕掛ける姿勢を全面に打ち出した。
最後までゴールを狙い続けた姿勢はチームのベクトルを前に向け続け、井上の献身的なプレーによって周りがフリーになって攻撃に厚みが生まれた。ゴールこそ生まれなかったが、4-1での勝利に貢献するプレーを随所に見せた。
「ゴールを決められなかったことは悔しかったですが、大会を通しては9番の仕事ができたし、全国の切符を掴めたことで、ここに来たことを正解にすることができたと思います」
1つの区切りは終わった。次は昨年の選手権と今年のインターハイで果たせなかった全国でゴールを決めるという義務を果たすために、全力で己を磨くのみとなった。
「松永さんも隆成くんも選手権で2試合連続ゴールを叩き出している。その9番を背負っている以上、僕も全国でゴールという結果を残さないといけない。選手権ではゴールを決めて、2人も破れなかったベスト8の壁を打ち破って、初の国立を狙いたいと思います」
選んだ道をより正解にして、思いを託してくれた先輩を超えていくために。井上の真価はここから問われてくる。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















