J内定の逸材レフティー「勝たせないと」 大一番でスーパーミドル…全国で「知ってもらえるような」

ジュビロ磐田への内定が決定している増田大空【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
ジュビロ磐田への内定が決定している増田大空【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

流通経済大柏3年DF増田大空「狙い通りでした」

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 今回は千葉県予選準決勝、流通経済大柏vs市立船橋のビッグカードから。共にプレミアリーグEASTに所属し、『昨年度準優勝校vs一昨年度ベスト4』という全国大会決勝でもおかしくないビッグカードは、延長戦までもつれ込む激闘の末に4-3で流通経済大柏に軍配が上がった。この試合、左サイドで何度も精度の高い左足のキックでチャンスを作り出した左サイドバック・増田大空(そら)。ジュビロ磐田入りが内定している男が痛感した『千葉ダービー』の怖さとは。

「市船はもう失うものはないので捨て身で来ると思っていた。何があるかわからなかったので怖かったです」

 一瞬たりとも気を抜けない激戦だった。前半は完全に流通経済大柏ペースで、立ち上がりに立て続けに2ゴールを奪い、12分に1点差に迫られたが、22分に増田がスーパーゴールを叩き込んで見せた。

 左CKの展開から相手のクリアボールをペナルティーエリア外中央で鮮やかな右足トラップで収めると、寄せてきたDF3人を物ともせずに左足一閃。地を這うような弾丸ライナーとなったボールはゴール右隅に突き刺さった。約20mのスーパーミドルに多くの観衆が詰めかけたスタジアムは大きくどよめいた。

「狙い通りでした。ふわりとしたクリアボールが自分の元に飛んできた時、背後に落とす、サイドに流す、シュートを打つの選択肢があったのですが、いい場所に置くことができたのでそのまま左足を振り抜きました」

 市船を突き放す3点目。だが「3点目が入ったことで、僕としてもチームとしても少し気の緩みが出てしまった」と口にしたように、ここから市船の底力をまざまざと見せつけられることになる。

 後半、市船は前線のFW佐々木瑛汰、インサイドハーフの山本一誓と勝又悠月に素早くボールを供給してカウンターを仕掛けてきた。後半3分にロングボールでひっくり返されて佐々木にループシュートを決められると、同27分にはPKを献上し、山本に決められてついに同点に追いつかれた。

「完全に受け身に回ってしまった。2点目でああいう形を狙っていることは最初から分かっていたのに、その形でやられてしまって、僕らがメンタル的にも沈んでしまった。そこでさらに畳みかけようとしてきた市船の迫力に飲まれてしまいました」

 MF島谷義進(水戸ホーリーホック内定)と共にダブルキャプテンを務める増田は、なんとか平常心を取り戻そうと周りの選手たちの顔色を見て、ポジティブな声をかけ続けた。島谷とコミュニケーションをとりながら、守備面ではアグレッシブなプレスや球際の強さを示してプレー面でも周りを鼓舞した。

「追いつかれたときに、この苦境で自分たちの流れにどう持っていくのかは本当に考えました。みんなに『絶対に受け身になるな』と声をかけた時に、義進が『ここで決めた奴がヒーローだぞ』という言葉をかけてくれて僕も奮い立ったし、みんな奮い立ったと思います」

 ずっと2人でチームを牽引してきた相棒の言葉でさらに奮起した増田は、さらに気迫あふれるプレーで攻守において存在感を放ち、延長戦に突入すると徐々に流れを自分たちに引き寄せた。

 そして迎えた延長後半アディショナルタイム2分、島谷のヘッドからFW渡辺瞳也が競り合ったこぼれを、途中出場のFWオゲデベ有規が冷静に蹴り込んで劇的な決勝弾。ドラマチックな幕切れに増田はタイムアップの瞬間に何度も吠えた。

「プレミアでは負けた試合もあったのですが、あそこまで相手にガッと飲み込まれたことはありませんでした。今年のチームは僕を含めて選手権を経験していないメンバーが多いので、あれだけの観客が入って、負けたら終わりの緊張感で、いつもと全く違う環境、雰囲気もあって未知の領域でした。本当に初めてと言ってもいいぐらいの経験だったので、ここで市船に勝てたことは大きな自信になりましたし、貴重な経験になった。相手に主導権を握られてもそれを跳ね返す力を1つ経験できました」

 次なる舞台は決勝戦。2年連続の選手権出場に王手がかかった。

「自分がチームを勝たせないといけない立場なんで、全国に導く責任があります。(千葉県予選)決勝でも、全国でも『こういう選手がジュビロに来るんだ』と知ってもらえるようなプレーをしたいと思います」

 昨年度の選手権はスタンドから声を枯らしていただけに、選手権への思いは強い。まずは出場権を獲得するために、増田は自慢の左とキャプテンシーを研ぎ澄ませてフクダ電子アリーナのピッチに立つ。

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