一騎打ちの様相のV争い「下向く必要ない」 決勝で完敗も…求められる“気にしすぎない”

J1のラスト3試合を読む
J1も残り3節。優勝争いは鹿島アントラーズと柏レイソルの2チームがかなり優勢ではあるが、鹿島から勝ち点5差で追う3位の京都サンガと2連覇中である4位のヴィッセル神戸にも、逆転の芽は十分に残されている。ルヴァン杯を制した5位のサンフレッチェ広島も数字上の可能性はあるが、残り3試合で勝ち点8差、得失点の開きもあることを考えると、現実は厳しい。目の前の浦和レッズ戦で勝利を狙うのはもちろんだが、準決勝に残っている天皇杯で、カップ戦2冠を目指すプライオリティが高そうだ。
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首位の鹿島はここまで2度の3連敗を経験しているが、シーズンを通した戦いに安定感がある。相手を圧倒する試合は少ないが、川崎フロンターレで4度のリーグ優勝を経験した鬼木達監督の采配も含めて、接戦になるほど勝負強さを発揮している。また、思うように運べない試合でも、日本代表GK早川友基やセンターバックの植田直通を中心に耐え抜き、チャンスを逃さず決め切るのはある種、勝利の方程式になっている。
一方、2位の柏レイソルは勝ち点66で鹿島を1ポイント差で追う。リカルド・ロドリゲス監督がポゼッションを軸にした攻撃的なスタイルをベースにしながら、守備のバランスも取れている。鹿島の29失点には及ばないが、35試合で33失点は立派だ。特徴的なのは後半の強さで、前半の得失点差が+2であるのに対し、後半は+22と大きく上回る。
前半からボールを握りながら相手を守備で疲弊させて、後半に仕留める基本プランが共有されているからだろう。もちろんアウェーで5-0の大勝を飾ったガンバ大阪戦のように、前半の早い時間帯にリードを奪って、より相手がミスしやすい状況に追い込めれば理想的だが、細谷真大という絶対的なジョーカーを強みに、焦れることなく90分をゲームコントロールできるのが、柏の強みであることは間違いない。
ただ、ルヴァン杯決勝では広島に前半だけで3失点。しかも、ロングスローから2失点、直接FKも決められる形で、終盤に細谷のゴールで1点返すのが精一杯だった。リカルド監督は「我々がやるべきことはやり切った。スタイルを貫き通し、チャンスも作れた。ロングスロー2つとFKでの失点は残念だが、下を向く必要はない」と語り、失点の仕方など反省するべきところはしながら、メンタル面では前向きな切り替えも必要になってくる。
確かに、決勝だけ観れば完敗だったが、その広島にもリーグ戦では勝ち点も順位も上回っており、残り3試合に向けて下を向く必要はない。次の対戦相手である名古屋グランパスをはじめ、すでに降格の決まったアルビレックス新潟、最終節のFC町田ゼルビアも得意のセットプレーに磨きをかけて、柏に挑んでくるはず。
しかし、リーグ戦ではセットプレーの失点はPKを除くと4失点しかしていない。これは鹿島の9、神戸の6より少ない数字だ。ルヴァン杯も広島に与えたCKは1しかなく、中盤のリーダー的な存在である小泉佳穂も、ロングスローからの失点はシンプルな高さの問題ではなく、デザインの工夫でやられたことを強調していた。
「決勝だから負けたとか思ってなくて。負ける要素があったから負けてるので、そういうのを1個1個、無くしていくしかない」と小泉。彼が語るように要因を潰すという意味で、失点シーンを分析して修正することは大事だが、かと言ってセットプレーの守備にあまり気を取られすぎて、本来のストロングを見失っては本末転倒だ。
戸嶋祥郎は「この敗戦で全てを捨てる必要はないと思いますし、積み上げたものを出せた部分もある。悔しさだったり力負けした事実はありますけど、それを跳ね返してこそリーグ優勝だったり、ACLの権利が掴めると思うので。リバウンドメンタリティを持って頑張りたい」と語った。柏にとっては2011年シーズン以来となるリーグ優勝はもちろん「柏から世界へ」を掲げる通り、アジアに出るというのはクラブの悲願だ。
「このような形でファイナルを負けたあとなので、選手たちはもちろん落ち込んでいますし、いますぐ気持ちを切り替えられる状態ではありません。ただ、ルヴァンカップの決勝戦にたどり着いたのもわれわれ自身が勝ち取ったものですし、リーグ戦が残り3節のいま、2位で首位にも勝点1差。リーグを優勝する可能性も十分秘めている状態で、残り3節に臨める位置にいるのは誇らしい限りですし、残り3節で勝点9を勝ち取り、ACLに行くことと同時にリーグ優勝を目指して戦い続けていきたい」
リカルド監督はそう言い切った。柏がここまで見せてきたチーム力がうまく発揮されれば、ここから3連勝でシーズンを締めくくることも十分に可能だろう。ただ、やはりタイトルはライバルあってのもので、直接対決も無い中で、鹿島がどういう結果になっているか。両チームの結果次第では京都と神戸にも逆転チャンスはあるが、それぞれが自分たちに矢印を向けて、前向きに戦っていけるかが命運を左右するだろう。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。





















