J下部組織に“3度”不合格 ハッとした家族の言葉…憧れの高校に進学できずも「ここで本気で取り組もうと」

静岡学園2年生MF足立羽琉
第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。
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第7回は静岡県予選準々決勝・第一試合、プレミアリーグWEST9位の静岡学園高と、県リーグ1部6位の名門・清水桜が丘(旧・清水市商業)の一戦から。【4-1-4-1】のインサイドハーフでスタメン出場をした2年生MF足立羽琉は、夏にトップに上がり、大会直前でスタメンを掴んだ苦労人。彼は現実を突きつけられてもチャレンジし続ける強い気概を持っていた。
堅守速攻で守備を固めてきた清水桜が丘に対し、静学はボールを回して食いつかせながら、ブロックをこじ開けにかかった。足立も積極的にライン間で顔を出してボールを受けてワンタッチで展開をしたり、裏のスペースを狙ったりと頭をフル回転させながら打開策を模索した。
後半はより攻撃的な選手を投入したことで静学ペースに。「不用意なボールロストをしないようにしたのと、相手をずらして中央をこじ開けるプレーをより意識した」と、彼は的確なポジショニングとテンポを変えるパスを駆使して攻撃のリズムを構築。チームも後半に2ゴールを重ねて、準決勝進出を手にした。
「ようやく掴んだチャンスなのですが、リズムの面ではできたけど、シュートを2本打ったのに決めきれなかったことは反省しています。もっと迫力のある選手になりたいので、準決勝でもチャンスをもらえたら積極的にプレーしたいと思っています」
神奈川県出身の彼は川崎フロンターレのホームタウンに住み、すぐそばにあるクラブとして幼少期から応援をしていた。サッカーを始め、フロンターレのスクールに通っていたが、川崎U-12のセレクションに2度チャレンジするも両方とも不合格だった。
FC中原でプレーを続け、中学進学時にもう一度川崎U-15のセレクションに参加をするが、ここでも不合格。他にも三菱養和U-15調布、東急Sレイエスと強豪クラブを受けるが、全て一次選考で不合格となった。
地元のFC 川崎CHAMPジュニアユースの合格を勝ち取ったが、1年の時は出番を掴めなかった。この時、家族に言われた言葉が彼の意識を大きく変えた。
「もう一度、自分を見つめ直したほうがいいんじゃないか」
この言葉にハッとした。これまで何度も強豪クラブにチャレンジをしてもダメだったのは、「本気でこのクラブには入りたい」という思いが足りなかったのではないかと頭に浮かんだ。心のどこかで「どこかで受かればいい」という甘い気持ちを持っていて、何がなんでもという気持ちが足りなかったのではないかと考えた。
「僕自身がサッカーに対する本気度が足りなかったんだとそこで気づきました」
本気になって上を目指す。スイッチが入った彼は持ち前の攻撃センスを磨き始めた。中学2年生で出番を掴むと、11月に静岡の時之栖で行われた愛知県の強豪・フェルボールとの練習試合で、フェルボールの選手が目当てだった静学のスカウトの目に止まった。
すぐに練習参加を打診され、静岡に行くとハイレベルな環境を目の当たりにした。ただ、当時は川崎CHAMPの先輩が進学して活躍をしていた尚志高に憧れを持っていた。静学の魅力を感じながら、3月に尚志の練習に参加。だが、不合格の通知が届いた。
「静学で自分を磨こうと決めました。他にも県内の強豪校からはお話をいただいたのですが、4月にもう一度静学の練習に参加をして、『ここで本気で取り組もう』と思いました」
その言葉通り努力を重ねた結果、今年前半はセカンドチームとしてプリンスリーグ東海で頭角を現すと、夏の遠征でAチームに抜擢されると、そのまま残って10月のプレミアWEST第16節のファジアーノ岡山U-18戦でベンチ入り。この試合で後半アディショナルタイム2分に投入されると、同3分に鮮やかなタッチからゴールを決めて、デビュー戦初ゴールをマークした。
続く名古屋グランパスU-18戦では後半頭から投入され、翌第18節のヴィッセル神戸U-18戦では初スタメンをフル出場で飾って1-0の勝利に貢献。ここからスタメンの座をつかみ、選手権予選に突入した。
「自分の武器はパス一本で流れを変えたり、パスの質だったりするので、そこを普段の練習からこだわりを持ってやっています。今出られているからいいではなく、僕は自分がどのカテゴリーに所属していても、成長するためにやり続けることを大事にすると決めているので、満足せずにコツコツとやり続けていきたいと思います。常にその先を見据えてやりたいと思います」
サッカーがうまくなるために一番必要なこと。それは本気度。大切な根源的なものを理解している人間は強い。それを実証して行きながら、彼はこれからさらなる成長曲線を描いていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)




















