韓国から帰ってきた朴智星…監督が「どこやりたい?」 元日本代表が語る伝説の3トップ

徳島の強化本部長を務める黒部光昭氏「エリアスは日本にいていい選手じゃない」
京都サンガF.C.は今シーズン、J1優勝争いに絡む快進撃を見せている。古巣の躍進を驚きを持って見つめるのは、かつてストライカーとして活躍し、日本代表にも選出された経験を持つ黒部光昭氏。現在は地元の徳島ヴォルティスで強化本部長を務めているが、京都時代のエピソードを教えてくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全5回の最終回)
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3試合を残して首位の鹿島アントラーズに勝ち点5差の3位と、J1優勝の可能性を残しているだけでなく、クラブ史上最高順位も見えている京都。2010年代のほとんどをJ2で過ごすなど苦しい時期もあったが、唯一の主要タイトルとなっているのが2002年の天皇杯。鹿島との決勝で逆転ゴールを奪ったのが黒部氏だ。
「あのとき京都は、僕と松井大輔と朴智星によく賭けたなと思います」
当時、黒部氏は24歳、松井大輔と朴智星は21歳。「それで天皇杯をよく勝てたなというレベルでした」という若き3トップを起用したゲルト・エンゲルス監督(現徳島ヘッドコーチ)の采配が見事的中した。「ゲルトのすごかったところは、ボランチだった朴智星を右サイドで使ったことなんですよ」と黒部氏は舞台裏を明かした。
日韓ワールドカップ(W杯)の韓国代表で、フース・ヒディンク監督によって3トップの右に抜擢されていた朴智星。ポルトガル戦でゴールを奪うなどベスト4に貢献し、自信をつけてチームに戻ってきた。エンゲルス監督が「どのポジションをやりたい?」と聞くと、「右サイドをやりたい」と答えたという。
「ゲルトはそれを聞き入れて、それで3トップになったんですよ。もしそれが無かったら智星はボランチのまま出ていたので、天皇杯で勝てていたかどうかもわからない。本人がやりたいと言ったことを聞いて、ゲルトはそこをチャレンジしようと言って形を変えて、そこからチームがすごく良くなったんです」
今や伝説となった3トップ以外も、「25歳以下が7、8人くらいピッチにいるチームでした。よくあんなメンツでJ1で戦おうと思ったなというくらいの感じだったんですけどね」と振り返る黒部氏。「監督の思い描いているものと、選手がこうしたいということのバランス」がうまくかみ合った天皇杯制覇だった。
あれから23年の月日が経ち、ついに2つ目のタイトルを狙えるチームとなっている京都。今シーズンの試合を観に行ったと明かす黒部氏は、「嬉しいというより、すごいなと思います。常に真ん中より下だったクラブが、J1の上の方にいるってどういうことやねんと、やっぱり不思議ですよね」と笑顔を見せる。
なかでも、FWラファエル・エリアスには「ちょっとモノが違う。日本にいていい選手じゃないです」と感嘆。黒部氏の記録も塗り替えられているが、「僕は京都に5年いて、天皇杯も入れてハットトリック3回。彼は1年半で3回しています。しかも質が僕のレベルと違う。本当にすごい選手だと思います」と語る。
「世界レベルのクオリティです。いい選手がいると他の選手のいい部分も出てくる。原大智もすごい良くなっています。きっかけは去年の夏のタイミングでエリアスが来たことだと思います。来なかったら降格してもおかしくないくらいのチームでしたよね。彼が来て、やっぱり間違いなくチームを変えました」
京都の大熊清GMに「ラファエル・エリアスください」と笑いながらおねだりすると、「お高いよ」と返されたという黒部氏。それは冗談としても、「J1に上がることができれば、あれくらいのクオリティの選手を今度は取らないといけない。どうなっても大変な作業は続くんだと思いました」と強化目線で話す。
そして、黒部氏が第2のエリアスと見込んで獲得したのがFWルーカス・バルセロスだ。「相当モノになると思います。ここ数年で絶対にJ1でもやれる選手には間違いなくなる。エリアスの方が技術的にはうまい。でも、エリアスより能力は高いと思います」と絶賛する。旋風を巻き起こすのか、今から楽しみだ。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)





















