恋愛、SNS禁止…厳しい部則で「帰りたい」 価値観が一変したコロナ禍の出来事「衝撃を受けた」

親元を離れて入寮…航空機の横でランニングも
女子サッカーの未来を考えるーー。5年目を迎えたWEリーグと、FOOTBALL ZONEは共同企画「WE×ZONE 〜わたしたちがサッカーを続ける理由〜」で、日々奮闘する選手たちの半生に迫る。第2回はRB大宮アルディージャWOMENのMF大島暖菜(はるな)。連載3回目は、航空機の真横での練習場で仲間と切磋琢磨した高校時代。コロナ禍を乗り切り、切り開いたWEリーガーへの道について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の3回目)
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けたたましく鳴り響く離着陸音。約850メートル続く滑走路を何往復もランニングする。WEリーガーとなって4シーズン目を迎えた大島にとって、最も濃い時間を過ごしたのが高校時代だ。東京都出身の大島が選んだのは山梨の日本航空高校。親元を離れ、寮に入り、サッカーに集中する環境を選んだ。
「航空科とスポーツ科に分かれていて、よく学校の構内を飛行機が飛んでいました。滑走路を何往復も走るのが伝統で、今は無くなったみたいなんですけど。最初はフワっと入部してしまって、いざ先輩を目の前にするとレベルも高いし、部則も少し厳しくて。でも、すごく丁寧に教えてもらって謙虚さを学びました」
中学までは地元の街クラブでプレー。だからこそ「自分が上に立つことが多かった」という。厳しい環境に身を置き、挨拶や上下関係など叩き込まれた。「当時は部則も多かった。恋愛禁止、SNS禁止。1人ができないと連帯責任になるので、初めは厳しいな、帰りたいなと思っていました」。だが、1年生の時に目の前で起こった出来事が大島を変えていった。
2020年。大島が入学した年は新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威をふるっていた。入学式も遅れ、クラスメイトはマスク姿しか知らない。そのなかでもサッカーに打ち込む日々。だが、チームを悲劇が襲った。同年夏、高校総体が中止。夢舞台に破れる先輩を見て「すごいことが起きているんだ……」と動揺を隠しきれなかった。
「1年生の時はトップチームに呼ばれたり、呼ばれなかったりで中心選手になるというのは程遠い選手でした。でもコロナで全国大会がなくなって、3年生が落ち込んでいるのを目の当たりにした」

マンチェスター・シティを参考に…戦術理解度を深めた高校時代
また、集団クラスター発生の経験もした。寮は4人部屋で、1週間以上の隔離。授業もオンラインでサッカーボールに触れることもできなかった。
「共同生活は楽しいこともある分、見えなかった部分が見えてしまう時もあった。狭い部屋で二段ベッド、マスクは二重でした。当時私はゲームキャプテンで、注意する側は気力もいる。本当に大変でした」
ただこの経験は大島を強くした。「帰りたい」から「自分がちゃんとしなきゃ」に。全国を諦めた先輩の姿、ぶつかり合いながらも共に成長を遂げてきた仲間の存在がよりサッカーへとベクトルを向けてくれた。
さらに高校2年生で出会ったコーチの存在も大島を変えるきっかけになった。
「サッカーに対する思いがすごく熱い方で、そこでサッカーってなんだろうと真剣に向き合うきっかけになった。衝撃を受けて、180度サッカーの価値観が変わりました」
ポゼッションサッカーを志し、イングランド1部マンチェスター・シティの映像も取り入れながら指導してくれた。大島自身、より戦術を理解するようになり、サッカーの“解像度”を高めた。
「次の対戦相手に対しての分析も何週間も前からやって、すごく勉強になりました。一か八かのサッカーじゃなくなった」
後に、プロサッカー選手になる大島の土台は間違いなくこの時期に作られた。人生においてサッカーを背負う覚悟が決まった3年間だった。
















