W杯得点王なのにボランチ転向 キッカケはマンU監督への直談判…勝ち取った“居場所”

ユナイテッドで活躍する宮澤ひなた【写真:REX/アフロ】
ユナイテッドで活躍する宮澤ひなた【写真:REX/アフロ】

「普通のボランチにはなりたくない」唯一無二の存在に

 2023年の女子W杯で5得点を挙げて得点王に輝いたMF宮澤ひなた。なでしこジャパンでは前線での起用が多く、得点力に長けた“アタッカー”のイメージが強いが、所属先のイングランドのマンチェスター・ユナイテッドでは、不動のボランチとしてゲームを支配している。

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スピードと得点力に優れた彼女が、なぜゴールから遠いポジションでプレーするようになったのか。宮澤自身が、マーク・スキナー監督に自ら“直談判”したのだという。

 2023年、マイナビ仙台から移籍してきた当初は前線でボールがもらえず、孤立するシーンも多かった。

「移籍1年目のなかなか試合に出られなかった時期に、監督と話す機会があって。このチームで自分の良さを出すのなら、もう1列下がった6番か8番のポジションが合っているし、力を発揮できると思うと率直に伝えました。そうすれば、もっとうまく味方を使えるし、楽に前にボールを運べるから、と」

この宮澤の転向が中盤を省略するようなロングボールを多用するチームのサッカーを変革させた。 宮澤が中央でボールカットすると、その勢いのままドリブルやパスで流れを作って主導権を握る、タメを作って味方の上がりを待つなど、単調ではなくリズムある攻撃が生まれた。時にはミドルシュートを放って、相手に脅威を与えるなど、チーム状況が好転していった。

 ただ、最初から上手くいったわけではない。「動画を使って、自分はこの選手に対してこういう動きを要求している。このプレーの時に自分はこう考えていたと、最初の年にすごく伝えました。少しずつわかってもらえて、形になっていきました」と、コミュニケーションと信頼構築を積み重ねて、次第に手ごたえを掴んでいった。

 宮澤は「普通のボランチにはなりたくない」という。ただ守備と配球に徹するだけの役割ではない、アタッカーらしさも兼ね備えた唯一無二のボランチ像を作り上げようとしている。9月28日に行われたウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)第4節のリバプール戦では、前半4分にエリア外から左足で強烈なミドルシュートを放ってゴールを決めた。

「ずっと前をやっていた分、どうしても攻撃に行きたい時もあります。ゲームコントロールをするけど、いざという時に勝負を決められるようなボランチでありたいですね」と、W杯の得点王らしく守備と配球に徹するだけの役割では満足しないという意志がうかがえる。

 移籍から3シーズン目の今季を「勝負の年」だと宮澤は厳しい表情で言う。WSLやUEFA女子チャンピオンズリーグなど、今シーズン開幕から全試合フル出場を果たしている。チームの顔となった彼女が見据える先には、名門チームとしてあらゆるタイトルでの優勝が待っている。

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