8試合連続ベンチ入りも「正直分からない」 出場2試合だけ…58歳カズが向き合う「今」

Jリーグ入りへ、鈴鹿に必要な“結果”
JFLアトレチコ鈴鹿のFWカズ(三浦知良、58)が、悔しい敗戦にも前向きな覚悟を口にした。カズは7月20日、東京・味の素フィールド西が丘で行われたリーグ第17節、横河武蔵野FC戦で8試合連続のベンチ入り。出場機会はなく、チームは0-1で敗れた。5試合連続勝利なしで16チーム中10位と苦しむが「あきらめずに、1日1日を大切に」と浮上を目指して言いきった。
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アディショナルタイム5分の失点。ベンチで見届けたカズは冷静に試合を振り返った。「ほとんどチャンスがなかった。中ほどの順位にいる鈴鹿にとっては勝たなけれいけない試合だっただけに残念」。出場できなかった悔しさよりも、下位に低迷するチームに敗れた悔しさを口にした。
6月1日の第10節・FCマルヤス岡崎戦からベンチに座るが、試合出場は同15日のYSCC横浜戦と、7月6日に「プロ40周年記念特別試合」として行われたヴィアティン三重戦だけ。この日もベンチから戦況を見つめ、チームメートを鼓舞し、出場に備えてアップするというルーティンにとどまった。
山本富士雄監督は「ゴールが奪える状況で起用したい」と言い続けている。チームが志向するのは中盤でパスをつなぎ、ポゼッションしながら攻めるスタイル。パス回しでゲームを支配できる展開が、カズ起用のタイミングだという。もっとも、暑さもあってかこの日も大味なゲーム。中盤でパスが回る場面もあったが「起用する展開ではなかった」と話した。
この日の会場「国立西が丘サッカー場」は、Jリーグ発足以前から日本リーグの試合などで使用し、Jリーグ開幕後も東京ヴェルディなどがホームとして使用した場所。カズにとって思い出の競技場の1つだが、2試合連続で出場はなかった。
戦列には戻っているものの、カズ自身のコンディションもまだ万全には遠い。「試合に出ていないので、正直今のコンディションがどの程度か分からない」と本人。「試合に出たら、いいプレーがしたい」とはいうものの、今季に入ってから「好調です」という言葉を口にしたことはない。
それでも、日々の練習はチームメートと同じようにこなし、体のケア、トレーニング、そして休養と、試合に臨むための準備を怠ることはない。リーグ戦は次節以降1か月の中断期間に入るが「最初の1週間休みがあるだけで、練習はずっとある」。記録的な暑さを気にして「僕だけでなく、みんな調整は難しい」と言いながらも「変わらずやるだけ」とも話した。
J3ライセンス取得を申請したチームにとって、大事なのは成績。ライセンスが認められても2位以内に入らなければ、クラブが最大の目標とするJリーグ入りはかなわない。鈴鹿はこの日、勝ち点を積み上げられず20のまま。10位と低迷するが、首位のヴェルスパ大分の32まで4勝差と届かないわけではない。
中断期間は近づくが、まずは目の前の試合。「この1週間いい準備をして、勝って中断を迎えたい」と次節ミネベアミツミFC戦の勝利だけを見据えて話した。遠い未来ではなく、1週間後の試合だけを考える。それを繰り返して40年間プロとしてやってきた強い自負。それが、ブレることはない。
「1試合1試合、大切に戦っていきたい。1日1日を大切に、1日1日の練習を大事にしたい」
現役生活が永遠に続くわけではない。だからこそ「今」を意識する。「諦めず、コツコツやるしかない。がむしゃらに、一生懸命やるしかない」。自らに言い聞かせるように話すと、一息ついて「ただ、それで勝てるわけじゃない。考えながら、頭を使いながら、やることが大事」。再び自分自身に問いかけるように言った。まだ、シーズンは半分と少し。「今」に全力のカズの戦いは続く。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。





















