大学生とJリーガーの“二足の草鞋”「みんな人生かかっている」 名門で残留争い経験「責務がある」

法政大学でプレーする松村晃助【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
法政大学でプレーする松村晃助【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

法政大3年松村晃助、2027年から横浜F・マリノス入りが内定

 法政大学の14番、3年生MF松村晃助。2027年からの横浜F・マリノス入りが内定している彼は、すでに今年は大学サッカーとJリーガーの“二足の草鞋”を履く忙しい日々を過ごしている。

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 関東大学サッカーリーグ2部、前期最終戦。7月13日に第9節の延期分である山梨学院大戦で、チームに合流したばかりの松村は、右サイドハーフの浅野直希が負傷した影響で、2-0の後半36分に急遽ピッチに投入された。

 いきなりの出番だったが、松村は右サイドで起点を作ったり、ハードワークをしてサイドと中央の守備のサポートをしたり、豊富な運動量を見せた。アタッキングサードではカットインしながらスルーパスやワンタッチパスを供給したり、縦突破からのクロスを上げたりするなど、フィニッシュにも関わった。

 試合は法政大が2-1の勝利を収めて前期を8勝1敗2分の単独首位でターンに成功をした。

「リーグ開幕時はマリノスに帯同をしていて、数試合はいなかったのですが、チームメイトがしっかりと戦ってくれて、合流した時は無敗で首位争いをしていた。それが6月も含めて2度あった。常にその流れに乗り遅れないようにやれることをしっかりとやって、前期を首位で折り返せたのはすごく大きなことだと思います」

 松村は2月のJ1開幕戦でいきなりベンチ入り。そこから大学に戻ったが、4月には横浜FMに参加して、J1の全6試合にベンチ入り。第9節の東京ヴェルディ戦では残り5分でリーグデビューを飾った。

 5月に法政大に戻り、3日の関東2部・第5節の早稲田大との無敗同士の首位決戦にスタメン出場。これが今季の大学リーグ初出場となった。そこから6月15日まで大学でプレーをしたが、6月25日のJ1第15節・FC東京戦にベンチ入りし、残り10分で途中出場、そこから7月5日のJ1第23節の横浜FC戦まで3試合連続途中出場を経験した。

 まさに往復生活。プレー強度や出場時間、そして移動と言ったフィジカル的なコンディションの維持や、大学とプロの違い、さらには首位を走る法政大と、最下位に沈む横浜FMというチーム状況の差など、松村が感じる重圧や環境の変化などの負荷は相当なものがあるのは間違いなかった。

横浜FMで経験したプロの重み「みんな人生がかかっている」

 特に横浜FMでは残留争いの渦中で、松村がベンチ入りをした試合は直近の横浜ダービーに勝利した以外は、5敗4分。苦しむチームを目の当たりにして感じたことはたくさんあった。

「一言で言えば、みんな人生がかかっていますし、今まで自分が経験してきたものとはちょっとものが違う。みんなそれぞれ家族とかいる中で、しっかりと『仕事』としてサッカーをやっている。自分はそこに今から入っていく身ではあるのですが、同じチームに合流し、ピッチに立たせてもらっている以上、僕は内定者ではなく、闘う者の1人。だからこそ軽いプレーはできない。まず僕自身がやれること、ハードワークをすることや走ることは、むしろ自分が一番泥臭くやらないといけないと思ってやっています」

 内定者といえど、合流をしたら言い訳無用の当事者である。少しでも甘さや緩さを出したら「何をしにきたの?」と言われてしまう世界。

 逆を言えば、プロから大学に戻った時も同様で、緩いプレーや幼いプレーをしてしまえば、「何をプロで学んできたの?」「本当に内定選手?」と言われてしまう。

 プロではチームのためにガムシャラに、大学ではチームを牽引するプレーを。求められることが異なる中で、どちらでもプレッシャーを跳ね除けながら、すぐに順応して力を発揮しないといけない。これは想像以上に難しいタスクではあるが、これを経験できる人間は限られている。

「サッカー選手としてすごく楽しいですけど、苦しさ、難しさなど厳しさの部分もものすごく感じています。でも、この環境自体に本当に感謝をしないといけないと思っています」

 葛藤と感謝、そして熱い思いを抱えて前に進み続ける松村。最後に横浜FMプライマリー、ジュニアユース、ユースとサッカー人生のほとんどをアカデミーで過ごし、プロへの第一歩を踏み出しているクラブに対する思いを聞くと、真っ直ぐな視線でこう口にした。

「マリノスは絶対にJ2に落ちてはいけないクラブ。そこは自分が2年後内定しているからとかそういうことではなく、今いるチームの一員として必ず残留しないといけないという責務があると思っています」

 本気で二足の草鞋を履きこなし、どちらでも結果を残す。「マリノスでも法政でも日々の練習から真剣に戦っていかないといけないと思います」と確固たる意志と共に、松村は力強くその足を前に踏み出している。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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