のちの日本代表に衝撃「なんなんだ、この人?」 複数Jクラブが獲得に関心…憧れが生んだ逸材

法政大4年DF薬師田澪、幼少期に見た植田直通の特大インパクト
関東大学サッカーリーグ2部で前期を首位で折り返した法政大学。清水エスパルス内定のMF大畑凛生とDF日髙華杜、FC東京入りが決まっているFW小湊絆、そして横浜F・マリノス内定のMF松村晃助と、Jリーグ内定選手を複数擁するタレント揃いのチームにおいて、ひときわ存在感を放っているのが4年生センターバック(CB)の薬師田澪だ。
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183センチの体格と屈強なフィジカルを兼ね備える薬師田は、大津高校時代にCBとボランチを兼任。法政大進学後はCBを主戦場としつつ、サイドバック(SB)もこなす守備のユーティリティとしてチームを支えている。キャプテン・日髙が負傷などで離脱する期間は、副キャプテンとしてキャプテンマークを託され、ゲームキャプテンとしてチームを牽引。その献身と安定感は、前期首位ターンの原動力の1つとなった。
「声と毅然とした態度でチームを盛り上げて、士気を上げて行く。プレーでは失点を許さない守備と、ビルドアップやカウンターの起点を作ってチームの武器である攻撃力を引き出して行くことを意識しています」
そう語る彼は、明瞭な口調と高いコミュニケーション能力を持ち、ピッチ内での発信力も抜群だ。
そんな彼の原点は、幼少期に見たある試合にある。2009年、まだ5歳だった薬師田は、父親に連れられて中体連の熊本県決勝を観戦。宇土市立住吉中のCBとして出場していたのが、現在、鹿島アントラーズで活躍する日本代表DF植田直通だった。薬師田の姉が植田の幼なじみという縁もあり観戦したその試合で、後半までCBとして堅守を見せ、終盤にはFWに上がって2点に絡んだ植田の姿に心を奪われた。
「幼心に『なんなんだ、この人?』と衝撃を受けたんです。そこから植田さんが大津高に進んだと聞いて、ずっと選手権はテレビで応援していました。そこから『この人のようになりたい。大津に行こう』と決意したんです」
地元・小川中では2年時に全国中学校サッカー大会に出場。ロングキックを武器にした屈強なCBとして知られ、時には右SBとして爆発的なスピードも発揮。その実力を買われ、宣言通り大津高校に進学を果たした。
高校3年時に花開いた攻撃センス、Jクラブの練習に参加予定
大津高校では、すでに日本代表として名を馳せていた偉大な先輩・植田直通の背中を追いながら、薬師田も日々鍛錬を重ねた。グラウンド脇に吊るされたボールに向かって必死にジャンプを繰り返し、守備力を地道に磨いていったという。
高校3年時には、平岡和徳・現大津高校テクニカルアドバイザーから「ボランチをやってみろ」と声をかけられ、センターバックからのコンバートを経験。すると、眠っていた攻撃的センスが一気に花開いた。恵まれた身体能力とスプリント力、さらに正確かつ強烈なキックを武器に、チームを支える大型ボランチとして存在感を高めていった。
大学では再びCBに戻り、守備力をベースにしつつ、植田のように攻撃力も兼ね備えたスタイルで進化を続けている。
「個人的には、今もボランチが自分の適正ポジションだと思っているのですが、法政大でもJクラブの練習に参加しても、CBとしての役割を求められることが多い。これはこれで本当にありがたいことで、CBでは守備面はもちろんのこと、ボランチとして得意としている『運ぶドリブル』をより磨くことができる。ボランチの時はつなぐドリブルがメインでしたが、CBだと相手FWのベクトルを折ってから、後方から仕掛けて行くドリブルができる。相手のプレスの連動性、狙い、角度などを見ながら、ボランチとの関係性やトップ下やサイドの動きを視野に入れて仕掛ける。視野が広がったし、見るポイント、予測の質なども磨けるので、CBは僕にとって成長するための重要なポジションです」
すでに複数のJクラブが獲得に向けて動いており、今後、練習参加予定のクラブも控えているという。
守備の柱であるCBとして成長を遂げるのか、あるいはボランチやSBとして輝きを放つのか。多彩な可能性を秘めた薬師田澪が、この先どんな形で羽ばたいていくのか。その進路から目が離せない。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















