ジャーメインだけじゃない…E-1で評価急上昇の5人 欧州組にも負けない“遅咲きの大器”

E-1で評価を上げた日本代表5選手は?【写真:徳原隆元】
E-1で評価を上げた日本代表5選手は?【写真:徳原隆元】

E-1選手権で優勝を果たした”森保ジャパン”、フルメンバー入りにアピールした選手たち

 森保一監督が率いる日本代表は7月15日、EAFF E-1選手権の3試合目で韓国と対戦し、序盤に挙げたゴールを最後まで守り切って1-0で勝利した。3戦全勝で2022年大会に続く連覇を飾った。短い準備期間でもチームが一丸になって掴んだ結果と言えるが、北中米W杯の開幕まで1年を切った段階で、国内組の選手たちがフルメンバーに食い込むためのアピールのチャンスでもあった。

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 今大会で最もアピールに成功したのはジェーメイン良(サンフレッチェ広島)だ。香港戦では前半だけで4得点を記録。後半から投入された中国戦は得点できなかったが、韓国戦で相馬勇紀(FC町田ゼルビア)からのクロスを見事な動きだしと左足のボレーで仕留め、5得点目となる決勝ゴールを挙げた。

 昨シーズンはジュビロ磐田で19得点を記録し、広島に移籍したが、新天地ではここまでPK3つを含む4得点と苦しんでおり、きっかけを掴むことを願って臨んだ大会だった。1トップを担った“相棒”のFW垣田裕暉(柏レイソル)など、周りの選手たちに助けられたことを強調しながらも、ジャーメインは「フィニッシュの感覚とかポジショニングは去年の得点に似たような形が多かったと思うので、そこはもう一度思い出したというか。そういう感覚は一つ持ち帰れる」と語るように、結果以上の収穫があった。

「これを広島でできないと意味ないと思うので、本当に結果により一層こだわっていきたいし、見る目は期待というか、厳しいものにさらになると思いますけど、それに応えられるようになりたい」とジャーメイン。今回のパフォーマンスは間違いなく森保監督にもインプットされたはずだが、上田綺世(フェイエノールト)、小川航基(NECナイメヘン)、町野修斗(ホルシュタイン・キール)、大橋祐紀(ブラックバーン)といった欧州組の実力者たちに食い込むにはJリーグで結果を積み重ねていくしかない。広島はACLエリートという国際舞台もあるが、ここからどう結果にしていけるか。

 そのジャーメインがあげた5得点中、3つのゴールをアシストしたのが相馬だ。さらに香港戦では左から右サイドの久保藤次郎に効果的なサイドチェンジのボールを送るなど、2022年のE-1選手権でMVPを獲得した実力を改めて証明した。しかも、今回は香港戦と韓国戦でゲームキャプテンも任されており、チームキャプテンの長友佑都(FC東京)や稲垣祥(名古屋グランパス)とともに、リーダーシップの面でも優勝を支えた。

 前回大会の活躍を転機に、カタールW杯では最終メンバーに滑り込んだ。だが大舞台では持ち味を発揮できず、「そこの悔しさというのはずっとある」と振り返る。やり残したことを来年のW杯で晴らすには、三笘薫(ブライトン)ら“欧州組”を中心とするサイドアタッカーのハイレベルな競争に打ち勝っていく必要がある。ここまでJリーグでは7得点6アシストと順調に数字を伸ばしており、ジャーメインと同じくACLエリートの舞台も待っているだけに、さらなる活躍が注目される。

守備陣からは安藤智哉を選出

 垣田は今大会の得点こそ無かったが、戦術的な役割という意味ではジャーメインにも負けないインパクトを残した一人と言える。ジャーメインの5得点も、その全てで垣田のゴール前の走りがプラスに働いていた。柏ではリカルド・ロドリゲス監督のスタイルを前線から牽引する存在であり、5得点4アシストという結果はもちろん、前からの守備と幅広いポストプレーで、流動的な攻撃を実現している。そのクオリティは上田や町野にも引けを取らない。フィニッシュでアピールできたら理想的だったが、森保監督の評価は着実に上がったはず。柏が優勝戦戦に残っていくための活躍が、代表アピールにもつながるだろう。

 アタッカーでもう一人あげたいのが、最年少の18歳・佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)だ。6月シリーズで初招集された佐藤はインドネシア戦で、右ウイングバックとして起用された。しかし、今回は3試合ともシャドーのポジションで出番を得ており、香港戦はアシストも記録している。韓国戦は序盤のリードから相手に押し込まれる状況で、後半20分に投入されると、うまくライン間で縦パスを引き出しながら、日本の陣地回復に大きく貢献した。2006年生まれで、9月にチリで開催されるU-20W杯で中心的な活躍も期待されるが、このまま飛び級でA代表に定着していく期待もある。

 ディフェンシブなポジションで高いポテンシャルを示したのは安藤智哉(アビスパ福岡)だ。190cmという恵まれたサイズを生かしたディフェンスと大胆な攻め上がりなど、存在感は抜群だった。その一方で、韓国戦ではナ・サンホにカットインからポスト直撃のシュートを打たれるなど、局面の対応で相手に隙を与えてしまうシーンもあり、そこは安藤も「ああいったところは自分としても、この試合に限らず課題だと思います」と反省を口にした。

 E-1選手権の代表活動を通じて感じた課題に関して安藤は「また福岡に帰って、そう言ったところを修正かけて、もっと個人としてもレベルアップしていきたい」と語った。ポテンシャルでは“欧州組”がベースとなっているフルメンバーのセンターバック陣に勝るとも劣らないものがある。空中戦の強さもさることながら、前からボールを奪い行く守備は安藤のスペシャリティだ。そうした良さを伸ばしながら、相手に一瞬の隙も与えない守備の安定感を高めていけるかどうか。26歳と若くはないが、J3から叩き上げで成長してきた“遅咲きの大器”に期待したい。

 そのほか、中国戦で代表デビューとは信じ難いパフォーマンスでクリーンシートを支えたGK早川友基(鹿島アントラーズ)、荒削りながら試合を追うごとに成長を見せて、韓国に立ちはだかった望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、A代表デビューの中国戦でフル出場し、韓国戦では試合をクローズする要として、ピッチ上で試合終了の笛を聴いた宇野禅斗(清水エスパルス)なども印象的なプレーを見せていた。ここからJリーグでさらなる飛躍を見せていくことで、道を切り開いていけるか注目していきたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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