参加するだけで13億円獲得…大会規模が100倍アップ 浦和が挑むクラブW杯の新たな価値

浦和は大会参加だけで約13億7000万円を受け取る
FIFAクラブワールドカップ(FCWC)は1960年にスタートした前身のインターコンチネンタルカップから引き継がれる形で、2000年のクラブ世界選手権を経て、2005年からは現在の名称で原則1年に1回行われてきた。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
第21回目となる2025年からはフォーマットが大きく変更されることになった。FIFAのジョヴァンニ・インファンティーノ会長は2016年に、なかなか注目度や熱量が上がらなかった大会をより魅力的なコンテンツにするため、代表のW杯と同じく4年ごと、参加を32チームに拡大することを提案。まずは24チームに増やすなど、段階的に拡大整備していく方向で動いていたが、新型コロナウイルスのパンデミックもあり、2025年から正式に新フォーマットがスタートすることになった。
大会方式は現行のW杯と同じで、32チームを8つのグループに分けて、各グループの上位2チームがノックアウトステージに勝ち上がり、ラウンド16から準々決勝、準決勝、決勝と戦っていくことになる。代表との違いとして3位決定戦は行われない。
大会規模が大きくなることに伴い、賞金も大きくアップした。賞金総額は2022年大会の1000万ドル(約14億)から、何と100倍の10億ドル(約1437億円)。参加賞金はFIFAが定める“スポーツと商業に基づくランキング”に応じて、欧州は1281万~3819万ドル、南米が1521万ドル、北中米カリブ海、アジア、アフリカが955万ドル、アオセアニアが358万ドルとなる。つまりアジア勢の1つとして出場する浦和レッズも、大会参加だけで955万ドル(13億7000万円)を受け取ることになる。
グループステージでは1勝ごとに200万ドル、引き分けで100万ドルを手にすることができる。つまり1勝するだけで、Jリーグの優勝賞金と同額が入るということだ。さらにベスト16まで勝ち上がれば750万ドル、ベスト8で1312万5000ドル、ベスト4で2100万ドル、決勝で3000万ドル、優勝すると4000万ドルを獲得することができる。グループステージ3試合すべてに勝利して優勝した場合、計1億1762万5000ドル(約169億円)を参加賞金とは別に得ることができる。
賞金だけでなく、格段にアップした大会価値
そうした賞金の魅力もさることながら、世界的なブランディングを考えても、このFCWCに参加すること、そして勝ち上がっていくことの価値は大きい。またこれまでの大会と異なり、欧州勢だけで12チームが参加することも、これまでとは大会価値と注目度が大きく違う。
2020-21シーズンから4大会のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)王者(2021-22優勝のチェルシー、2021-22、2023-24優勝のレアル・マドリー、2022-23優勝のマンチェスター・シティ)とUEFAクラブランキング上位のチームで構成されるが、今季の欧州王者であるパリ・サンジェルマンもUEFAクラブランキングで出場権を得ている。欧州勢が上位を独占するのか、それともコパ・リベルタドーレス2024優勝のボタフォゴなど南米勢、はたまた浦和やサウジアラビアの強豪アル・ヒラル、アフリカ最強クラブの呼び声高いエジプトのアル・アハリなど、伏兵の躍進があるのか。
これまでと異なるのは開催期間が約1か月間あるので、チームがこの大会に集中しやすいことだ。これまでFCWCは年末に1週間ほどの期間で行われており、その中でも欧州王者はリーグ戦とリーグ戦の合間で、直前に現地入りして準決勝、決勝と戦ってすぐ帰るという慌ただしい日程だった。このFCWCは欧州のシーズン終了からオフを挟んで、直前合宿から大会に入る流れになる。コンディションという基準ではもしかしたら、シーズン半ばだった前回までより、やや落ちたところから入るかもしれないが、決勝まで7試合を戦うことになるので、欧州勢は試合を重ねながらチームを上げていくような形になるだろう。
Jリーグも来年の夏からはシーズン移行により、リーグ戦が8月に開幕、5月に閉幕するスケジュールで組まれることになる。2029年の次回大会に参加するチームは現在の欧州勢と似たような流れになるが、今回の浦和はシーズン半ばでFCWCに臨む。6月1日に国内最後のリーグ戦で横浜FCに2-1の勝利を飾った浦和は、オフを挟んで国内練習を行い、アメリカに渡って最終調整に入る。アルゼンチンの名門リーベルプレートが初戦の相手となるが、良好なコンディションで、十分な調整をして大会に入れることはアドバンテージだろう。
そこからCL直近3シーズンのうち2シーズンでファイナリストとなったインテル・ミラノ、さらにメキシコの強豪モンテレイと対戦する。浦和がリーベルプレート、インテル・ミラノと対戦するシアトルのルーメン・フィールドは来年の北中米W杯でも会場として使用される。3試合目のモンテレイ戦を行うローズボウルはNFLのスーパーボウルなどで有名なアメリカン・フットボールの“聖地”だが、グループステージのみの使用となる。現地に大挙して詰めかける浦和サポーターの熱い応援を背に、マチェイ・スコルジャ監督が1つ1つの試合で、選手たちが持っているベストを引き出すことができれば、十分に勝機はあるだろう。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。