キャリア最悪級の惨敗「久保建英のせいではない」 まさかの45分交代…現地記者の目に映った「それでも」

アトレティコ戦で先発の久保、前半4失点でハーフタイムに交代
久保建英にとって今回のアトレティコ・マドリード戦はおそらく、スペインでのキャリアで最悪の試合だったかもしれない。
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6季連続の欧州カップ戦出場権獲得を目指すレアル・ソシエダは、アウェーで行われたラ・リーガ第35節で、クラブワールドカップに向けた調整を続ける3位のアトレティコと対戦。しかし、ホームでわずか1敗の堅守を誇る強豪相手に対して立ち上がりから集中力を欠き、開始30分までに2季前までソシエダ所属のアレクサンデル・セルロートに圧巻の4ゴールを決められると、最後まで点を奪えず0-4の大敗を喫した。これで5試合連続勝利なく12位に後退し、欧州カップ戦を狙える順位からはさらに遠ざかることとなった。
5試合連続でスタメン入りした久保建英はいつも通り4-3-3の右ウイングでプレーするも、守備時に5バックとなる相手の厳しいマークに苦戦。そんな状況下でもボールを持った時は果敢なドリブルでチャンスメイクを試み、前半終了間際にはマルティン・スビメンディの決定機を演出し、守備では身体を張ってボールをカットするシーンもあった。チーム唯一の希望となった久保だったが、ミケル・オヤルサバルとともにハーフタイムで交代。これはおそらく勝機なしと考えたイマノル・アルグアシル監督が、3日後に控えた次節セルタ戦を見越しての判断だと考えられる。
惨敗を喫したソシエダに対するスペイン各紙の評価は辛辣なものとなった。久保の採点も低かったが、チーム全体が非常に悪い中においては最も高く評価された選手となった。
地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、試合翌日の一面に「サイクルの終わり」と辛口の見出しを付けた。チームMVPに久保を挙げ、「酷い状況の中で自尊心を示した唯一の選手。ボールを持ってトライし、サムエウ・リーノ相手の守備でのデュエルで力を発揮し、何度かゴールラインにまで辿り着いた。ラ・リーガでゼロアシストが続くが、それは彼のようなクラックにとって受け入れられない数字だ。また、スビメンディに良いクロスを入れていた」と寸評し、チームトップタイの2点(最高5点)と評価。久保と同じ点数がつけられたのは、途中出場のイゴール・スベルディアとアルカイス・マリエスクレナだけだった。

まさかの大敗…「久保のせいではないと思う」
地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、一面の見出しに「セルロートがラ・レアルを破壊」と付け、チームMVPに久保を選出。「決して隠れることなく常に努力した唯一の選手。アトレティコに非常に上手く抑えられたが、スビメンディに良いクロスを上げ、ハーフタイムに交代した」と評し、1点(最高10点)と低く採点した。しかし、これはアレックス・レミーロとマリエスクレナと並ぶチームトップの点数である。
全国紙「マルカ」は久保だけを高評価し、チーム唯一となる2点(最高3点)と採点。「AS」はチームトップタイの1点(最高3点)と評価した一方、セルロートには滅多に見ない、本来の最高点を上回る4点をつけ大絶賛した。
スペインの大手メディアグループ「メディアセット(テレビ局クアトロやテレシンコなどを所有)」でアトレティコ・マドリードを担当し、この試合を取材したアントニオ・ファブラ・カランサ記者に、この日の久保のパフォーマンスについて話を伺った。
「久保は今日、流れ的にかなり目立たない試合となったし、彼にとってもチームにとっても非常に悪いものだった。わずか10分間で3失点、30分間で4失点というのは、そうそうあることではないからね。でも今日の大敗は久保のせいではないと思う。ハードマークに遭い、あまり楽な状態でボールに触れられなかったとはいえ、ボールを持った時はいいプレーを見せていたし、チャンスにつながるクロスも上げていた。今日のラ・レアルはアトレティコと渡り合えるだけのレベルに達していなかったことで、大敗という高い代償を払うことになった」

久保の成長は「少し止まってしまったように見える。それでも…」
さらに今シーズンの久保のパフォーマンスについては、チームの悪影響を受けたことにより例年に比べて調子を崩していると感じていた。
「久保はラ・レアル加入後の2年間、良いシーズンを送ってきたが、今シーズンはチームの不振が重なってしまったようだ。つまり、チーム全般のパフォーマンス低下によって、彼の成長は少し止まってしまったように見える。それでも彼はラ・レアルの構想の中で重要な選手だったし、間違いなくラ・レアルのベストプレーヤーの1人だ」
久保のスペイン6年目もあと3試合。残るはセルタ、ジローナ、レアル・マドリードとの対戦だ。UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場圏内の7位セルタとの勝ち点差は6、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)圏内の8位ラージョ・バジェカーノとの勝ち点差は4。厳しい状況に追い込まれているとはいえ、有終の美を飾れる可能性はまだ残されている。
(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。