好調ゆえの“ジレンマ”「私の仕事」 ホームで連勝ストップの浦和…再加速へ鍵を握る2人

連勝中だった浦和はスタメンが“固定”されていた
浦和レッズはホーム5連戦を終えた。その前にあった国立のアウェー町田戦から数えて、5連勝で迎えた5月6日のガンバ大阪戦だったが、西川周作のアクシデントによるGK交代もあった中で、0-1と完封負け。マチェイ・スコルジャ監督も「ホーム5連戦を5連勝で終わらせたいと思っていましたので、我々にとっては辛い結果となってしまいました」と落胆を表した。
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それでもスコルジャ監督は「選手は常にハードワークする姿を見せてくれています。本日の敗戦をバネとして使い、さらに上昇していきたい」と語り、アウェー新潟戦から、しっかりとリスタートしていくことを意識しているようだ。このホーム5連戦の間、3試合目の広島戦と4試合目の東京ヴェルディ戦が中7日だったが、それ以外は過密日程が続いていた中で、浦和はほぼ固定したスタメンで戦ってきた。
GK西川周作、ディフェンスラインの石原広教、ダニーロ・ボザ、マリウス・ホイブラーテン、長沼洋一、ボランチの安居海渡、2列目の金子拓郎、渡邊凌磨、マテウス・サヴィオ、1トップの松尾佑介の10人が完全固定で、もう一人のボランチはサミュエル・グスタフソンが3試合、松本泰志が東京V戦とG大阪戦の2試合となっているが、グスタフソンのコンディション不良によるものだ。
勝っているチームは変えないというのが、サッカーの普遍的なセオリーではあるが、いわゆる最適解のようなものを固定していくと、それが戦術的に行き詰まった時や主力のコンディションが落ちてきた時に、チームが難しい状況に陥りやすい。6月1日に行われるホームの横浜FC戦で代表ウィークに入り、そのままクラブワールドカップに向けた準備に移行するが、そこまで3週間で6試合を戦うことを見据えると、固定的な選手起用を続けることは難しい。少なくともGKはG大阪戦で途中出場した牲川歩見がゴールマウスを守ることになりそうだが、注目は残る10人のところで入れ替わりがあるかどうか。
この間、途中出場が続いていたキャプテンの関根貴大は連勝中の起用法に理解を示しながら「これだけいいサッカーをしていたところで判断するというのは難しいのも分かるので。連戦で次どうなるか分からないし、(スコルジャ監督が)どう決断するか分からないけど、出た選手がやるだけだと思っている」と語る。ただ、その関根も含めて途中から出た選手たちが、ギアを上げきれなかったことがガンバ戦の敗因の一つでもあったことを考えると、シンプルにスタメンを入れ替えることが解決になるとは言い難い。
クラブワールドカップ前までのリーグ戦を一つの節目と認識するスコルジャ監督も東京V戦を前にした記者会見で、5月の過密日程を戦うにあたって「ローテーションは私の仕事の重要な部分になっていきます。スタッフ全体でデータもしっかりと分析しながら、それを行いたい」と語っていたが、ヴェルディ戦から中2日のG大阪戦というのはスタメンの一部変更もプランにあったと見られる中で、結局は全く同じスタメンだった。
ただ、ガンバ戦に敗れたのは選手のコンディションだけでなく、スコルジャ監督が認めるように、しっかりと浦和対策をされて、これまでより攻撃面でうまく機能しなかったことが大きい。具体的に言えば、コンパクトなミドルブロックに対してその背後を使った攻撃も、突破もうまくできなかった。終盤には4-2-3-1から4-4-2にして攻め込んだが、突き崩せないまま90分が終わってしまった。
後半の早い時間の失点に関しては、左右にボールを振られた時の対応に問題が生じた形だが、5連勝中は全て先制点を挙げており、しかも広島戦を除く全ての試合で、前半のうちに得点を奪うという理想的な流れだった。相手の守備的な対策も含めて、そうしたプランが崩れたときに、どう打開するかという課題が突き付けられる6試合ぶりの敗戦となったが、ここから中4日でアウェーの新潟戦、そこから中5日のホームFC東京戦を挟んで中3日、中2日、中3日、中3日と過密日程になっていくにあたり、スタメンの入れ替え、プランの見直しも必要だろう。
鍵を握るのは組み立て能力に優れるグスタフソンと力強いフィニッシュを武器とするチアゴ・サンタナの2人だ。東京V戦を前に、スコルジャ監督は「グスタフソンとチアゴに関しては、より近い復帰が見込まれています」と語っていたが、東京V戦に引き続き、G大阪戦でも2人のベンチ入りはなかった。もし新潟戦までに2人のコンディションが戻っていれば、彼らが入るだけでも戦術的な効果は違ってくる。
グスタフソンが中盤にいることで、相手のプレッシャーをうまくいなして前にボールを付けて行けるので、ガンバのようなミドルブロックを組まれても、中央に崩しの移転を作りやすい。サンタナは松尾のような幅広く裏を狙うタイプではないが、ゴール前で攻撃に深みを出すことができる。ただ、サンタナは町田戦を前にコンディションを崩した影響で、欠場してから長い時間が経過しており、その間に1トップでスタメン起用された松尾が3得点をあげるなどブレイク。しばらくベンチ外だった髙橋俊樹のアピールもあり、チーム内での立ち位置が読みにくくなっていることも事実だ。
6月になれば浦和のクラブワールドカップ出場に伴う追加登録期間(6月1日-10日)で、新たな選手を補強することも可能となる。現在のメンバーにとってはある種、5月の残りから6月1日までの期間は“サバイバル”のためのアピール期間とも言える。選手のポテンシャルはさておき、少なくともスコルジャ監督の基準において、これまでスタメンで出ていた選手とサブの選手に、評価と信頼の開きが出ていると考えられる中で、ここからどういう起用プランを練っていくのか。過密日程になるほど、練習に時間を割けなくなることも想定しながら、次の新潟戦から改めて起用法に注目していきたい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。