大卒ルーキーが乗り越えた”トラウマ” 英注目の過去…勝負を決めた一振りも「次が保証されているわけではない」

東京ヴェルディが横浜FCに勝利した【写真:徳原隆元】
東京ヴェルディが横浜FCに勝利した【写真:徳原隆元】

大卒1年目の熊取谷一星が試合を決めた

 東京ヴェルディは5月6日のJ1リーグ第15節で横浜FCと対戦して2-0で勝利した。前半36分にFW染野唯月のゴールで先制した東京Vだったが、追加点が挙げられないまま試合終盤を迎え、あわや同点ゴールという場面をつくられていた。そうしたなかで後半AT1分、明治大卒のルーキーであるMF熊取谷一星が、左足のシュートで勝負を決めた。

 右サイドでMF森田晃樹からパスを受けた熊取谷は、ダブルタッチで相手をかわすと左足を振り抜く。ボールはDFに当たりながらもゴール左隅に決まり、勝利を決定的にする2点目が入った。

 このシーンを振り返った熊取谷は、「森田選手からいいボールが入ったので、ファーストタッチで相手の逆をとることを考えて、うまくファーストタッチ、セカンドタッチができたので、いいコースを狙えたと思います。あの角度でいうと右足より左足のほうが力が抜けて良い感じで(ゴールに)行くので、左足のほうが入るかなと思います」と喜んだが、このゴールまでの道のりは楽なものではなかった。

 試合後の会見で城福浩監督は、「このところ、ずっと(ベンチ入り)メンバーにも入れなかった熊取谷一星が(2点目を)取れたことは、非常にこのクラブにとって大きなことだと思います」と強調したが、熊取谷がベンチ入りしたのは、実に2か月ぶりだった。

 複数のJクラブからオファーを受けたなかで、今シーズン東京V入りした熊取谷は、開幕戦からベンチ入りを果たすと、第2節の鹿島アントラーズ戦で初先発する。しかし、チームが0-4の大敗を喫した一戦で、熊取谷自身も前半のみで交代に。さらに第4節のガンバ大阪戦ではMF福田湧矢に脳震盪のアクシデントが起き、異例の形で後半39分からピッチに立った。ところが、ここでもその直後に決勝点を決められてしまう。熊取谷がリーグ戦でベンチ入りを果たしたのは、この試合以来だった。

 大学時代には英国のメディアから「次のリバプールのターゲット」などと注目もされた逸材だったが、プロで洗礼を受けた。「鹿島戦に出て、ガンバ戦でああいう形で失点して、自分のなかでトラウマみたいなものがあったのは間違いない」と明かす。

「ガンバ戦は自分が入った直後、しかも自分のところで失点したので『またそうなるんじゃないか』と思うこともありました。そういうなかでも、なんとか学んで強気にエネルギーを出していくことが、ああいうことを繰り返さないことにつながると思って信じて今日はやれたので、そこは1つ収穫かなと思います」と、ピッチで結果を出せたことが、次につながると前を向いた。

 ピッチに送られる際には、「まず戦うところ。守備のところをやること」を求められた。そのなかでも、自分の持ち味を出すことは意識していたと言う。「守備は絶対。でも自分の武器を忘れてはいけないという話を、ちょうど今週の練習から森下(仁志)コーチにされていた」と、コーチに感謝した。

そして、「ガンバ戦以来のベンチ入りで、それから長かったですけど、一日一日色々な思いをしながら積み上げてこれた。それが今日の結果だと思います。ただ今日、結果を出したからと言って、次が保証されているわけではないので、引き続きやっていきたい」。トラウマになるような思いを乗り越えた期待のルーキーが、J1の舞台で大きな一歩を踏み出した。

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