日本代表の強化には「アジア全体が上がらないと」 中国で11年…元Jリーガーの挑戦【インタビュー】

中国で指導者として活動する楽山孝志氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
中国で指導者として活動する楽山孝志氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

中国で指導者を務める楽山孝志氏「ポテンシャル高い選手がゴロゴロいます」

 ジェフユナイテッド千葉、サンフレッチェ広島でプレーし、引退後は中国で指導者としてセカンドキャリアを歩んでいる日本人がいる。静岡県御殿場市で3月27日から5日間、ジュニア年代の国際大会「コパ・トレーロス2025」が開催。この大会に中国チームを率いて参戦したのが楽山孝志氏だ。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全2回の2回目)

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 清水商業を経て千葉、広島でプレーし、その後はロシア2部のFCヒムキ、中国1部の深圳紅鑽と渡り歩いた楽山氏。2013年限りで現役引退後は、日本に戻らずに中国で育成年代の指導に携わる。今年で11年目を迎えたが、「コパ・トレーロス2025」には監督を務めるTCF楽山サッカークラブを率いて参加した。

 日本の育成年代とのコネクションはほとんどなかった楽山氏だったが、選手たちに国際大会を経験させたいと感じるように。共通の知人を通じてファンルーツの平野淳代表と知り合い、2019年にコパ・トレーロス初参加。今大会では東京ヴェルディと0-0のドロー、浦和レッズを3-2で破るなど力をつけてきた。

「最初、2019年に来たときはもう歯も立たなかったですね。もうボコボコにやられました。いい意味で実力というのがすごく拮抗してきているのは感じると同時に、やっぱり技術的なところだと日本の選手はうまいですけど、中国には速くて強いポテンシャルの高い選手がもう本当にゴロゴロいますね」

 そんな中国サッカーだが、ワールドカップ出場は2002年の日韓大会が最後と苦しんでいる。日本とは差が開いていく状況になっているが、楽山氏は「日本やJリーグのことをすごく知っていますし、それだけ見ています。そこは本当に純粋にスポーツでいうところのリスペクトはすごくありますね」と明かす。

「日本代表が勝つといつも羨ましいというのはSNS上に流れます。日本は人口1億人くらいで、10何億人の自分たちはどうなっているんだ……と投稿している方がたくさんいて。同じアジアの隣国で成功しているモデルもあるから尚更そう思うのかもしれない。いつも比較して、日本のサッカーに本当に注目しています」

 2023年にはS級(現JFA Pro)ライセンスも取得したが、「夢はですね、僕もう本当にシンプルで、自分の息のかかった選手、育った選手が世界で活躍することが一番嬉しいですよね」と語る。そのために奮闘する毎日だが、それが巡り巡って日本サッカーに貢献できるのではないかと考えている。

「いろんな日本のサッカーへの還元のアプローチがあると思うんですけど、たぶんアジア全体のレベルが上がらないと日本も上がらない。だから、隣国のチームが強くなって拮抗するみたいな。その考えが全て当てはまるとは思わないですけど、それが僕のスタートでもありました」

 そんな楽山氏の指導の原点にあるのは、千葉時代に薫陶を受けたイビチャ・オシム監督の教え。「日本代表が何人もいるクラブではなくても、Jリーグの3位に導いた。そこまでのアプローチや指導方法とか、そういうのを自分が選手として経験させてもらったから、自分もそこを目指したいなと思いますね」と笑顔を見せる。

「トップの監督もしてみたいなと思いましたけど、でも育成は選手たちがスポンジのように何でもすぐ吸収して、成長と変化のスピードが早いのでとてもやりがいがあります。自分の関わった選手が日本である程度プレーできて、大会を通じて我々も指導者として良い経験を得る貴重な機会となりました」

 現役時代には中国1部で日本人選手としても初ゴールを決め、アジアのサッカー史に名前を残した楽山氏。「人がやっていないようなことがやりたくて」と新たなことに挑戦してきた。指導者としても、未知の世界を切り開いていく。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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