カメラ越しでも映える17歳・高校生FW 鹿島へスパイスを…“エース”鈴木優磨を生かす存在へ【コラム】
【カメラマンの目】広島との大一番で17歳FW徳田がゴール
シーズン開幕を前にして鹿島アントラーズの宮崎キャンプを取材した。鹿島はこのキャンプ中に、徳島ヴォルティスを相手に行ったトレーニングマッチ(45分×2、30分×1)で、徳田誉が2本目と3本目にそれぞれゴール決め、合計2得点を挙げていた(結果は3-1で鹿島の勝利)。
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2ゴールを叩き出した徳田に対して、長年に渡って鹿島の強化を担っていた鈴木満氏は「彼(徳田)、いいだろう」と結果を出した新鋭FWに太鼓判を押していた。
このときの徳田には長身の本格派のストライカーという好印象を持ったが、鹿島という集団を構成する選手たちはレベルが高く、注目される存在になるには多くの経験を積む必要があると考えていた。
そして、シーズンに突入し終盤へと向かうJ1リーグ30節、鹿島は首位のサンフレッチェ広島をホームに迎えた。優勝を目指すうえで、是か非でも勝たなければならい試合で、鹿島は前半17分に知念慶の気迫がこもったヘッドが決まり先制する。
しかし鹿島は先制点を挙げたものの、試合全体のペースは広島に握られていた。攻撃の要である鈴木優磨は荒木隼人と中野就斗の激しいマークに遭い決定的な仕事ができない。ゴール裏からカメラのファインダーを通して見た、広島の背番号4と15のDFコンビは合図を出し合い、鈴木のマークの受け渡しを的確に行っていた。
その広島はいつも通り、相手にサッカーをさせまいと鈴木だけでなく、鹿島のボールを持った選手を激しくマークし続けた。彼らは精神面も充実している。納得できない判定や広島のタイトな寄せを受けて苛立ち、感情を露わにする鹿島に対して、アウェーチームの選手たちはどこ吹く風といった様子で挑発に乗らず、強気のプレーを弱めることはなかった。
さらに、広島は鹿島のハードマークを受けても動じず、失点から2分後に今夏に加入したゴンサロ・パシエンシアがヘディングシュートを決めて同点とする。前半36分には川辺駿のスピードある突破からのパスを受けて松本泰志が得点し、逆転に成功。ここから試合はより広島ペースで進んでいく。
チームに備わった洗練さで考えると、広島の方が鹿島より一枚上手であったことは明らかだった。ただ、試合巧者が勝つとは限らないのがサッカーだ。残り8分となって、後半29分に投入されていた鹿島の若き17歳FW徳田がゴールを決め2-2とし、チームを敗戦から救った。
この試合では奮わなかったが、鹿島の攻撃のキーマンは紛れもなく鈴木だ。今シーズンの鈴木は前線のより広い範囲でプレーし、ゴールからチャンスメイクと攻撃の全般を担っている。
しかし、背番号40の精力的な動きが鹿島の攻撃を牽引している一方で、チームの限界も表している。鈴木に多くを依存する状況は広島戦で露呈したように、彼が厳しいマークを受けると、攻撃が停滞してしまうことになる。
また、鈴木本人も攻撃の全般に関わりたいという思いが強いようで、チャンスメイクのためトップポジションから下がってプレーすることも少なくない。そのことによって、最前線でターゲットマンとなる選手が不在となり、攻撃がぼやけてしまうこともある。
鹿島はここにきて手詰まり感…徳田の起用法がカギになるか
今シーズンの鹿島には近年の及第点に届いているものの、どうにもトップへと突き抜けられない閉塞感から脱し、高みを目指せる雰囲気が備わりつつあるように感じていた。
だが、ほかのリーグ上位に位置するチームを見れば、試合を重ねることによってウイークポイントを改善し、スタイルにより磨きがかかり完成度を高めている。そうしたリーグの主役たちと比較して、鹿島はここにきて手詰まり感が見え隠れしているのが現実だ。優勝戦線を勝ち抜くために、勢いがつくアクションを起こしたいところだ。
そこで徳田を最前線のポジションに先発で起用し、鈴木がやや後方に下がった縦の関係の2トップで臨んでみるというのも1つの手だと思う。この形だと徳田が前線でのターゲットマンになり、鈴木もチャンスメイクに注力できる。
指揮官にとっては、17歳の徳田を先発させるのは冒険的な決断になるだろうが、パンチ力を感じさせる選手起用を試してみる価値は十分にあると思うのだが……。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。