すべてが違ったイタリアでの苦労談 鎌田大地が明かす、選手も驚く「アンリアル」な出来事

鎌田大地がラツィオでの苦労談を明かした【写真:高橋 学】
鎌田大地がラツィオでの苦労談を明かした【写真:高橋 学】

鎌田大地が「内田篤人のFOOTBALL TIME」で激白

 2023-24シーズン限りでイタリア1部セリエAのラツィオを退団した日本代表MF鎌田大地が、スポーツチャンネル「DAZN」の「内田篤人のFOOTBALL TIME」にゲスト出演。イタリアで過ごしたシーズンを振り返った。

 2022-23シーズン限りでドイツ1部ブンデスリーガのフランクフルトを退団した鎌田は、移籍金ゼロでラツィオに加入した。当初、セルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチの後釜として大きな期待を抱かれていた鎌田だったが、マウリツィオ・サッリ監督に冷遇されて十分な出場機会を得られなかった。

 ラツィオでの1年を振り返り、鎌田は「めちゃくちゃ大変でしたね」と一言。そして、「サッカーももちろんそうですが、それ以外のところもドイツとはすべてが違いすぎて。そもそもファンが違いすぎた。ドイツでも負けたらブーイングされたりしましたけど、ラツィオでは1試合でも負けたり、引き分けたら『もう終わり』みたいな雰囲気だった。チーム全体がそんな感じで、(クラウディオ・ロティート)会長が全部決めるんですけど、試合に負けたら次の試合に勝つまで帰るなとトレーニング場に詰められたりとか」と、驚きの状況を明かした。

 元日本代表DF内田篤人氏が「こわっ。それはイタリアがそうなの? ラツィオがそうなの?」と聞くと、鎌田は「ラツィオがちょっと…。みんな話している感じ、『ラツィオが特別』と言っていました。良くも悪くもファンは、自分たちのチームが世界で一番のチームだと思っているので大変でした」と説明した。

「すごい経験をしていますね、この1年」と内田氏が感嘆の声を上げると、鎌田は同じ移籍市場で加入した選手たちも戸惑っていたと苦笑した。

「チームメイトで今年入ったマテオ・ゲン(ドゥージ)と、(グスタフ・)イサクセンという選手と仲が良くて一緒にいたのですが『これはもうアンリアル(非現実)だ』と(言っていた)。リアルの世界じゃないみたいなことが、たくさんありましたよ」と振り返り、「ドラマとか、本当に日常で起きていることと信じられないことをいっぱい経験しました」と、衝撃的な1年を振り返った。

シーズン途中から指揮を執ったイゴール・トゥドール監督【写真:ロイター】
シーズン途中から指揮を執ったイゴール・トゥドール監督【写真:ロイター】

サッリ監督からトゥドール監督への交代は「めちゃくちゃターニングポイント」

 ピッチ外で衝撃を受けた鎌田だが、ピッチ内でも苦戦した。特にサッリ監督時代は、公式戦全39試合中11試合しか先発できずに、不遇の時期を過ごした。

「大変でしたね。フランクフルト1年目で出られていない時は、自分でも『自分の実力が足りていない』と分かっていたので、苦しかったですけど、仕方ないなと思えていました。でも、今年に関しては練習をしていても自分が負けているとは思わなかった。ただ、サッリ監督がいた時は、このやり方なら試合に出ても結果を残せへんなとやりながら感じていたので、そこが一番難しかったですね」

 鎌田は、監督のやり方に疑問を感じながらプレーする状況だったと説明した。

 指揮官がサッリ監督からイゴール・トゥドール監督に変わったタイミングについて、鎌田は「めちゃくちゃターニングポイントでした」と言い、「新しく来てくれた監督には感謝しています」と述べ、トゥドール監督の下で自身とチームが復調した要因について持論を展開した。

「やり方が完全にドイツと一緒でしたね。前から行く時は基本的にマンツーマンディフェンスで、取って前に早くというインテンシティーをすごく必要とするサッカーで、現代チックなやり方だなと思っていました。前監督はとにかくすごく守備的でしたね。前から行くけど、うしろにめっちゃ人数を余らせているからボールを奪えへんし、取ってからもゆっくりしちゃう。とにかく走らないとダメでした。試合が終わったら毎試合データを送ってもらうんですけど、基本的に僕ら中盤の3人が13キロは走らないといけなかった。前半だけで6.5キロからキロは絶対に走って、フル出場したら13.6キロ走った試合もあった。とにかく走らないとダメなサッカーでした」

 この数字を聞いた内田氏は「きっつー」と驚き、監督が代わってからの成績が向上したことや鎌田のボールタッチ数が増えたことを指摘した。

 すると鎌田は、「よく『信頼がないとパスが出てこない』と言われるじゃないですか。それも多少はあるんですが、とにかく前監督は試合が終わったあとの分析もなかったんです。『ここでボールを持った時にこの選手が空いている』とか、『この選手がいい動きをしたからここは使わないとダメだよね』とか、そういうこともまったくなかった。新しい監督になってからは、『僕(鎌田)にボールを集めろ』と言うのではなく、『ここが空いているから、ここは使わないとダメだよね』と言っていた。それがドイツでやってきた僕の中では普通だった。信頼しているから使うではなく、こっちの選手のほうがいいポジションにいるから使おうねと、そういう感じだった」と、トゥドール監督の下でチームが浮上できた要因について、自身の見解を語った。

 イタリアで、このような経験をした鎌田は今夏の移籍市場でラツィオからイングランド1部クリスタル・パレスへ移籍した。「僕が一番、今回大事にしていたのは監督だった。(グラスナー監督は)試合に出ていない時から、声をかけ続けてくれて、やり方も分かるし、一緒に成功もしてきた監督なので。監督がいなかったら、選んでいなかっただろうなという感じです」と、2021年から23年までフランクフルトでともに仕事をしたグラスナー監督の存在が、クリスタル・パレス移籍に決定的だったと明かしている。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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