なでしこは「敗北に値しない」と賛辞も…海外が見たアメリカとの“差”、接戦で浮かんだ欠落点【コラム】

英記者がなでしこJのアメリカ戦を総括【写真:ロイター】
英記者がなでしこJのアメリカ戦を総括【写真:ロイター】

英記者がなでしこJのアメリカ戦を総括

 パリ五輪の女子サッカーを戦うなでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間8月3日、準々決勝でアメリカと対戦し、延長戦の末に0-1で敗戦。銀メダルを獲得した2012年のロンドン五輪以来、3大会ぶりのメダル獲得とはならなかった。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、日本とアメリカの明暗を分けた僅かな差に着目している。

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 トーナメントは残酷だ。なでしこはまたしても準々決勝の壁にぶつかった。昨年の女子ワールドカップ(W杯)と同様に、池田太監督のチームは今回もアメリカに僅差で敗れ、帰国のチケットを手にすることとなった。

 日本の守備はよくオーガナイズされ、戦術的にも非常に規律があり、接戦を演じていたが、トリニティ・ロッドマンの素晴らしいフィニッシュによってアメリカがメダルラウンドへと進出することになった。

 しかし、池田監督のチームは胸を張っていい。なでしこジャパンはコンパクトな陣形を保ち、ボールを持っていない時のハードワークで延長戦に入るまでアメリカのすべての攻撃にうまく対応していた。

 違いは、この緊迫した熱戦のなかで、アメリカが数少ないチャンスの1つをモノしたということだ。それがチャンピオンになるチームとそれ以外のチームの差だ。

 日本代表が五輪でのパフォーマンスをさらに高め、次のステップに進むためには、アメリカと同等の勝利に徹する冷酷さを身につける必要があるだろう。

 彼女たちがこの敗退の失望を乗り越えた時、オーストラリアで開かれる2026年の女子アジアカップと、その翌年のブラジルW杯への再挑戦へと目が向けられる。

 ここからの2年は長く、今大会に出場した一部の選手にとってはこれが最後の舞台になるかもしれない。キャプテンであり、ピッチ上のリーダーだった熊谷紗希は2027年のブラジルW杯までプレーを続けるのだろうか?

 今大会、このベテランDFはアメリカを寄せ付けないという強い意志でバックラインを統率し、再び最高のパフォーマンスを見せた。特に18歳の古賀塔子など彼女の周りにいた若いDFたちの努力は日本の将来が明るいことを示唆していた。

 アメリカは長い間ボールを支配し、特に最初の15分はそれが顕著だった。日本の組織力を前にエマ・ヘイズ監督のチームは守備を破ることができず、アメリカはカウンターを受けるリスクを抱えていた。

 もちろん、この戦術は過去にも機能したもので、今回も機能していたかもしれない。田中美南は前半終了の10分前に先制のチャンスを迎えたが、シュートはGKアリッサ・ネイハーの腕の中に収まった。

 守屋都弥は配球の精度こその努力に見合うものではなかったとはいえ、右サイドで見せた疲れ知らずのパフォーマンスは日本に希望を与えていた。中盤で長谷川唯と長野風花が見せたパフォーマンスは敗北に値しなかっただろう。

 しかし、最後はロッドマンの見事なフィニッシュがアメリカに勝利をもたらした。それは、日本の努力によって自慢の能力を発揮するための時間とスペースを制限されていた彼女が見せた一瞬の魔法だった。

 なでしこたちのポテンシャルをタイトルへと変えるために必要な勝利に徹する冷酷さを手にするためにどうすればいいのか。それを考え直し、計画し、取り組むための時間が日本にはある。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)



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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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