今夏欧州→Jリーグ「出戻り組」の未来 “即”海外復帰も?…大型補強の行く末は【コラム】

今夏の移籍市場で実力者たちが出戻り【写真:Getty Images】
今夏の移籍市場で実力者たちが出戻り【写真:Getty Images】

今夏は相馬や西村、三竿ら代表経験者が復帰

 Jリーグ第2登録期間が7月8日にオープンし、各クラブの移籍が活発化しつつある。

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 セレッソ大阪に10年在籍した元日本代表・清武弘嗣(サガン鳥栖)のように同カテゴリーのクラブに赴く例もあれば、浦和レッズでキャプテンマークを巻くこともあった岩尾憲(徳島ヴォルティス)のように下位リーグに赴く選手もいる。経験豊富な彼らの加入は鳥栖や徳島にとって大きなプラスになるだろう。

 一方で、海外から戻ってくる選手も少なくない。特に今夏は、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)日本代表の相馬勇紀(名古屋グランパス)を筆頭に、日本代表経験のある西村拓真(横浜F・マリノス)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、林大地(ガンバ大阪)らビッグネームの移動が目立つ。

 まず相馬だが、ポルトガル1部カーザ・ピアとのレンタル契約が昨季末で終了。古巣・名古屋の復帰戦となった14日の柏レイソル戦で先発出場。左ウイングバック(WB)としてハードワークを見せ、リスタートキッカーとして異彩を放ち、さらに貴重な同点弾も叩き出している。

 早速、現役日本代表としての“違い”をアピールした格好。長谷川健太監督も中位をウロウロしているチームの起爆剤として大きな期待を寄せているはずだ。このまま相馬がプレーし続ければ、名古屋も着実に上昇気流を描いていきそうだ。

 しかしながら、必ずしもそうなるとは限らない。本人の海外志向は依然として強く、代表残留、2026年北中米W杯参戦を果たすためにも今夏、新天地へ赴く覚悟を持っているはずだ。代理人も移籍先探しを続けており、昨夏にいったん日本に戻ってすぐにデンマークへ渡った鈴木唯人(ブレンビー)同様のコースを歩むのではないかと言われている。

 その可能性が濃厚と見られるだけに、名古屋としては相馬がいるうちに勝ち点を稼ぎたいところ。まずは中断期間前のラストマッチとなる20日のヴィッセル神戸戦で連勝し、8月7日の再開初戦・京都サンガF.C.戦につなげたいところ。そこまで相馬がいるかどうか未知数ではあるが、彼自身もできるだけのものは残して名古屋を離れたいのではないか。短期間で大きな存在感を示すべきだ。

 スイス1部セルベットで半年間プレーした西村拓真も14日の鹿島アントラーズ戦で復帰。後半10分から天野純と代わってピッチに立った背番号9は左右に幅広く動きながら攻守両面に貢献。植中朝日の4点目の起点となるパス出しも見せた。凄まじい運動量と走力、ここ一番のチャンスに絡む仕事ぶりで久しぶりにインパクトを残したのである。

「マリノスはこんなもんじゃないと思うし、本当にこの順位から抜け出せるように、自分も厳しくやる必要がある。結果を残すことはこれからチームを助けるうえでも必要なこと。自分の責任を果たしたい」と西村は改めて力を込めた。

 マリノスは16日、ハリー・キューウェル監督の解任が正式発表され、ジョン・ハッチンソン・ヘッドコーチ(HC)が暫定的に指揮を執ることになった。20日の次戦は首位を走るFC町田ゼルビアが相手だ。そこで西村がチームを勝たせる大仕事をしてくれれば、沈滞感を払拭し、中断明けに向けて弾みがつくのは間違いない。彼がチームの救世主になってくれれば理想的だろう。

 大物の古巣復帰と言えば、15日にベルギー1部ルーベンから鹿島アントラーズに戻ることが正式発表された三竿健斗もそれに該当する人材。2016~22年に在籍した鹿島での8シーズンではJ1制覇(2016年)、FIFAクラブワールドカップ参戦(2016、2018)など貴重な経験も積み重ねている。

 小笠原満男(現アカデミー・テクニカル・アドバイザー)と共闘した人材が年々減っている今の常勝軍団にとって、強かった時代を知るレジェンドの1人の復帰は大きい。吉岡宗重フットボール・ダイレクターもそうやって鹿島のDNAを引き継いでいくことを明言しており、三竿を呼び戻したのもその流れの一環と言っていい。

 前半戦の鹿島のボランチには佐野海舟が入っていたが、現在は柴崎岳が主に先発。守備強度とタテへの推進力を重視するランコ・ポポヴィッチ監督のスタイルにはまだ適応しきれていないようにも見受けられる。守備力があって、手薄なセンターバック(CB)もこなせる人材の確保が喫緊の課題だった。そういう意味でも三竿への期待は大きい。まずは復帰戦となる20日のFC東京戦での一挙手一投足をしっかりと見極めたい。

G大阪への加入が決まった林大地【写真:Getty Images】
G大阪への加入が決まった林大地【写真:Getty Images】

優勝へ導けるのか…“G大阪育ち”林大地へ寄せる期待

 日本代表経験者という意味では、シント=トロイデンから戻ってきた林大地(G大阪)も注目すべき存在。ガンバ大阪ジュニアユース時代は初瀬亮(ヴィッセル神戸)や、1学年下の堂安律(フライブルク)とともにプレーしたアグレッシブな点取り屋は履正社高校、大阪体育大学へ経て、2020年にサガン鳥栖入り。2021年夏の東京五輪ではエースの上田綺世(フェイエノールト)から定位置を奪って主力として戦うほど急成長した。

 五輪直後にシント=トロイデンへ赴き、2シーズンプレー。そして昨季は念願のドイツ2部ニュルンベルクでステップアップのチャンスをつかんだ。しかし、そこで左ひざを負傷。シーズン14試合出場2得点にとどまり、日本に戻ることになった。

 ガンバでの出場は早くて9月になりそうだが、泥臭くアグレッシブにゴールに突き進めるところは非常に頼もしい。今季のガンバは宇佐美貴史へのゴール依存度が高く、ほかの得点源が見つかっていない状況。失点数の少なさで2位につけてはいるものの、ゴール数を引き上げなければ町田を追い落とすことはできない。林はシーズン終盤の重要なピースになりそうだ。

 上記4人のように日本代表経験はないものの、浦和レッズに加入した本間至恩と二田理央も興味深い出戻り組だ。本間はご存知の通り、アルビレックス新潟アカデミー出身のテクニシャンで、2022年夏まで在籍。その後、ベルギー1部のクラブ・ブルージュに移籍し、セカンドチームでプレー。2年間チャレンジを続けたが、トップでの活躍が叶わず、以前からオファーを受けていた浦和で再起をかけることにしたという。

 二田の方もサガン鳥栖アカデミー出身で、2021年夏にトップチームとプロ契約を締結。そのタイミングでオーストリア2部にいたFCヴァッカー・インスブルックにレンタル移籍。さらに2022年8月には同リーグのザンクト・ペルテンへ再レンタルされ、この夏、3年ぶりに日本に戻ってきたのだ。

 すでに二田の方は14日の京都戦でJデビューを果たしており、ここから徐々に出場時間を増やしていきそうだ。本間もベンチ入りはしたものの、出番はなし。彼のスタイルをどう今の浦和で発揮すべきかを模索することになるだろう。

 近年は20歳前後の若い世代の海外移籍が急増しており、本間や二田のように20代前半でJリーグに改めて参戦するケースも多くなるかもしれない。そういう意味で彼らの動向は今後の試金石になりそう。若い力を思う存分、爆発させてほしいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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