町田“平河ロス”で補強急務…代役候補は? ターゲットになり得る「アタッカー8人」【コラム】
主力アタッカー平河悠が英2部移籍…代役候補になり得る人材を国内外からピックアップ
J1首位を走るFC町田ゼルビアが主力流出の痛手を被った。左サイドから攻守を牽引し、FW藤尾翔太とともにパリ五輪のメンバーに選ばれたMF平河悠が、EFLチャンピオンシップ(イングランド2部)のブリストル・シティへ期限付き移籍。移籍期間は来年6月までと発表され、完全移籍の買取りオプション付き。町田としては初昇格でJ1初優勝という悲願に向けて、左サイドアタッカーの補強が急務となっている。
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“平河ロス”ともなり得る状況で、町田がどういった選手を補強するのか注目が集まる。その大本命と考えられていたのがMF相馬勇紀(カーザ・ピア)だ。名古屋グランパスから欧州に渡り、ポルトガル1部で活躍してきたが、カーザ・ピアが資金難により完全移籍での獲得を断念したと報じられる。
その後、名古屋への復帰がリリースされたが、欧州の移籍主要リーグの市場は8月いっぱいまで開いており、欧州に再移籍という可能性もありそうだ。東京調布市の出身でもある相馬を町田が獲得できれば、実力的にも、左右のサイドで攻守に奮闘できるタイプという基準でも、最適の人材であることは間違いないが……。
日本代表の経験もあるMF奥抜侃志(ニュルンベルク)も、タイプ的には町田のターゲットになり得る。大宮アルディージャからポーランドに渡り、昨夏にドイツ2部への移籍を果たした左のサイドアタッカーは、鋭いカットインに加えて、縦に突破する能力も高い。現在24歳で、まだまだ欧州での飛躍も期待されるが、同僚のFW林大地が中学時代を過ごしたガンバ大阪に移籍する流れもあり、十分に町田の左翼を担い得るタレントだ。
平河とタイプは異なるが、左サイドをこなせる“欧州組”という基準で見れば、奥抜と同じくドイツ2部のクラブに所属するMF伊藤達哉(マクテブルク)もターゲットになり得るが、柏レイソルのアカデミー出身である伊藤は高校在学中に名門ハンブルガーSVと契約を結び、早期卒業で欧州に渡る決断をしており、Jリーグの経験がない。その意味で、J1優勝を目指す町田の主力候補としては加入後のフィットにリスクがあるのはネックだ。
金明輝コーチの教え子J2仙台のアタッカーも補強候補の1人に?
国内に目を向けると、平河級の能力を持つ選手を探し当てるのは簡単ではない。その基準で、所属クラブのサポーターからネガティブな声があがるのを承知で名前を挙げるなら、最適なタレントはFW横山歩夢(サガン鳥栖)だ。平河と同じパリ五輪世代で、2003年生まれの21歳。松本山雅FCからの加入2年目となる今シーズンの開幕当初は左サイドのジョーカー的な位置付けだったが、課題である守備面の成長もアピールし、3-0で勝利した第13節のジュビロ磐田戦での活躍をきっかけにスタメンに定着。ここまで5得点3アシストと数字面では平河をも凌ぐ。町田での戦術的なタスクをすぐにこなせるかは未知数ながら、個人の突破力、決定力に疑いの余地はなく、もし町田で主力としてJ1優勝に貢献できれば、A代表で“欧州組”となる平河のライバルになり得る。
その横山に準じる候補としては同じくパリ五輪世代のFW小見洋太(アルビレックス新潟)の名前が挙げられる。21歳の左サイドアタッカーは抜群のスピードがあり、高いポゼッションをベースとする新潟にあって、縦に速い攻撃を加えるタレントとしても重宝されている。町田にとっては1-3と新潟に敗れたリーグ第17節のホームゲームで、先制ゴールを叩き込まれた“天敵”だが、もし加入となれば好材料だろう。ただ、新潟としてはベルギー経由でJリーグに復帰したMF本間至恩(浦和レッズ)、平河とともにパリ五輪のメンバーに選ばれたFW三戸舜介(スパルタ)とサイドアタッカーの移籍が続いており、こういう形で小見の名前を挙げるのは心苦しいものはあるが……。
そのほかFW岩崎悠人(アビスパ福岡)も町田のタスクも十分にこなせそうだ。現在3-4-2-1の左ウイングバックを担っており、数字面では無得点1アシストと物足りなさはあるが、プレー強度が高く、攻守で精力的に稼働できる岩崎は町田のスタイルにフィットしやすい。J2ではMF相良竜之介(ベガルタ仙台)が筆頭格か。ここまで7得点3アシストと大暴れしているサイドアタッカーは仙台のJ1昇格に向けて欠かせないタレントだが、町田で黒田剛監督を支える金明輝コーチの教え子という縁もあるだけに、仮に町田が目をつけた場合はどうなるか。FW野寄和哉(レノファ山口FC)も左右サイドをこなせて、機動力も突破力もあるサイドアタッカーとして面白い。
無論、FW藤本一輝というサイドアタッカーを擁する町田の選択肢として、FWや右サイドを補強して、準主力的な働きをしているFW荒木駿太を左に回すオプションを模索するかもしれない。ただ、基本的には“平河ロス”を最小限に抑えて、J1優勝へのスパートを図って行くために、左サイドアタッカーの補強は目指しているはずだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。