2度目の海外リーグ挑戦 「そこに自分はいる」要求続ける日々…西村拓真が新たな得点源へ【現地発コラム】

セルヴェットFCでプレーする西村拓真【写真:Getty Images】
セルヴェットFCでプレーする西村拓真【写真:Getty Images】

スイス1部セルヴェットFCで奮闘

 今冬、横浜F・マリノスからスイス1部セルヴェットFCへレンタル移籍をしたFW西村拓真は、新たな得点源としての期待を受けて迎え入れられた。

 クラブ会長ティエリー・レジュナス氏が「西村拓真という経験豊富な選手を獲得することができた。彼の持つユーティリティさはオフェンス陣に広がりをもたらし、スピードと得点力は計り知れないほどの価値をもたらしてくれるはずだ」と喜びのコメントを残す。

 同時期に今季スイスリーグ17試合で10ゴール3アシストをマークしていたクリス・ベディアがドイツ1部ウニオン・ベルリンへと移籍していたことで、ファンも首脳陣もチームを勝利に導いてくれる選手を熱望していた。

 西村は加入後の公式戦5試合で4ゴールを挙げるなど、上々の滑り出しをみせる。第28節では首位ヤングボーイズがスタッド・ローザンヌ相手に勝ち点を取りこぼし、セルヴェットは勝利したら首位浮上という絶好のチャンスを掴む。結果としてFCルツェルン相手に苦戦をしたチームは2-2の引き分け止まりとなったが、この試合でチームを救う2点を決めたのが西村だった。

 このまま順調にフィットしていくかと思われたが、チームは調子を崩している。第32節のバーゼル戦もカウンターからの2失点を追い上げることができずに1-2で敗れた。

 この試合で西村はベンチスタートも、FWエンゾ・クリヴェリが開始8分で負傷したために、早い時間帯からFWで途中出場。精力的に仕事を探し続け、チームが失点しても、終盤味方が軽率なミスをしても、何度も手を叩いて味方を鼓舞し続けた。

 ただチームとしてのリズムが噛み合っていない時は、いい形でボールをもらうのも簡単ではない。

直近の自身の出来に満足せず「もっとやらないと」

「正直最近は、自分が納得いくプレーは出せてない」と試合後に振り返る西村。だが、“だから難しい”とは言わない。「だからこそもっとやらないと」と言葉に力を込める。

「チームが上手くいってないなかでも、自分を出していかなくちゃいけない。自分を高めていかなくちゃいけない。もっとがむしゃらにやっていきたいです」

 バーゼル戦ではゴール前にタイミングよく入っていく動き、相手がケアしていないスペースへ抜け出すポジショニングがたびたび見られた。味方選手がサイドから上手くボールを運んだ時に、マイナスの位置フリーでパスを要求していたシーンが何度かあった。

 この試合では残念ながらパスは来なかった。だが、先ずいるべき場所にいるのが大事だし、「そこに自分はいるんだぞ!」と味方に知ってもらうことが大切になる。

「やっぱりああいうところで、今要求しなくちゃいけないです。完全にフリーだったんで。あそこで大きい声を出し続けたら、変わるかなと思いますけど。そこばっかりは合う合わないあるんで。いろいろ要求していきたいです」

 シュートチャンスがなかったわけではない。特に前半はサイドからのクロスも西村へ向かって多く送られていた。相手守備を上手く外してヘディングシュートに持ち込み、高い打点で競り勝つシーンもあった。だが、惜しいで満足する選手ではない。それこそ相手にマークをされていようとゴールを決め切る“迫力”を追い求めている。

「そうですね、もっとボール前のところで迫力持って、自分も本当に相手にとって怖い選手になりたいですし。いろいろまだまだなところばっかりですね」

 1得点が流れを変えるはず。ここからのリーグ終盤、チームを救う活躍を期待したい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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