6月のW杯予選はU-23メンバーを大胆起用すべき 森保Jに懸念される将来的な世代交代の失敗【コラム】

主力の冨安も望む下からの突き上げ【写真:徳原隆元】
主力の冨安も望む下からの突き上げ【写真:徳原隆元】

主力の冨安も望む下からの突き上げ

 今年1~2月にカタールで開催されたアジアカップの時、冨安健洋はこんな厳しい言葉を発した。

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「今回、トレーニングパートナーも来ています。19歳と言っていましたが、そういった選手たちが日本代表に入ってきてほしい。僕や堂安律は19歳、20歳で日本代表に入って、久保建英もそのへんで入っています。僕たちが東京オリンピックに出た時、半分ぐらいはもう日本代表に行っていました。そういう意味では今ちょっと物足りないと思っているので、底上げは欲しいと思います」

 日本代表に下からの突き上げがほしいという意見だった。たしかに、現在の日本代表にはカテゴリーを超えて入っている選手が少ない。最も入ってくるべき選手は、現在のU-23日本代表の選手たちだろう。

 久保は別格として、今年のアジアカップに招集された選手は、GK鈴木彩艶、野澤大志ブランドンとFW細谷真大の3人だけ。日本代表としてプレーしたことがあるのは、DFバングーナガンデ佳史扶と藤田譲瑠チマ。西尾隆矢、荒木遼太郎、松岡大起、鈴木唯人は代表合宿に招集されたことがあるが、予定されていた試合が新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったため、代表初出場は叶わなかった。

 森保一監督も若手選手の成長を期待している。今年のJリーグの開幕戦、東京ヴェルディvs横浜F・マリノスの試合後にはこう語った。

「もっともっと、若くていい選手が、J1の舞台でプレーできることを期待してます」
「代表の舞台でも世界で勝っていけるように、若い人たちにどんどん突き上げをしてほしいと思いますし、『俺を選んでほしい』という思いでプレーをしてほしいと思います」

 ただし、森保監督も見つめる目は厳しかった。3月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦に若手が入るかと聞かれると、「それはちょっと分からないですね」と笑いながら即答。U-23日本代表の試合が組まれていたこともあるが、それでも久保や鈴木は日本代表に招集されている。

 たしかに、現在の日本代表の中に割り込んでいくのは難しい。現時点で2チームは形成できるだけの選手層を備えているからだ。各ポジションには2人ずつ、どちらが先発でもおかしくない選手が揃っている。しかも、複数ポジションをこなせる選手も少なくない。さらに全員がまだ若いし、次のW杯でも主力として活躍できる。

“消化試合”の6月シリーズはテストに使うべき

 だが、このままではどうなるか。現日本代表が高齢化し、チームを去ることになったとき次の世代の経験が足りない。2026年の北中米W杯をピークとして、日本代表低迷の時代が来てしまう。

 そう現状を分析した時、今は実はチャンスだ。

 3月26日に予定されていたアウェーの北朝鮮戦は中止となった。今後別の日に試合をしようにも、国際サッカー連盟(FIFA)が定めるインターナショナルマッチデーにはもう別の予選が組み込まれており、開催することはできない。インターナショナルマッチデー以外で試合をすれば、選手の所属クラブは招集に応じる義務がないためメンバーが集められなくなる。

 試合は没収扱いとなり、日本が3-0で勝ったと見なされた。アジア2次予選グループBで日本は勝ち点12となり、3位の北朝鮮が勝ち点3。残り2試合なので逆転されることはないため、日本がグループリーグ突破を決まった。

 となると、6月6日に予定されているアウェーのミャンマー戦、6月11日のホーム・シリア戦というアジア2次予選の残りの2試合は大胆な采配を振るうことができる。

 4月15日にスタートするU-23カタールアジアカップ(日本の初戦は4月16日)はパリ五輪の予選も兼ねている。決勝まで進んだとして5月3日(現地時間)に試合が終わり、7月24日のサッカー競技スタート(パリ五輪は7月26日から)するまで、どう強化するか。

 U-23日本代表は6月3日から16日まで海外遠征を計画しているが、この際、ミャンマー戦とシリア戦もU-23の選手を大胆に起用してはどうだろうか。

 もちろん主力と考えられる選手は海外遠征に連れて行けばいい。だが、「もしかしたら戦力になるかも」と思われる選手は日本代表の場で試してみればいい。もしもそこで個性を発揮できるようなら、当然U-23日本代表に入れてもいいだろうし、将来的には日本代表に戻ってくるかもしれない。

経験は浅くとも可能性にかけるも一案

 もしかすると3月22日のマリ戦、25日のウクライナ戦がそのような「最後の」チャンスという位置づけだったのかもしれない。そこで平河悠のように目覚ましい活躍を見せた選手もいた。だが、それでもまだ誰か探したほうがいいのではないか。

 こんな無理な提案をするのも、日本代表合宿で再び長友佑都を見たからだ。大学生だった長友は2007年、すでに突破が決まっていた北京五輪アジア2次予選、2007年6月6日のホーム・ミャンマー戦で招集された。8月に中国で開催された4か国対抗トーナメントには参加せず、ユニバーシアードの試合に行った。

 8月22日にアジア最終予選がスタートしても最初は呼ばれず、11月に招集されたものの出番はなし。2008年2月の米国遠征で使われたが、その後も起用されたりベンチを温めたり、あるいは招集外だったりしていたのだ。2008年北京五輪では3試合中2試合でプレーしたが、決して先発を約束されていた選手ではなかった。

 その長友がほかの日本選手が誰も成し遂げたことのない、W杯4大会連続全試合先発を果たし、今は5大会連続出場を目指している。そういう例がある以上、まだ経験は浅くとも可能性にかけて世界大会を経験させるべき選手がいるのではないか、という前提で動くのがいいのではないだろうか。

 もっとも——U-23日本代表のパリ五輪出場が前提ではある。そして、これが今年は今まで以上に厳しい。つまり、今回突破できなければ、第2の長友は発見されないのである!! というのは言いすぎなのだが。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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