J1伝統の一戦「鹿島対磐田」注目マッチアップ5選 鈴木優磨&新助っ人封じのキーマンは?【コラム】

鹿島と磐田が激突【写真:徳原隆元 & Getty Images】
鹿島と磐田が激突【写真:徳原隆元 & Getty Images】

かつてJタイトル争いを繰り広げた鹿島と磐田が激突

 J1リーグ第5節が3月30日に9試合が組まれているなか、1つの注目カードが鹿島アントラーズとジュビロ磐田の一戦だ。“オリジナル10”の鹿島と1994年からJリーグに参入した磐田は90年代の後半から21世紀の初頭にかけてタイトルを二分した時代があった。

 そこから鹿島はJリーグ3連覇など、2018年のAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇まで20冠を獲得してきた一方で、磐田は2002年を最後にリーグ優勝から遠ざかり、その後の唯一のタイトルが2010年のJリーグ杯(現在の呼称はルヴァン杯)となった。

 それでも両クラブのサポーターで、このカードを特別なゲームと認識する声は多い。J1に帰ってきた磐田とのホームゲームに向けて、鹿島の公式サイトでもポルトガル語で“クラシコ「Clássico」”と銘打って、煽り動画を紹介しており、ポジティブな反応が目をひく。そこで、この試合を熱くしそうなマッチアップを5つ選んでみた。

■鈴木優磨(鹿島)VS川島永嗣(磐田)

 鹿島の攻撃を前線から引っ張るエースと代表ウィーク中に41歳の誕生日を迎えた磐田の守護神による対戦はシュートとセービングの局面だけでなく、いかに良い形でのフィニッシュに導くか、導かせないかの戦いでもある。またチームを鼓舞する2人の熱量が観る側にも伝わってくるはず。川島は2010年夏に欧州へ渡っており、2015年に鹿島でトップデビューした鈴木との対戦はない。新たな歴史を刻むにふさわしい顔合わせだ。

■チャヴリッチ(鹿島)VS植村洋斗(磐田)

 今最も注目を集める新外国人選手の1人がチャヴリッチだ。ここまで2得点だが、スピードとゴール前の落ち着きを併せ持つストライカーで、サイドアタッカーとしても攻撃に違いを見せることができる。4-4-2なら鈴木優磨との2トップになるが、川崎フロンターレに9年ぶりのリーグ戦勝利をあげた中断前の流れを持ち込むなら、左サイドで起用される可能性が高い。

 一方、植村洋斗はボランチを本職とする大卒ルーキーだが、開幕戦から右サイドバックで起用されており、ヴィッセル神戸戦は汰木康也とパトリッキ、川崎戦がマルシーニョ、柏レイソル戦はマテウス・サヴィオ、ガンバ大阪戦では新外国人のウェルトン・フェリペと強力なサイドアタッカーと戦いながら、試合ごとに成長を重ねて来ている。鹿島戦でもしチャヴリッチとマッチアップするなら、植村がいかに対応しながら、機を見て攻撃に出て行くかを観るだけでも、かなり醍醐味があるはずだ。

「大型FWは大好物」植田直通対磐田新助っ人の迫力満点バトルは見物

■関川郁万(鹿島)VSジャーメイン良(磐田)

 ここまで5得点でトップスコアラーのジャーメイン良をいかに止めるか。この試合における鹿島のテーマになってくるが、鉄壁のセンターバックコンビにおいても、23歳DF関川郁万の果たすべき役割は大きい。ジャーメインは1トップの場合、スピードを生かしてディフェンスの背後を狙いながら、キープ力も発揮。シンプルな落としから、2列目やボランチを前向きにさせる。そこからフリーになってラストパスに合わせていく動きが非常にうまい。

 強さだけでなく、柔軟性も増している関川が、幅広く対応していけるか。また大型FWマテウス・ペイショットとの縦の2トップも強力だが、前節から2週間空いたことで、そのコンビがスタートから来る可能性も。鹿島にとっては要警戒だ。

■植田直通(鹿島)VSマテウス・ペイショット(磐田)

 磐田が期待する新外国人と「大型FWは大好物」と語る植田直通との迫力満点のバトルが見られそうだ。ここまでの4試合で空中戦、地上戦ともにポストプレーでは相手センターバックには全勝ちしている。キャンプ中の負傷もあり、ここまで100%とは言い難かったペイショット。周囲との連係を含めて、フィニッシャーとしての脅威度が、この2週間でどれだけ増しているかも気になる。

 鹿島から見れば、植田が起点のところを潰してしまえば、磐田の攻撃をかなり制限することができ、結果としてジャーメインに良い形でフィニッシュされる危険も減少するはず。磐田としてはこのペイショットが周りに得点させるだけでなく、得点をマークできれば乗って来そうだが、植田がそう簡単には許さないだろう。

■濃野公人(鹿島)VS古川陽介(磐田)

 大卒ルーキーながら開幕戦からスタメン出場を続ける濃野公人は磐田戦でもキーマンの1人。彼とスタートからマッチアップするのが平川怜になるのか、それとも古川陽介になるのか不明だが、パサータイプの平川とドリブラーの古川、どちらにしても左サイドからの攻撃が磐田の鍵になってくる。そこを濃野が封じながら、攻撃面でも前に厚みを出していけるか。

 ランコ・ポポヴィッチ監督の掲げる縦に速いスタイルのなかで、濃野がアタッキングサードまで絡んでいければ、鹿島が本来狙う形で迫力ある攻撃を実現できる。しかし、同サイドは磐田側の強みでもあるので、どちらかと言えば攻撃VS攻撃の戦いで、どちらがより前に重心をかけて行けるのか。特に古川が出てくれば、その度合いが強くなる。

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(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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