U-23日本代表の3月シリーズ「アピール成功の5人」 J1で躍動MFがパリ五輪最終予選へ名乗り【コラム】
マリ&ウクライナとの2連戦でインパクトを放った5人を厳選
大岩剛監督が率いるU-23日本代表は3月の国際親善試合2試合でマリに1-3で敗れたが、ウクライナに2-0で勝利。すでにパリ五輪の切符を掴んでいる両国に対して、多くの収穫と課題を得た、実りある3月シリーズだった。
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MF鈴木唯一(ブレンビー)など、パリ五輪の予選を兼ねたU-23アジアカップに招集困難と見られる有力候補も多くいるなかで、4月4日に予定されるメンバーに食い込むべく、アピールに成功した選手は誰なのか。
ここではマリ戦とウクライナ戦でインパクトを放った5人を厳選。なおキャプテンのMF山本理仁(シント=トロイデン)やチームの主軸でウクライナ戦では主将マークを巻いたMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)などは対象外としている。
■平河 悠(MF/FC町田ゼルビア)
現在J1の首位を走る町田で主翼を担っているサイドアタッカーは、マリ戦の立ち上がりにいきなり得点を決めるなど、今回のシリーズで最も目立った1人に。マリ戦では左ウイング、ウクライナ戦では後半から右サイドで使われており、本人も「持つ足が変わるそこの感覚だけです」と左右どちらでも違和感なくプレーできることを強調している。
縦の仕掛けなど、攻撃能力はもちろんだが、「相手のポゼッションに対するプレスのかけ方は考えながらできるようになった」と語るように、黒田剛監督の下で特に伸びたと自負する守備はアピールポイント。大岩監督も、サイドアタッカーに強く求めるところであり、アジアカップを戦うチームを大いに助けることになりそうだ。
■小久保玲央ブライアン(GK/ベンフィカ)
ウクライナ戦で無失点勝利を支えただけでなく、193センチというサイズに頼るだけではないステップワークで広範囲をカバーし、ビルドアップでもチームのリズムを良くした。ポルトガルの名門であるベンフィカではまだ、なかなかトップチームに絡めていないが、セカンドチームではしっかりと出番を得て、試合経験を積んでいる。
昨年3月のベルギー戦でフル出場しているが、1年ぶりのチャンスに見事応える形で、U-23アジア杯のメンバー入りだけでなく、ファーストチョイスにも名乗りをあげた。柏レイソルのアカデミー出身でもある小久保は「レオ」の呼称でも知られる。予選を突破すれば、パリ五輪の本番ではA代表の鈴木彩艶とポジションを争うことになるが、ここで守護神の座を掴めれば、当然A代表に直結するだろう。
大卒ルーキーながら大きく評価を高めた柏サイドバック
■鈴木海音(DF/ジュビロ磐田)
J1に昇格した今シーズンは公式戦の出番がなく、3月のメンバー入りにも疑問の声は見られた。しかし、ウクライナ戦で相棒のDF馬場晴也とハイラインを統率し、相手の裏を狙う攻撃にもしっかりと対応。ビルドアップも積極的な縦パスでチャンスの起点を作るなど、ポジティブに評価できるプレーが多かった。さらに磐田で日頃から求められている発信力の部分でも、後ろからコーチングで盛り立てるなど、キャプテンマークを巻かないリーダーの1人として振る舞った。
ボールを奪う守備を持ち味とする鈴木海。大岩ジャパンの不安要素にも挙げられるセンターバックだけに、パリ五輪の本番ではオーバーエイジ(OA)枠をこのポジションに使う可能性は現時点で決して低くない。まずはU-23アジア杯で五輪の切符を掴むことが大前提になるが、代表での経験を自チームに還元して、磐田でスタメンに定着していけるか。指揮官は東京五輪で森保一監督を支えた横内昭展監督でもあるだけに、その基準は明確だ。
■関根大輝(DF/柏レイソル)
昨年はアジア競技大会のメンバーに選ばれて、馬場やMF佐藤恵允(ブレーメン)と準優勝を経験した。大きく評価を高めたのは大卒ルーキーながら、開幕戦から柏のスタメンに名を連ねて存在感のあるパフォーマンスを見せていることだ。サイドバックで187センチというサイズは目を引くが、静岡学園高校の出身らしくテクニックもしっかりとしている。
サイドバックに関根を起用することで、セットプレーの守備と攻撃で高さを加えられるのは大きい。3月シリーズでは右サイドバックに半田陸(ガンバ大阪)、内野貴史(デュッセルドルフ)、そして関根の3人を招集している。U-23アジア杯のメンバー招集枠は23人なので、普通に考えれば誰かが外れる。しかし、内野が左サイドバックでも使われており、そうしたポリバレントな起用法を含めて、3人とも選ばれる可能性もある。
■染野唯月(FW/東京ヴェルディ)
鹿島アントラーズから2度目の期限付き移籍で東京ヴェルディをJ1昇格に導いた。大岩ジャパンではなかなか招集されなかったが、もともとこの年代でFW細谷真大(柏レイソル)に勝るとも劣らない期待を背負っていただけに、現在の活躍も必然性が高い。ただ、外に出て短期間で結果を求められる環境に身を置いたことで、メンタル面で成長したことがプレーやコメントからも見て取れる。
マリ戦は後半からの登場だったが、ウクライナ戦では4-3-3のセンターフォワードでスタメン出場し、相手GKのミスを誘うチェイシングや効果的なポストプレーで、チームに良い流れをもたらした。シュートが決まっていれば完璧だったが、アピール材料の多いパフォーマンスだった。今回のシリーズで招集されたFWは染野のほかにA代表の細谷、ウイングもこなす藤尾翔太(FC町田ゼルビア)とおり、U-23アジア杯のメンバー入りは五分五分だが、染野が入ることで2トップもオプションになる。J1昇格プレーオフに象徴されるように、ビッグマッチでの決定力も魅力だ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。