ドイツ1部で奮闘の19歳FW福田師王、「まだ自分の実力不足…悔しい」と吐露した理由【現地発コラム】

トップチームデビューを果たした福田師王【写真:Getty Images】
トップチームデビューを果たした福田師王【写真:Getty Images】

出番を待ち続けていた福田「(アップしながら)ワクワクしてます」

 年間観客動員数で世界のトップを走るブンデスリーガでは今季も数多くのファンがスタジアムに詰めかけている。今季第23節終了時で1部の平均観客動員数は3万9508人。そんなドイツにおいて観客動員数で5位につけているのが、日本代表DF板倉滉とU-23日本代表の19歳FW福田師王が所属するボルシアMGだ。

 今季のボルシアMGは芳しい成績を挙げているとは言えない。第22節終了時では順位を15位まで下げていた(第23節終了時では12位)。フラストレーションの溜まる試合も少なくはない。それでもファンは変わらぬ忠誠心でスタジアムへと足を運ぶ。

 第23節ボーフム戦でも5万3000人以上がホームスタジアムへ詰めかけた。相手は同じく下位に沈むボーフムだけに、負けられない一戦だ。きらびやかな雰囲気。ゴールが決まるたびに奏でられる音楽。スタジアムDJの掛け声にレスポンスされてファンの声が何倍にも膨れ上がる。

 ピッチ上で懸命にクラブのために戦う選手たちに送られるファンからのエネルギーはいつだって極熱だ。時に厳しい叱責やブーイングが飛ぶこともあるが、それだって多くは愛情の裏返し。力を余すことなく出し切ろうとする選手には、たとえミスをしても何度だって拍手が送られる。

 サッカーをする人間だったら、一度はこんな雰囲気の中でサッカーをしてみたいと思うものだろう。この日、メンバー入りを果たし、出番を待ち続けていた福田も、1人のサッカー選手としてそんな思いを抱きながら、ゴール裏で黙々とアップをしていた。

「そうですね。(アップしながら)ワクワクしてますし、試合前から出た時のいいイメージを作って、準備しています」

 ドイツに渡って1年と少しが経った。U-19、そしてセカンドチームにあたるU-23で経験を積み、今年に入ってからは継続的にトップチームへ帯同。第19節レバークーゼン戦の後半34分から途中出場を果たしてブンデスリーガデビューを飾ると、その後、20節のバイエルン・ミュンヘン戦、22節のライプツィヒ戦でそれぞれ後半40分から出場している。

 ボーフム戦(5-2)では大勝している試合展開だったが、最後まで声はかからなかった。

「今日はいい試合したと思います。(試合に出て)絡めれば一番良かったんですけど、まだ自分の実力不足ってことで、全然絡めなかったので悔しいです」

 そう正直に自分の思いを口にする。「トップ帯同=すぐに戦力起用」という図式があるわけではない。数多くのタレントがトップチーム帯同まで果たしながらも、ほとんど出場機会を得ることがなく、人知れず去っていく世知辛い世界でもある。

フィジカルや得点能力に言及「自分の良さを出せてないと思うんで」

「まだまだこれからだから」「今はまだ我慢の時期だから」ということは分かっているだろうし、そんなスムーズにいくとは本人も思ってはいないだろう。

 ボーフム戦ではリードを大きく広げたことで選手起用がしやすい状況になっていたため、監督のジェラルド・セオアネとしては、ベテランでともにボルシアMGで300試合以上に出場しているトニー・ヤンチュケとパトリック・ヘアマンを起用してあげたいという心境でもあった。

 そうしたことをすべて理解したうえで、それでも選手として試合に出れないことはやっぱり悔しいのだ。早く試合に出たい。もっとプレーに関わりたい。福田はそんな思いを抱きながら日々のトレーニングに全力で取り組んでいる。

「フィジカルもそうですし、やっぱ得点能力っていうのも試合に出て、自分の良さを出せてないと思うんで。やっぱそういうところだと思います。トップチームで試合に出られるように頑張りたい。セカンドチームに絡む回数も少なくしていきながら、トップチームで結果を残すのはやっぱり自分の目標なので。次チャンスもらったらしっかり仕留められるように、練習します」

 ボーフム戦に勝利したとはいえ、まだ下位を脱出したわけではないボルシアMG。停滞している空気を吹き飛ばし、ここから中位進出を図るためには、福田のような純度の高い熱さを持った選手のがむしゃらさがポジティブな影響をもたらしてくれるのではないだろうか。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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