Jリーグ開幕…昨季上位陣の明暗 不安と課題露呈のクラブ、理想的補強で躍進期待のクラブは?【コラム】

開幕戦で勝利した昨季の上位3チーム【写真:Getty Images】
開幕戦で勝利した昨季の上位3チーム【写真:Getty Images】

昨季トップ3は勝利、浦和と名古屋は敗戦 ドローも層の厚さを感じさせたC大阪

 Jリーグが開幕した。まだすべての試合を見終わっていないのだが、昨季の上位陣は明暗が分かれた。

【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!

 ヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島の昨季トップ3は勝利。4位だった浦和レッズは0-2。6位名古屋グランパスはホームで0-3だった。ただ、いずれも昨季順位では1つ上だった広島、鹿島に対する敗戦なので取りこぼしたわけではない。とはいえ、どちらも不安を残す開幕戦ではあった。

 スカンジナビア化で意欲的な補強の浦和は、広島のプレスに苦しんだ。ミヒャエル・スキッベ監督の3年目の広島と、ペア・マティアス・ヘグモ監督を招聘した初年度の浦和の練度の差が出ていたかもしれない。

 新しいホームスタジアムに浦和を迎えた広島は、前線からのプレッシングで圧倒していた。1対1を10個作る方式。1つはがされれば玉突き的にずれていくリスクはあったが、素早い連動と3バック(塩谷司、荒木隼人、佐々木翔)の対人の強さで浦和の攻撃を封じている。しかし、予想できる広島のハイプレスに対して、浦和はこれといった対策を見せられなかった。

 名古屋はホームで鹿島に0-3。センターバックに負傷者が出たのが響いた。堅守速攻ベースの名古屋だが、肝心の守備に綻びが出てしまっていた。攻撃では昨季途中で移籍してきた森島司が貪欲にボールを受けて奮闘、後半に交代出場して左サイドをかき回した新加入の倍井謙も面白い存在になりそう。それだけに土台の堅守再構築が緊急の課題だろう。

 FC東京にドローだったが、セレッソ大阪は躍進の可能性を感じた。

 新加入の田中駿太、登里享平、ルーカス・フェルナンデスが効いている。個々の実力だけでなく、チーム編成に合った補強になっていた。登里はインサイドでもプレーしてポゼッションを助けていた。田中がアンカーに入ったことで香川真司のポジションを1つ上げてインサイドハーフに起用して攻撃力を上げた。右ウイングのルーカス・フェルナンデスは持ち前のドリブル突破だけでなく、右サイドバック毎熊晟矢と連係してコンビで分厚く攻め込めるようになった。チーム全体のポテンシャルを底上げする理想的な補強だ。

 後半33分にインサイドハーフの2人(香川、奥野博亮)をヴィトール・ブエノ、柴山昌也に交代。カーレースのタイヤ交換のように消耗しやすいポジションを代えたのだが、あとから出てきた2人も先発に遜色ないプレーぶり。層の厚さを感じさせた。

 全体にハイプレス効果は昨季と変わらず。多くのチームが敵陣からの守備に力を入れている。ただしハイプレスにはリスクもある。相手のプレスを着実に外して隠れていたリスクを露呈させるビルドアップを実行できるチームが現れれば、逆に独り勝ちになる可能性もあるかもしれない。まだ始まったばかり、今後の展開が注目される。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



page 1/1

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング