J1初挑戦・町田の未来は? 「プランどおり」から一転…厳しさ突き付けられた瞬間【コラム】

開幕戦は1-1のドロー【写真:徳原隆元】
開幕戦は1-1のドロー【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】J1初挑戦・FC町田ゼルビアに期待漲った開幕戦

 J1リーグに初挑戦するFC町田ゼルビアに、サポーターは大きな期待を持っているように見えた。自分たちが応援するチームが新たな舞台で通用するのかという不安より、日本サッカーの最高峰のリーグに参戦できる喜びが勝り、サポーターが発する声援は高揚感が漲っていた。そうした心を振るわされる力強い声援を間近で感じ取ることができるのも、ピッチレベルで試合に接するカメラマンならではの経験だ。

 昨シーズン、J2リーグ制覇を成し遂げた町田の原動力は、安定した守備にあった。町田は高い守備の強度を武器に、ガンバ大阪の攻撃を試合終盤まで無失点で押さえる健闘を見せることになる。その町田の最終ラインの最後の砦を担っていたのは、今シーズンからチームに加わった谷晃生だ。

 GKが練習に臨む場合、1つの法則がある。レギュラーへの序列が、そのまま練習の順番に反映されていることが多いのがそれだ。練習に取り組む時、まずはレギュラーの選手が最初に行い、次に第2キーパー、第3キーパーと続く。そうした一般的なGKの練習における順番から言えば、取材したのは1日だったが、宮崎キャンプでの練習から判断すると、GKのレギュラーは谷ではなくほかの選手が務めるのかと思っていた。

 しかし、大事なリーグ開幕戦のゴールマウスを守ったのは背番号1の谷だった。

 町田は試合を形作る局面の勝負で厳しいプレーを見せ、G大阪の選手の出足を止めた。ボールを持った相手選手に素早く反応してマークに付き自由を与えない。

 J1初挑戦の町田にとっては、多くのゴールを生み出すのは単なことではない。何より失点をしない試合運びに注力し、少ないチャンスから1点をもぎ取り勝利する。町田は前半17分にPKからの得点で先制すると、まさにプランどおりに試合を進めていった。

 だが、サッカーゲームはそう上手くは思いどおりにはならない。後半15分に退場者を出してしまい、数的不利となって劣勢の展開を強いられることになる。チームとしてディフェンスの時間が長くなるなかで、谷は果敢な飛び出しと至近距離からのシュートにも良く反応し、何とか失点を許さない。

 しかし、後半39分に途中出場の宇佐美貴史に技ありの直接フリーキック(FK)を決められ、試合は1-1で終了した。

 試合後、サポーターたちが待つスタンドへと挨拶に向かった町田の選手たち。そのなかにはこの開幕戦でベンチ外となったが、チームのリーダーとして期待される昌子源の姿もあった。サポーターは選手たちを声援で迎え、1失点を喫したものの終盤のピンチでファインセーブを見せた谷の名前を連呼した。

 町田がJ1での初めての試合で勝ち点1を記録したことは評価できる。しかし、現実に目を向ければ、J1での戦いの厳しさを突き付けられた形でもあった。重要な場面でゴールを決め切る力を持ち、総合的に高い技術を持った選手たちがプレーするJ1の舞台では、数的不利にならなくても試合展開で劣勢となることも多いだろう。これからの試合でも肉体的、精神的ともにタフさが求められることになる。

 それだけに谷を中心とした守備陣のさらなる奮闘が、チームの命運を握っていることは間違いない。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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