浦和サポ暴徒化問題、防止行動は「確実に実行」 OB阿部勇樹氏も懇願「2度とないように」

公開シンポジウムを開催【写真:(C) URAWA REDS】
公開シンポジウムを開催【写真:(C) URAWA REDS】

昨夏の天皇杯サポ暴動事件、第三者委員会の公開シンポジウムを開催

 昨夏の第103回天皇杯サッカー全日本選手権で、浦和レッズの一部サポーターが名古屋グランパスのサポーターらに暴力を振るうなど複数の違反行為に及んだ問題を受け、クラブが立ち上げた浦和レッズ第三者委員会の公開シンポジウムが2月16日、ファンやサポーターら185人を集めてさいたま市内で開催された。

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 シンポジウムではまず、3つのチームごとに活動経過を報告。暴徒化した今回の背景などを15人から聞き取って分析し、問題発覚のたびにクラブが講じてきた対策に関する評価と問題点を精査した。今後必要な対策として、クラブの意識改革や独立性の高いコンプライアンス部署の設置などを提言した。

 元浦和の阿部勇樹さん(現浦和ユースコーチ)も登壇し、「仲間がミスをしたら2度としないようにサポートするのがチームプレー。すべての人が1つになって、さらに大きいレッズになってほしい」と思いを込めながら、しみじみと語り掛けた。

 最後に武藤芳照委員長が6つの提言を述べると、発案を預かった浦和の田口誠社長は「いただいた提言を確実にぶれずに実行していきたい。ただこの問題に終わりはないので、継続して取り組んでいく」と強い決意をにじませた。

 騒動は大勢の浦和サポーターが昨年8月2日、名古屋市のCSアセット港サッカー場で行われた天皇杯4回戦の名古屋戦後、日本サッカー協会が定める試合運営管理規定第4条に当たる多数の禁止行為に及んだ。フィールドへの飛び降りをはじめ、名古屋サポーターへの暴力と威嚇、立ち入り禁止区域への不正侵入など8項目に渡る違反を重ねた。

 日本協会規律委員会は昨年9月19日、暴徒化したサポーターの違反行為を防止できなかった浦和の責任を重視し、今年の天皇杯出場権はく奪という厳罰を科した。

 日本協会、Jリーグ、Jリーグ全60クラブは9月21日、「今回のような違反行為があった場合、一切の関係を断つ覚悟で安心安全にサッカーを楽しめる環境を構築していく」との共同メッセージを発信した。

日本協会の懲罰を受け、浦和は6つの再発防止施策を発表

 違反行為者の特定は日本協会が主体となり、問題の映像を細かく確認しながら3か月に渡って作業を続けた。この結果、22人が無期限入場禁止となり、国内全試合を対象にした日本協会の決定に加え、浦和はチームが出場する国内外の全試合に拡大する独自の追加処分を科し、厳しい姿勢で臨む覚悟を示した。

 31人が1~10試合の入場禁止となり、厳重注意が11人で、16人が個人の特定に至っていないが、処分対象者は計80人に上る。

 事件発生から3日後の昨年8月5日、オンラインで会見した田口社長は「先人が紡いできた日本サッカーの歴史に泥を塗る愚行」とし、再発防止については「違反行為の内容によっては罰則をさらに厳格化する方針を固めた。厳しい処分が抑止力になる」と説明した。

 日本協会の懲罰を受け、浦和は6つの再発防止施策をまとめた。このうち“違反行為に対する新たな処分基準の策定”については10月26日、禁止行為があった場合は日本協会やJリーグの内規にはない永久入場禁止というクラブ独自の処分を行使することを発表している。これはすでに発効したクラブ内規だ。

 スポーツ・コンプライアンス教育振興機構の前代表理事でもある武藤氏ら有識者ら8人で構成する第三者委員会は、サポーターによるこれまでの違反行為とクラブの対処について分析し、再発防止と教育・啓発の2つの施策を検討、提言することを目的に発足。昨年11、12月と今年1、2月に委員会を開催し、①不適切行為の原因分析②クラブが行った対策の評価と問題点の抽出③今後必要な対策の提言という三本柱で議論を重ねてきた。

 浦和は昨年8月3日から今年1月31日まで、クラブのウェブサイトで「浦和レッズサポーターによる違反行為について」と題し、11回に渡って詳報を掲載している。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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