3バックのバリエーション不足が懸念 森保ジャパンはシステム問題を解決できるか【コラム】

守備の要・冨安健洋と森保一監督【写真:Getty Images】
守備の要・冨安健洋と森保一監督【写真:Getty Images】

アジア杯ベトナム戦、インドネシア戦は3バックでも良かった?

 森保一監督は、カタールで開催されたアジアカップ準々決勝で敗退後、「不安が残ったままワールドカップ(W杯)予選が再開するが?」という質問にこう答えた。

「不安も自信も常に持ちながら戦うモチベーションにしていくということで考えています。これまで10連勝している時も、不安ではないですけど、確固たる自信というものよりも、もっともっと自分たちが上げていかなければいけないというところは、常に持ち続けてきたつもりです」

 さらに、チームを成長させなければいけないというのが森保監督の考えだった。アジアカップで垣間見えた、日本がまだ調整不足だった部分であることは間違いない。その課題は3月に予定されている朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦でも試されることになるはずだ。

 では、どんな部分を強化しなければいけないのだろうか。具体的な内容は、アジアカップの戦い方と、大会期間中の監督やチーム首脳の言葉をつなぎ合わせると浮かび上がってくる。

 アジアカップでどのように日本が戦ったかを振り返る。まずグループリーグ初戦のベトナム戦、相手は3-4-3あるいは5-4-1という形で日本に向かってきた。対する日本は試合を通じて4-2-3-1で戦っている。

 第2戦のイラクは4-2-3-1、対する日本も4-2-3-1のミラーゲーム。がっぷり四つの戦いだった。第3戦のインドネシア戦は、相手が5-4-1で最初から守備を固めてきた。日本は4-2-3-1ながら旗手怜央が上がった4-1-4-1でスタートし、途中から4-2-3-1へと移行している。

 球際で押されていたイラク戦を別にすると、ベトナムとインドネシアは個々の勝負に持ち込んでも良かったはず。となると、相手が3バックまたは5バックで臨んでいるので、日本も3バックに変更して1対1の勝負に持ち込んでも良かったのではないだろうか。

インドネシア戦では3バックを用意していたが“使わなかった”

 この点について、アジアカップ中のさまざまな場面で監督やチーム首脳などの言葉を拾っていくと、2つの考えが根底にあることが分かってきた。

■1.)これまで相手が3バックにした時はこちらも3バックにして対抗していたが、できれば4バックのまま受けられるようになりたい。だから、敢えて4バックのままにしている。

■2.)3バックにした時の攻撃の練習の時間が足りていない。守備の部分は改善されるだろうが、攻撃でどこまでできるか未知数となる

 この2つの考えがあったのは、その後の監督のコメントや采配などを見ると裏付けされる。

 まずグループリーグ最終戦のインドネシア戦が終わったあと、森保監督が囲み取材で3バックは用意していたけれども使わなかったことを明らかにした。

「今日は使いませんでしたけど、今日も3バックも含めて、相手の攻撃を止める、前からのプレッシャーをかけるというところを、枚数合わせとして戦おうというところも考えていました。そういった戦術的なシステムであったり、人を試す時間だったりが、この(次の試合までの)中6日でできたかなと思っています」

 だが決勝トーナメントに入ると、さっそくテストしている。ベスト16のバーレーン戦は相手が4-1-4-1、日本は4-2-3-1をベースにしながら旗手を上げて4-1-4-1でスタートした。そして後半35分、堂安律に代えて町田浩樹を投入すると5-4-1に移行し、3-1で逃げ切っている。これは3バックを守備のために使った。

 準々決勝のイラン戦、日本は相手の4-2-3-1に対して明確な4-1-4-1でスタートした。前半に先制したまでは良かったが、後半に入ると一気に動きが鈍り、同点に追いつかれたまま試合終盤を迎える。

 試合開始から動きがおかしかった板倉滉を谷口彰悟、あるいは町田に代えるという手はあったかもしれない。また押されっぱなしになっていたので、3バックに変更し、守備を立て直すという手も考えられた。特に伊藤洋輝を使ったのは、3バック移行を考えていたのではないかとも推測された。

 だが、そこで森保監督は3バックに移行しなかった。イラン戦後、森保監督はその理由について、相手のサイド攻撃に対こうするため3バックにすることは考えていたと明かしつつ、「耐えていってできるだけ前線の交代カードを切りたいという思いではありました」と、反撃するために交代枠を使いたかったこと、さらにオーストラリアが韓国との試合でリードしながら5-4-1にして消耗し、敗戦した試合を例に挙げ、「我々も守備的な、最後逃げ切る局面で今まで(3バック)使っていることが多かった」と攻撃面での不安ではないかと思える点を語っていた。

ワールドカップ予選はすぐそこに迫っている【写真:ロイター】
ワールドカップ予選はすぐそこに迫っている【写真:ロイター】

3月と6月はテストのチャンス

 第二次森保ジャパンは、よりボールを支配しながら戦いたいという目標を達成するために、サイドバックのプレーに変化を持たせるなど4バックを基本として戦ってきた。だが、そのために本来森保監督が広島時代に得意としていた3バックの中でのバリエーションをチームに植え付けられていないのではないか。

 アジアカップ準々決勝で敗退してしまったため、3バックにしながら守備的になりすぎないという戦い方は見ることができなかったし、そこまで準備できていたかどうかは分からない。だが、今後の対戦相手がアジアカップで見せた日本の弱点を突いてくるのは間違いない。その時には、4バックをさらにシェイプアップするのか、あるいは3バックの攻撃も強化したオプションを試すのか、という選択になる。

 アジアカップと違って、ワールドカップ(W杯)予選は集合してすぐ試合という日程になる。その時にアジアカップで試さなかった戦術を採用するのは、大きなリスクも伴うチャレンジになるだろう。だが、いずれは必ず取り組まなければならない。となると、より厳しさが増すW杯アジア3次予選の前、3月と6月の4試合はチャンスではないだろうか。

 これまでも3バックは試してきた。そこに攻撃の要素を短期間で加えられるか。日本代表指導陣の手腕が試される。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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