ドイツとスペイン…正反対の欧州サッカー“首位攻防戦” 「共通項」と「決定的な差」とは?【コラム】

レアルとレバークーゼンが首位攻防戦で勝利【写真:ロイター】
レアルとレバークーゼンが首位攻防戦で勝利【写真:ロイター】

レバークーゼンがバイエルンに3-0完勝、レアルがジローナに4-0大勝

 先週末、2つの首位攻防戦があった。ブンデスリーガ第21節、レバークーゼンvsバイエルン・ミュンヘンは3-0でレバークーゼンが完勝。ラ・リーガ第24節のレアル・マドリードvsジローナは4-0でレアルが大勝した。

 どちらもホームチームが勝利、2位との差を5ポイントとしたのも同じ。ただ、意味するものは正反対だったと言えるかもしれない。

 ブンデスリーガ11連覇のバイエルンは、今季無敗のレバークーゼンに対してシステムを合わせてきた。レバークーゼンの3-4-3に3-4-3をぶつけ、1対1の勝負で押し勝つつもりだったようだ。ところが、逆にシステム運用の練度の差がもろに出てしまっていた。

 レバークーゼンのシャビ・アロンソ監督は、トーマス・トゥヘル監督の出方を読んでいたのだろう。いつものハイプレスではなく、FWをハーフウェイラインまで下げてミドルゾーンによりコンパクトな守備ブロックを敷いた。敵陣プレスで拡散するより、より密度の高い守り方を選択。つまり、バイエルンにボールを持たせた。すると、バイエルンは組み立てがことごとく寸断され、レバークーゼンのカウンターを食らい続ける様相になった。

 レバークーゼンの3-4-3は、DF3人とボランチ2人が非常に近い距離でビルドアップを行う特徴がある。食いつかせて裏、いわゆる「擬似カウンター」に近い仕組みを持っているのだが、バイエルンは選手の距離が広がりすぎていて、レバークーゼンの組み立てには遠く及ばなかった。レバークーゼンの組み立てを1対1にして阻止するつもりが、逆にボールを持たされて付け焼刃加減を露呈することになってしまった。

 一方、レアルは圧倒的なフィジカルでジローナをすり潰して勝利している。

 躍進チームを個の力で潰しにかかった点ではバイエルンと同じ姿勢だったが、結果は正反対。カルバハルとチュアメニの急造センターバック(CB)コンビも抜群だった。普段と違う構成はバイエルンと同じなのに、この点でも結果が全く違っている。

 レアルは1対1でのフィジカルの優位性でジローナを封じた。ベリンガム、カマヴィンガ、バルベルデ、ヴィニシウスらは要所でのデュエルに勝ち続け、ジローナにボールを支配されても全く動じる様子もなく淡々と格の違いを見せつけるように試合を進めていった。

 アスリート能力の高い選手を揃えているのはレアルとバイエルンの共通項だが、レアルはフィジカルだけでなく技術面でも突出していて、特にヴィニシウスの突破力は決定的だった。また、レバークーゼンとジローナの違いもあったかもしれない。

 レバークーゼンはマッチアップを合わせてきたバイエルンにボールを渡すことで、チームとしての完成度の違いを顕在化させたわけだが、それができたのは守備力にも自信があったからだろう。ジローナは勇敢にいつもどおり攻撃したが、そのぶんレアルに返り討ちにされた。レバークーゼンとジローナはどちらも今季躍進したチームだが、チーム力の奥行の点でレバークーゼンに底力があったということかもしれない。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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