森保監督が証言、「後半采配」裏側の真意 日本強化へ“2本の軸”…W杯ドイツ戦と同様?【コラム】
イランに敗れてまさかのベスト8で大会終了
森保一監督率いる日本代表は、2月3日にカタール・ドーハで行われているアジアカップの準々決勝でイラン代表に1-2で敗れてベスト8で大会を去った。「FOOTBALL ZONE」では現地で起こっていたことを考察する「アジア杯検証シリーズ」を実施。5度目の優勝がついえた森保ジャパンの現在と未来を分析する。今回は「イラン戦の采配」について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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5戦で3勝2敗、「史上最強」を引っ提げた森保ジャパンにとってはあっけない最後となった。イラン戦では後半に攻撃が停滞。完全に受けに回ってしまい“何もできなかった”。決められるべくして決められた同点弾、勝ち越し弾……。森保監督が交代のカードを切ったのが後半21分。MF前田大然とMF三笘薫、MF久保建英とMF南野拓実を交代。ここまで前線からのプレスで効いていた前田を下げての投入し、前線からボールを奪うことができなくなったため、攻撃のパターンがなくなった。
敗退のなかで象徴的となったのがイラン戦の後半だろう。後半に押し込まれた展開で流れを切ることも、反撃することもなく、手詰まり感が漂った。中盤から縦へボールも入らず、代わって入った三笘と南野はほとんど何もできず。「相手の対策もあり上げられず、試合が押されてしまった」と、反省したが、問題点はチャンスを作れなかった攻撃だけではなかった。
キックオフから不安定さを露呈し、前半24分で警告を受けてしまったDF板倉滉は結局2失点に絡んだ。DF冨安健洋とグループリーグ第3戦インドネシア戦でセンターバック(CB)のコンビを組んだDF町田浩樹との交代も考えられたなかで、カードを切らなかった理由を指揮官は説明した。
「3バックにすることやサイドバック(SB)を代えることは、相手のサイド攻撃が圧力になっていたので考えてはいた。耐えていって、できるだけ前線の交代カードを切りたかった。昨日の(準々決勝)韓国とオーストラリアも、オーストラリアが5-4-1にして下がりすぎて“ジリ貧”になった。3バックにしたからといって守備的なだけではないけど、今までは守備的に逃げ切る局面で使っていたので、攻撃の部分でシステムなどを代えたいと思った」
森保監督は試合後に自身の交代策が敗因だと話した。指揮官のなかで、どんな大会、試合でも一戦一戦に向き合っていく際に「何も残らない試合をしちゃいけない」というのが大前提にある。それはチームを作り上げる時に大きな2つの軸を同時に動かしているから。その2つの軸は「目の前の一戦の勝利」と「日本サッカーの発展」。日本サッカー協会(JFA)が掲げている「2050年宣言」。26年後の世界一を目指している。一方で、今の森保ジャパンも北中米ワールドカップ(W杯)で世界一を目標にしている。要するに26年後を見た采配と2年後を見た采配を両輪で行っている。
記憶に新しい、カタールW杯のドイツ戦。森保監督は「勝っても負けてもいいと思っている自分もいた」という。「前半上手くいかなくて、結局あのままいったら何ができて何ができなかったのか、個のレベルが分からないまま終わってしまう。何も残らない試合はしてはいけない」との思いから後半はマンツーマンへの変更を行った。「1対1の局面で勝て、というのは、やはりそこのレベルアップがあって、個のレベルアップがあって、組織として成り立つという考え方をしなければいけない」と、強豪を物差しにして、まずは1対1で勝てるのか、を試した。
森保監督に直撃…イラン戦の後半について
もちろん勝利を目指すうえでだが、「同時に自分たちの力を測るという目的ではいる」。3バックへの変更がフィーチャーされがちだったW杯だが、個で勝ち切ったために勝利へとつながった。
「では、イラン戦の後半はどうだったんですか? 力を測る意味で動かなかったのか」
イラン戦後、森保監督と話す機会がありぶつけてみた。「それはあったと思う」。アジアが日本対策として行ってきたロングボールへどこまで対応できるのか。何度も言うが勝ちを諦めたわけではなく、2年後、26年後も見た采配だった。
この試合の結果が生きてくるかどうかはW杯予選で明らかになる。もううしろを向くことはできない。W杯に向けて、前を見なければならない。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)