「拳を使う選択」という“懸案事項” 日本に緊張を生むも「指揮官は起用し続ける」【コラム】
チャーチ氏指摘「ボールをキャッチするチャンスがあった」
森保一監督の率いる日本代表は1月31日、アジアカップ決勝トーナメント1回戦でバーレーン代表を3-1で下した。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、日本の戦い方の変化や失点シーンの考察を展開している。
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全てが順調に進み、日本はアジアカップでまたしても準々決勝へと歩みを進めた。サムライブルーは9大会連続でこの大会の上位に名を連ねることになる。
終わってみれば、トラブルもほとんどない試合だった。堂安律と久保建英のゴールでバーレーンの最初の抵抗を退けた。
だが、それも日本が相手に得点を許すまでのことだ。そして、またしても鈴木彩艶が失点に絡むことになった。
上田綺世との交錯によってボールがゴールラインを越えてしまった。鈴木にはバーレーンの攻撃を阻止するチャンスは十分にあった。
ボールが空中にある時にキャッチよりもパンチングを選ぶ彼の傾向は、以前から懸念されていた部分だ。そのことが、またしても日本に緊張をもたらした。
鈴木には失点直前のプレーでボールをキャッチするチャンスがあったが、それよりも彼は拳を使う選択をした。その決断が最終的には相手のコーナーキックにつながり、あのコメディのようなオウンゴールが生まれた。
鈴木にとっても、日本にとっても残念なことだった。この21歳は、完璧なGKになれる才能と能力を間違いなく備えているのだ。フィジカルに優れ、足元の技術も高い。日本が後方から現代的なポゼッションサッカーを展開することを可能にするGKだ。
しかし、彼のミスは、ほかの選手たちが彼の救済をしなければならないことを意味する。幸い、この試合では日本はリードしており、上田がオウンゴールの埋め合わせをするゴールで再び点差を2点に広げることができた。
森保一監督にとっては少し緊張感を感じる展開となったが、それでも指揮官はシント=トロイデンのGKを起用し続ける意思を明らかにした。このヤングスターは監督からの信頼を手にしている。
このミスによって、何もする必要がなかった試合にドラマが加わった。日本は完璧に試合をコントロールし、クルージングモードになっていた。それは準々決勝を見据えた、慎重でプロフェッショナルなパフォーマンスだった。
三笘の復帰は大きな好材料になる
土曜日の次の試合に向けて、必要以上のエネルギーを消耗しないよう、キャプテンの遠藤航はしばしば歩くようなペースで試合を進めた。日本代表がそのような戦い方をするのは初めてではないが、前節のインドネシア戦よりもそれは顕著だった。
最終的には、森保ジャパンが勝ち進むために十分なプロフェッショナリズムを発揮した。森保監督は重要性を高めている上田を含む何人かの選手を早い段階で下げ、ほかの選手たちにも出番を与えることができた。
なかでも三笘薫ほど重要な選手はいないだろう。試合終盤に投入され、そのスピードとゴールに向かうダイレクトなプレーで強烈な印象を残した。彼は相手のディフェンスをこじ開け、少なくとも1点は決められるはずだったし、決めるべきだった。
だが、得点を決めたかどうかはさしたる問題ではない。なぜなら、このブライトンの男が復帰したという事実だけで、森保監督にはもちろん、次の対戦相手にも多くのことを考えさせることができるのだから。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。