過去10戦8勝 好相性もバーレーンが侮れない理由…歴史からひも解く対抗策【コラム】

ベスト16で対戦するバーレーン【写真:ロイター】
ベスト16で対戦するバーレーン【写真:ロイター】

岡田ジャパン時代に何度も対戦

 森保一監督率いる日本代表はアジアカップのグループリーグ第3戦、後半アディショナルタイムで韓国がマレーシアに追いつかれるという失態を見せたこともあり、ベスト16でバーレーンと戦うことになった。

 バーレーンは過去8勝2敗と、まだ日本にプロがなかった頃からも相性のいいチーム。今回のアジアカップではグループリーグ初戦の韓国に1-3と敗れており、決して隙がないというわけではない。

 ただし、過去の対戦を振り返ってみると、バーレーンはいつも厄介な相手だった。特に日本がバーレーンに初めて敗戦を喫した2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)アジア3次予選での試合は、日本代表の方向を転換させることになった。

 試合の前年となる2007年、日本代表はイビチャ・オシム監督(故人)の下、着実にチームを作り上げていた。年間13試合のうち、敗戦はアジアカップでのサウジアラビア戦のみ(PK戦による敗退は2試合)。9月にはオーストリアとスイスで開催された3大陸トーナメントで、オーストリアにPK戦で敗れたもののスイスを4-3と下して優勝した。

 ところが2007年11月16日、オシム監督は脳梗塞で倒れてしまう。一命を取り留め意識は回復したが、日本代表監督を続けることはできなくなってしまった。そこで1998年フランスW杯で日本代表を率いていた岡田武史監督が後任を引き受け、W杯出場を狙うことになった。

 急遽チームを引き継いだ岡田監督は、練習方法こそ違うもののオシム監督の方向性を引き継いだ。最終ラインに丁寧なパスの配球ができる阿部勇樹を起用し、DF陣から素早くパスをつないで相手を崩すというオシム監督の色は変えなかったのだ。

 2008年1月に鹿児島でスタートした第2次岡田ジャパンは1月から2月にかけて親善試合と東アジア選手権で6試合を戦い、3勝3分と負けなしでW杯アジア3次予選を迎えた。

4バック採用のため、5バックの相手よりも隙が生まれる可能性あり

 ところが2008年3月26日、バーレーン・マナマでのアウェー戦は、予想以上に厳しい戦いになった。バーレーンは自陣に深く引きこもり、中盤まではパスを通させるものの、最後はしっかり人数をかけて潰してくる。日本はなかなかチャンスを作らせてもらえない。

 バーレーンを率いていたのはチェコ生まれのミラン・マチャラ監督。1996年のアジアカップUAE大会の時はクウェートを率いてベスト16で日本を2-0で破っている。その日本をよく知る策士は、じっと耐えてチャンスが来るのを待たせた。

 そして後半32分、1本のロングボールが左サイドに入る。その折り返しを川口能活が飛び出して弾こうとしたものの、ボールはふわりとゴール前に上がってしまった。そこにアラー・フバイルが飛び込んでヘディングで合わせ、バーレーンが先制点を挙げる。そしてこれが決勝点となった。

 この初敗戦に岡田監督は方向転換を決断した。5月24日に開催されたキリンカップサッカー、コートジボワール戦からは最終ラインを変更し、阿部に変わって対人プレーに強い田中マルクス闘莉王を起用する。そして、しっかりと守りを固めて反撃するというスタイルに変えていった。

 2008年6月22日、バーレーンをホームに迎えた日本はまたも固い守備に手を焼く。だが、後半45分、内田篤人が放り込んだボールに巻誠一郎が飛び込むと、これがGKの判断ミスを誘ってゴールを割る。この1点で岡田監督は初敗戦の借りを返した。

 その後、アジア最終予選でも再びバーレーンと同じ組になってしまう。2008年9月6日に行われたアウェー戦は一転して点の取り合いに。後半40分までに3-0としたが、そこから2点を返されるという冷や汗ものの展開となった。

 バーレーンと岡田監督の因縁はまだ続き、2009年には2011年のアジアカップ予選でも対戦することになった。2009年1月26日にアウェー戦が先に開催され、再び0-1で日本は敗れてしまった。

 結局、岡田監督とバーレーンはその後2回戦って日本が2勝。岡田監督のバーレーンとの対戦成績は4勝2敗で勝ち越すことはできた。以降の日本代表監督はバーレーンとの対戦がない。最後の対戦となった2010年3月からは14年近くが経過した。

 だが、今大会のバーレーンは昔ながらの特長もしっかり持ち合わせている。まず身体を張った守りは相変わらず厳しい。少人数でもゴールを狙ってくるし、こぼれ球への反応が早い。そして粘り強い。韓国には先制点を取られたが一度同点に追いついた。マレーシアには後半のタイムアップギリギリで決勝点を奪っている。

 一方で、昔ほど守りを固めてはいない。4バックを採用しているため、5バックの相手に比べると守備ラインの間にスペースが生まれている。十分につけ込む隙はあると言えるだろう。

 ただし、こちらが闘志満々で挑むと、のらりくらりとかわして逆襲してくるのがバーレーン。焦らず仕留めなければいけないだろう。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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