小野伸二、引退記念グッズ制作の舞台裏…「自由にやっていいよ」の配慮 古巣・浦和ファンにも大好評【インタビュー】
23年8月下旬から本格的に引退メモリアルグッズ制作準備、メインロゴのコンセプトは「伸二さんらしさ」
2023年12月3日のJ1最終節・北海道コンサドーレ札幌対浦和レッズ戦、小野伸二の現役ラストマッチのチケットは完売し、3万人を超える観客が詰めかけた。札幌のファン・サポーターだけではなく、これまで小野が所属したクラブのファン・サポーターもやって来る。そんな小野のラストマッチを盛り上げるメモリアルグッズの制作は、引退決定から急ピッチで行われた。商品開発を担当した札幌MD(マーチャンダイジング)事業部部長・西村素子さんが、記念グッズ制作の舞台裏について語った。
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伸二さんの引退の話を聞いたのは、2023年8月ぐらいです。その時点ではクラブの中でも役員レベルにしか情報が開示されていませんでした。ただ、グッズは制作期間が一番かかるというところで、担当役員を通じて、そういう話があると聞きました。
もともとは伸二さんご本人が引退発表するタイミングを11月にしたいという話もありました。最終的に、伸二さんご本人はもちろん、マネジメント会社の方々やクラブの意向などを含めて、伸二さんが自身の9月27日の誕生日に発表されました。私たちは、8月の下旬から社内のデザイナーでロゴの開発を始めました。
メインで使うロゴのコンセプトとしては「伸二さんらしさ」ということで、彼が一番大切にしているワードと「いつも笑顔でボールとともにいる伸二さん」、そして、彼の力強さやレジェンドというところをデザイナーと話し合って表現しました。
並行して、最終戦の来場者全員へのプレゼント企画を検討しました。伸二さんの背番号の44番を入れた赤黒模様のTシャツを来場者に着てもらって伸二さんを送るという会場作りとして、3万5000枚のTシャツを作成しました。グッズに使う写真を新たに撮らせてもらったのですが、その時に伸二さんは、みんなが背番号44番のTシャツを着て送り出してくれることに対して嬉しいとおっしゃっていました。
写真撮影は30分ぐらいかけて、ボールを持って投げたり、足でボールを操ったり。いろいろ撮らせてもらって、最終的にはグッズに落とし込みやすいもの、そして伸二さんらしさが出ているものということで、あのポーズに決まりました。
撮影のあとには、全員配布のTシャツに入れるワード、残したい一番大事なワードを書いてもらいました。「一言を頂きたい」と言ったら、伸二さんは何も迷わず「楽しむ」と一発で書かれました。
今回、いくつかの写真を使ってグッズ化しましたが、どれに対しても「いいね」と賛同してくださいました。伸二さんが作りたいものを形にできればと思っていたなか、伸二さんは「フロントがやりたいことを自由にやっていいよ」と言ってくださって、伸二さん自身が「絶対これを使って」というようなことはありませんでした。
小野伸二が見せた気配り「練習後も何時でも、何枚でも快く引き受けてくださった」
数量限定で展開しているグッズには、伸二さんに直筆のサインを入れてもらいました。グッズが出来上がるタイミングが試合直前になってしまい、試合前日にもサインをしてもらうという負担をかけてしまいました。それでも伸二さんは、練習後も何時でも、何枚でも快く引き受けてくださいました。そこには我々に対する気配りがありました。
3万人以上の来場者ということで、試合当日のグッズショップは伸二さんのアイテムを求めるお客様でかなりの待機列ができていました。それでも「待つのは仕方ないよね」という温かい雰囲気で、一部のアイテムが早く売り切れてしまった時には、「ほかの売り場にないですか?」という問い合わせをいただいていました。
ここまで大規模の案件は初めてで、通常のアイテムとは桁が違う。どれくらいのものを仕込めばいいのか、販売計画をどう立てていくかなど難しかったです。1年ぐらい前から準備できれば、時間をかけて制作できるかもしれませんが、実際は2か月くらいの準備期間で決めて、すぐ制作という流れで非常に慌ただしかったです。
所属クラブのファン・サポーターを意識、「コンサドーレの宝」であり「日本サッカー界の宝」
伸二さんへの個人的な思いとしては、同い年でキャリアチェンジをしたという共通点があります。私は今年4月にコンサドーレに来ましたが、伸二さんもある意味キャリアチェンジで人生の大きな転機を迎えました。同世代ということで親近感が一層湧き、花道を飾るために全力で貢献したいと思っていました。
「コンサドーレの宝・小野伸二」というだけではなく「日本サッカー界の宝・小野伸二」であり、浦和レッズや清水エスパルスなど、これまで所属したクラブのファン・サポーターも彼に対して当然強い思い入れがあると考えました。コンサドーレのユニフォームを来た伸二さんだけでなく、これまで所属した国内クラブの写真もコラージュしたグッズを展開することで、コンサドーレ以外の多くのファン・サポーターに対しても喜んでもらえる機会を提供できればと思っていました。試合当日は、浦和レッズのアウェーエリアにもグッズの売店を設置しましたが、売上は一番良かったです。
今回、伸二さんの引退メモリアルグッズを担当し、将来的に引退を迎える選手が出てきた時に何をしなければいけないかが、より明確になりました。大変でしたがその分、とてもやりがいがあり、非常にいい経験をさせてもらえて感謝しています。