青森山田が指揮官交代の「動揺」から優勝できた訳 1年間で積み上げた土台【高校選手権】

青森山田が2大会ぶり4回目の優勝を果たした【写真:徳原隆元】
青森山田が2大会ぶり4回目の優勝を果たした【写真:徳原隆元】

決勝で近江を3-1で下して通算4回目の選手権優勝

 第102回全国高校サッカー選手権は1月8日に国立競技場で決勝が行われ、青森山田(青森)が近江(滋賀)に3-1で勝利し、2大会ぶり4回目の優勝を果たした。青森山田の正木昌宣監督は、約1年前の監督引継ぎを「間違いなく選手たちは動揺した」としながらも、「がむしゃらに目標に向かってやってくれた」と選手たちへの感謝を繰り返した。

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 今年度の高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルを制した青森山田は2回戦から登場。飯塚(福岡)をPK戦の末に下すと広島国際学院(広島)、昌平(埼玉)を大差で下し、準決勝では市立船橋(千葉)との名門対決をPK戦で制した。そして、この決勝戦では攻撃的なサッカーで話題を呼んできた近江との対戦となり、正木監督は「得点力はかなり警戒していた」のだと話した。

 それでも前半のうちに先制すると、後半立ち上がりに追いつかれるもエースのFW米谷壮史が勝ち越しゴール。さらに記録がオウンゴールとはいえ、カウンターから3点目を奪って勝利を決めた。「1点取られたが選手たちの顔を見ると動揺なくプレーしていて、逆に締まったなという感じ。やり続けていれば点は取れるとミーティングで話していた。今までやってきたことをもう1回やろうというだけだった」と、選手たちの頼もしさを試合後の会見で振り返った。

 約1年前、長年にわたり青森山田のサッカー部を率いて強豪校に育て上げてきた黒田剛氏がFC町田ゼルビアの監督に就任することが決まった。前回の高校選手権は黒田氏が総監督となり、正木監督の体制となって8強での敗退になった。当時のことを正木監督は「間違いなく選手たちは動揺した。特に去年の3年生。それも下を向くことなく去年の選手権を戦ってくれた」と振り返る。そして、母校で指導者になることや、偉大な前任者から引き継いで戦った思いをこう話している。

「本当にとんでもない記録や結果を出してきた前監督から引き継いでのスタート。このような体験をしたことがあるのも全国にいないというのも正直で、誰に相談することもなくスタートしていた。(黒田)監督と19年やってきた。いる時もいろいろなプレッシャーをかけられていましたので(笑)、それに比べれば、ちょっと伸び伸びできた部分もあった。みなさんの思うようなプレッシャーはあまりなく、スムーズに渡してくれた黒田前監督に感謝したい」

正木昌宣監督が選手たちに感謝【写真:徳原隆元】
正木昌宣監督が選手たちに感謝【写真:徳原隆元】

米谷が語る黒田前監督との違いは「1点取っても2点、3点と取りにいく」

 試合後には目を赤くして場内インタビューに応じた。それについて「選手たちが1年たくましくやっていたので、それでやってこられた。泣かない予定だったんだけど、2年前の黒田監督の涙を見て、『あ、泣いている』と思っていたんですけど、監督で優勝すると涙が出るんだなと。最後の笛が鳴る前で選手たちが走って戦っていた姿を見ると、これでもう見られないんだと思うと優勝よりもそちらで涙が出たと思います」と、柔らかい表情で話した。

 そのうえで、「母校で指導者をやって選手権を優勝したいという思いで指導者になった。去年びっくりした形で監督を引き継ぎ、この1年試行錯誤しながらやってきた。本当に報われたなという気持ちで、ただただ感謝しかない。優勝する気持ちで指導者になりましたけど、このような形でできるとは思っていなかった。一番は黒田前監督が作ってきてくれたベースがあり、そこに今はただ乗らせてもらっているだけ。1回優勝したことで欲が出てきそうなので来年また頑張りたい」と、さらなる意欲も語った。

 5得点で市立船橋のFW郡司璃来と並んで得点王に輝いた米谷は、黒田前監督との違いを「黒田監督は1点取ってゼロに抑えるという感じ。正木監督は1点取っても2点、3点と取りにいく」と話した。少しずつ正木監督の色が濃くなっていくだろう青森山田がどのように進化していくのかも注目される。

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